第4章 第1節 ミオが紐解く過去数十年にわたる資料の連なりは、ついに会社の最高権力者である大物役員の決定的な暗部へと到達する。それは大規模な資金洗浄と反社への巨額の利益供与だった。
第4章 役員の暗部と命の危機
第1節 ミオが紐解く過去数十年にわたる資料の連なりは、ついに会社の最高権力者である大物役員の決定的な暗部へと到達する。それは大規模な資金洗浄と反社への巨額の利益供与だった。
地下資料室での私の日々は、過去の先輩たちが遺した仕事の軌跡を美しく整頓していくという、静かで満ち足りたものだった。
レイ部長が運び込んでくる段ボールの山は一向に減る気配がなかったが、私にとってそれは苦痛ではなく、むしろ日々のささやかな喜びとなっていた。
エクセルのシート上に構築された【神の検索機能】は、日を追うごとにその精度と網羅性を増していく。一九八〇年代から現在に至るまでの膨大なプロジェクト、予算、人事異動、経費の動き。それらすべてが一本の巨大なタペストリーのように織り上げられ、大都ゼネコンという会社の歴史そのものを可視化しつつあった。
しかし、その歴史を無心で紐解いていくうちに、私はエクセル上に広がる一つの『巨大な黒い染み』のような不自然なデータの偏りに気づくことになった。
「……これは、どういうことだろう」
私はタイピングの手を止め、画面を食い入るように見つめた。
過去数十年にわたり、時代も担当部署も全く異なる複数の大型プロジェクトから、常に一定の割合で『用途不明のコンサルタント料』や『実態のないダミー会社への資材発注費』が引き抜かれている。
これまで暴いてきた派閥の横領や水増し請求とは、桁が違った。億単位の金が、複雑に枝分かれした海外の口座を経由し、最終的にある一つの巨大な口座群へと流れ着いている。
さらに恐ろしいのは、その資金の受け皿となっている企業群の役員名簿だった。一般の社員は誰も知らないだろうが、過去の新聞記事データベースと照合した結果、彼らの多くが指定暴力団などの反社会的勢力と深いつながりを持つ人物たちだったのだ。
大規模な資金洗浄と、反社会的勢力への巨額の利益供与。
これは単なる社内の不正や派閥争いの次元ではない。明るみに出れば、大手ゼネコンであるこの会社の屋台骨すら一瞬で吹き飛ばしかねない、あまりにも巨大で深い闇だった。
そして、そのすべての金の流れを辿った先――最終的な決済印として、常に一つの名前が記されていた。
現在の大都ゼネコンにおいて、副社長として君臨する最高権力者の一人。社内はおろか、政財界にも太いパイプを持つと言われる『大物役員』その人だった。




