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第1章 第1節 コツコツ重ねた努力を嘲笑われ、同期に手柄を奪われミスまで擦り付けられたミオ。姥捨山と呼ばれる地下資料室へ左遷され、ヒエラルキーの底辺で生きる苦悩に押し潰されそうになる。

第1章 地下室と究極の解放


第1節 コツコツ重ねた努力を嘲笑われ、同期に手柄を奪われミスまで擦り付けられたミオ。姥捨山と呼ばれる地下資料室へ左遷され、ヒエラルキーの底辺で生きる苦悩に押し潰されそうになる。


 現代社会の縮図とも言える巨大なオフィスビル。その最下層に、私の新しい職場はあった。

 大手ゼネコンで働く二十五歳の私、ミオは、入社以来ずっと真面目にコツコツと努力を重ねてきた。派手なパフォーマンスは苦手だけれど、誰にも負けないくらい丁寧に資料を読み込み、正確なデータを作り上げる自信はあった。それが会社のためになると信じて疑わなかったからだ。

 しかし、現実は甘くなかった。

 声が大きく、立ち回りの上手い狡猾な同期のユリカに、私が何日も徹夜して仕上げた大型プロジェクトの企画書を丸ごと奪われたのだ。「ミオちゃんには荷が重いから、私がフォローしてあげる」と上司の前で巧みに立ち回り、いつの間にか彼女の手柄にすり替わっていた。

 それだけならまだ耐えられたかもしれない。けれど、ユリカは自分の確認漏れで起きた致命的な発注ミスまでも、「ミオちゃんが入力したデータが間違っていたみたいで……」と涙ながらに私に擦り付けたのだ。

 地位や名誉、見栄とマウントが渦巻く社内政治の中で、地味で口下手な私の言葉に耳を貸す者など誰もいなかった。

 結果として、私は社内で「姥捨山」と揶揄される地下資料室へと左遷された。

 重い鉄扉を開けた先に広がっていたのは、窓一つない薄暗く埃っぽい空間だった。冷たいコンクリートの壁に囲まれ、数十年前からのカビ臭い段ボール箱が、まるで墓標のように天井まで山積みにされている。

「ここで……これから毎日、一人で……」

 誰もいない地下室で、私はポツリと呟いた。

 地位や名誉への執着、理不尽なマウント、どれだけ頑張っても報われない努力。ヒエラルキーの底辺に突き落とされた私は、生きる上で避けがたい重苦しい苦悩に完全に押し潰されそうになっていた。

 生まれてきた意味はあるのか。老いていくだけの無意味な時間。心が病んでいく恐怖。そして、いずれ何も残せずに終わっていく命。人生にまとわりつく逃れられない四つの苦しみが、冷たい泥水のように足元から這い上がってくる。

「疲れた……もう、なにもしたくない……」

 むせ返るような埃の匂いの中で、私はパイプ椅子に崩れ落ちた。

 息をするのもしんどい。ただ、喉の渇きだけが現実を突きつけてくる。私はすがるような思いで、自販機で買ってきた冷えた缶コーヒーを手に取った。

 プシュッ、と炭酸の抜けるような小さな音が響く。

 私はプルタブを開け、微糖のコーヒーを一口、乾いた喉の奥へと流し込んだ。

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