ー第4節 ミオの完璧なファイリングがもたらす揺るがぬ証拠の前に、社内のマウント合戦や不毛な派閥争いは沈静化していく。声の大きさで誤魔化していた派閥は完全に論破され一掃された。
第4節 ミオの完璧なファイリング技術がもたらす揺るがぬ証拠の前に、社内のマウント合戦や不毛な派閥争いは沈静化していく。声の大きさで誤魔化していた派閥は完全に論破され一掃された。
その日から、大都ゼネコンの社内は劇的な変化を迎えることとなった。
ミオが無心で構築した【神の検索機能】から弾き出される、言い逃れ不可能な「揺るがぬ物理的証拠」。それを武器にしたレイ部長の監査部での大立ち回りは、凄まじいものだったという。
これまで、会議室でどれほど鋭く追及されても、「そんな記録はない」「それは別件の経費だ」「君は我が派閥に喧嘩を売る気か」と、声の大きさと社内政治の力学だけで強引に事態を有耶無耶にしてきた役員たち。
しかし、レイ部長が突きつけるエクセル表のプリントアウトの前では、彼らは一言も発することができなくなった。
そこには、いつ、誰が、どのダミー会社を使って、いくらの裏金をどの口座に流したのか。その裏付けとなる三十年前からの膨大な領収書と稟議書の原本が、一つ残らず完璧にナンバリングされ、言い逃れの余地がない形で示されていたからだ。
「この期に及んでまだシラを切るおつもりですか。該当する原本はすべて地下資料室の『C-12』から『C-18』ボックスに、あなたの署名付きで保管されていますよ」
氷の監査官と呼ばれるレイ部長の冷徹な宣告の前に、長年会社を私物化し、甘い汁を吸い続けてきた派閥の重鎮たちは、次々と顔面を蒼白にして崩れ落ちていった。
ミオの完璧なファイリング技術がもたらす物理的証拠は、どんなに強固な権力の壁をも貫く最強の矛となったのだ。
結果として、社内に長年蔓延っていた不毛なマウント合戦や、泥沼の派閥争いは次々と沈静化していった。
派閥のトップが不正の証拠を突きつけられて辞任や異動に追い込まれると、その威光を笠に着てふんぞり返っていた取り巻きたちも一気に力を失った。誰が偉いか、誰の派閥に属しているかといった無意味な争いよりも、日々の業務を正しく透明に行うことの方が重要視される空気が、少しずつ社内に広がり始めていた。
とはいえ、その劇的な浄化劇の中心にある『証拠』を生み出しているのが、地下資料室に左遷された地味なOLである私だとは、レイ部長とごく一部の監査部員以外は誰も知らない。
私は今日も今日とて、薄暗い地下室で温かいお茶をすすりながら、ただひたすらに過去の書類と向き合っている。
上の階でどれほど巨大な権力が崩壊しようとも、私の心は至高の境地の中にあり、全く揺らぐことはなかった。私が関心があるのは、権力の失墜ではなく、先人たちの仕事の軌跡を美しく整えることだけだったからだ。




