ー第4節 人気のないタイミングを見計らい、役員の息のかかった工作員が地下室の分厚い扉を外から頑丈に施錠する。そして通気口から大量のガソリンを流し込み、容赦なく火を放ったのだ。
第4節 人気のないタイミングを見計らい、役員の息のかかった工作員が地下室の分厚い扉を外から頑丈に施錠する。そして通気口から大量のガソリンを流し込み、容赦なく火を放ったのだ。
――ガチャリ。ジャラジャラジャラッ。
分厚い鉄扉の向こう側から、奇妙な金属音が聞こえた。
「え……?」
私は首を傾げ、扉の方へと歩み寄った。
まるで、太い鎖か何かを巻き付け、重い南京錠をかけているような音だった。
「レイ部長? 忘れ物ですか?」
声をかけてみたが、返事はない。
私は不審に思い、鉄扉の冷たいノブを掴んでひねった。しかし、いつもなら重い音を立てて開くはずの扉は、びくともしない。外側から完全に固定され、施錠されてしまっている。
「開かない……? どうして……誰かいるんですか!?」
扉をドンドンと叩いたが、外からの反応は一切なかった。
不吉な予感が胸をよぎった直後、私の鼻腔を強烈な異臭が突いた。
「……っ! この匂い……」
ツンとする刺激臭。それは、地下室の天井近くにある古い換気用の通気口から漂ってきていた。
見上げると、通気口のルーバーの隙間から、無色の液体が滝のようにドクドクと流れ込んできている。液体は壁を伝い、床に置かれた段ボール箱の山に降り注ぎ、瞬く間にコンクリートの床一面に水たまりを作って広がっていった。
ガソリンだ。
それが何を意味しているのか理解した瞬間、全身の血の気が引くのを感じた。
工作員は、この地下室に私を閉じ込めたまま、すべての証拠資料ごと焼き払うつもりなのだ。
「やめて! 開けて!!」
私が悲鳴を上げながら再び扉を叩いたとき、通気口から火のついた発煙筒のようなものが投げ込まれた。
発火物がガソリンの海に落ちた瞬間。
――ボワァァァァァンッ!!
爆発的な音とともに、オレンジ色の閃光が視界を白く染め上げた。
ガソリンは一瞬にして引火し、猛烈な勢いで炎の壁を作り出した。容赦なく放たれた火の手は、油を吸い込んだカビ臭い段ボールや三十年前の紙の束を次々と呑み込み、天井に届くほどの巨大な火柱をいくつも立ち上がらせた。




