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第30話 尽滅の一撃

唐突なその言葉に戸惑う4人、シルトアは今モータル・ブルにどのような異変が起きているのかを手短に伝えた。


「状況は分かりました。 ですがシルトア、それほど危険なら尚のこと私が──」

「もし時間に余裕があるのなら先生が適任ですが今は一刻を争います」


本来であれば核の討伐はおろか、スタンピードすら初体験の冒険者に残らせるなど時間稼ぎに死んでくれと言っているようなものだ。

しかしその瞳に宿る覚悟の炎がシルトアの言葉を無条件に信じさせる。


「皆を安全に退避させるには先生の力が必要不可欠です。 それに、昔の俺とは違いますから」

「・・・・・・分かりました」

「ラルクさん、正気か!? 兄ちゃんはまだ銀──」

「ダリさん、俺を信じてくれ」

「! ・・・・・・あぁ分かったよ! その代わり必ず生きて戻れよ兄ちゃん!!」


僅かな長考の末にラルクが出した答えにダリアリは思わず止めにかかる。

しかし現状シルトアが相手をする以上に良い案が浮かばないことも事実、渋々ではあるがダリアリもその案を飲み込んだ。


そうしてダリアリの力強い言葉を最後に彼はラルクの肩を借りながら来た道を引き返す。


「シルトアさん、ご武運を」

「おいシルトア、死んだら承知しねぇぞ」



「・・・・・・あぁ」


残る2人の激励に答えるとライディはクレナに支えられながらダリアリの後を追いその場を後にした。


4人の背中見送るとシルトアは再びモータル・ブルへと向き直る。


「よしラナ、教えてくれ。 あいつを倒す方法を」

「・・・・・・了承、ではまず左腕の盾を外してください」

「え?」


予想外の指示に疑問を浮かべるシルトアに対してラナは説明を始めた。


「この技は使用者の肉体に大きな負荷を与える為、事前の練習が不可欠なのです。 それが出来ていない以上、肉体の保護にリソースを回す為に余分な物は全て排除しなくてはなりません」

「そういう事か、分かった」


ラナの説明に合点がいったシルトアは左腕の盾を取り外すと、盾は土埃と鈍い音を上げて落下する。


「よし、次は?」

「あとはこちらで行います。 シトは準備が出来次第、この技名と共に全力で盾を打ち付けてください」

「あっ、やっぱりあるんだなそれ・・・・・・」


当然の如く技名があることを付け加えるラナの声と共に、またしても頭の中に単語が浮かび上がった。

シルトアが半ば諦めつつ受け入れていると、右腕の盾の形状が重々しい駆動音と共に変化を始める。


盾に今まで視認出来なかった溝が数本入り込むと、先端部のみを残して盾の外殻が可動し後ろへとずれ動く。


そして顕になった盾の内部は見慣れない金属の部品で構成されており、変形せず残った先端部は2本の太い金属の柱によって支えられていた。


「な、中身ってこんなだったのか・・・・・・」

「シトは以前、冒険者ギルドにて私の盾には"バレル"が無いと仰っていましたね。 それには誤りがあります、正しくは──」

「盾の中にあったってことか!」


「・・・・・・はい」


自身の台詞を取られ少し不機嫌そうに答えるラナだったが、シルトアは興奮した様子でまるで気付いていない。

そして盾の変化もまだ終わってはいなかった。


先端部を支える2本の金属製の円柱、よく見ればその中程から先端にかけては円柱の外周が一回り細くなっているのが見て取れる。

すると吹き上がる蒸気と共に円柱が埋もれていくように収縮を開始した。


最終的には拳と変わらぬ位置にまで縮んだ盾の先端部、すると準備が完了したのかラナの声が再び頭に響く。


「身体強化、肉体保護共に準備完了です。 再度警告しますがこの技は今のシトでは1度限りです、よろしいですか?」

「・・・・・・はっ、ぶっつけ本番な上に使う技は全く知らない。 上等だ!!」


恐怖と興奮に鼓動が速まり無意識に口角が上がる。

シルトアは左足を大きく踏み込むと空いた腕で右腕を支え、瞬きを忘れた瞳でモータル・ブルを中心に捉えた。


殺気に反応したのかモータル・ブルは苦しげに呻きながらもシルトアへと向き直り、力強く蹄を地面に打ち付ける。


突進の構えだ。




両者共に構え、脚に力を込める。

そして互いの呼吸が重なった瞬間、それが勝負の合図となった。



一直線に駆け出し足を踏み出す事に加速していく。

激突までほんの一瞬、しかしシルトアにとってはその何倍も長く感じられた。


ゆっくりと眼前に迫るモータル・ブルの巨体、こちらの拳の射程に入るより前に喉元に迫る角先をシルトアは顔を逸らし直撃を避ける。


(これ以上はこっちも軸がぶれる・・・・・・!!)


直撃を避けたものの角先はシルトアの左頬を抉り裂く、だがシルトアは決してモータル・ブルから目を離さない。


「さぁ受け取れ! お前にやられた冒険者達の無念も纏めてな!!」


懐にまで入ったシルトアは地面がひび割れる程に強く踏み込み、拳を握り締め叫びを上げる。


彼岸の楔(トゥームズ・バンカー)!!!!!」


声と共に振りかぶった盾はモータル・ブルの角を砕き顔面を打ち据えた。

直後に金属が弾ける甲高い音が盾の内部から響き、極限まで収縮された先端部が開放される。


低く鈍い衝撃が腹の底に響き渡った次の瞬間、盾の内部から高濃度の炎が轟音と共に吹き上がった。




放たれた盾による衝撃は頭蓋から全身にかけて波及していき、モータル・ブルの肉体は内側からの衝撃に耐えきれずに崩壊。

苦悶の声を轟かせた怪物を炎が飲み込んでいく。


瞬間飛び広がろうとする瘴気を吹き上がる炎が焼き払い、モータル・ブルの命は文字通り燃え尽きたのだった。


「はぁ・・・・・・ はぁ」


肩で荒く息をするシルトア、視界に写るのは黒く焼け焦げた地面と動かなくなったモータル・ブルの死骸。

そして蒸気を上げる程に赤熱した伸びきった金属柱と先端部。


「勝った、か・・・・・・!」


シルトアの身体から緊張と恐怖が抜け安堵の声が漏れる。

思わず目を細めてしまうほどの笑みを浮かべてしまいそうになるが、その視界は赤く滲んでいた。


「え・・・・・・ あれ?」


直後に身体を襲う違和感、脈打つ血管は所々破れ血が吹き出し瞳から流れる赤い涙が頬を伝う。


あれ程の火力、例えメイガスであろうとその余波は計り知れない。

肉体の許容限界を超えた負荷に全身が悲鳴を上げていたのだ。


肌の赤みは消え、血と共に生気までもが流れ出すような感覚。

シルトアの意識は徐々に遠のき、遂にはそのまま倒れてしまう。


「シト・・・・・・! シト!」


沈みゆく意識が捉えたのは脳内に響くラナの声、それを最後にシルトアの意識は完全に途絶えたのだった。























ここまでお読みいただきありがとうございます!


・面白かった!

・続きが気になる…!

・取り敢えず良かった!


と思えば是非とも☆評価をお願いいたします。

何よりの励みになりますし今後の活力となります!!


どうぞよろしくお願いいたします。

それでは次の話でお会いしましょう!

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