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第25話 行進

大森林への突入から数分。

魔物に気取られぬようシルトア達は、木々の隙間から射す月明かりだけを頼りに歩みを進めていた。


「思いのほか魔物が少ないな」

「それだけ他の冒険者が頑張ってるっつうことだ、それでも多少は残ってるだろうがな」


草木を切り分けながら先頭を進むライディの呟きにダリアリが反応を見せる。


5人は互いの役割を活かせるよう1列となった陣形を組んでいた。

最前衛には本人の希望からライディを採用しすぐ後ろにダリアリを。

シルトアは魔物がどちら側から来てもカバー出来るよう中央に配置され、次に後衛のクレナ。

そして最後尾を守るラルクといった布陣だ。


「即席ではありますがヴラドの人選なだけあって陣形は組みやすかったですね」

「正直俺は盾を持ってる以上、先頭かと思ってました」


ラルクの言葉に賛同すると共に自身の考えを吐露するシルトア、するとそれに最前衛を務めるライディが口を出した。


「盾持ってる奴こそ真ん中だろうが、魔物が揃って前から来てくれるとでも? ましてや初心者に任せられるかよ」


悪態をつきながらも話す内容は至極真っ当、その様子を不思議に思っていると背後からクレナが潜めた声で話しかける。


「すみません、あれでも兄はあなたを気にかけているのです。 中央が対応しやすいのは事実ですがそれ以上に最も安全ですので」

「そう、なのか・・・・・・」


最初の印象があるだけにすぐには呑み込めなかった。

しかしそう言われると彼の言葉が、こちらの身を案じているかのように聞こえなくもない。


態度こそ悪いが入念な索敵に加え、先行し過ぎないよう適切な速度に歩幅を保っている。


シルトアはライディが何故あのような態度を取るのかクレナに尋ねるが、「兄は不器用なんです・・・・・・ 詳しくは直接聞いてあげるのが良いかと」とぼかされてしまった。











討伐隊の5人はその後、何度か魔物をやり過ごしながらも着実に奥へと歩みを進めていく。


その時、突如としてライディが足を止めると拳を握ったハンドサインを後続の4人に見えるよう掲げた。


(! 止まれってことか)


シルトア含めた後続の4人は一言も発することなくその場で足を止める。

その後ライディは姿勢を低くするようジェスチャーで伝え、進行方向の先を指さした。



5人が茂みの隙間から先を覗くと、そこではバーンウルフの群れが寝息を立てていたのだ。

多少開けた場所の中央には数十匹が身を寄せ合いながら眠っており、周囲を数匹のオスが見張っている。


「ついてねぇな・・・・・・急いでるってのに」

「迂回は・・・・・・ 難しそうですね」


小さく潜めた声で話すライディにクレナも意見を出す。

暗くて判別しづらいが、向かって右側は斜面になっており足場が不安定。

左側は草木が生い茂っている為、バーンウルフに気取られぬことなく通り抜けるのは難しいだろう。


「どうしますか? 1度下がってから大きく迂回するという手も──」

「いや、時間が掛かりすぎる。 第2波を受け止めている奴らがいつまで持つか分からねぇ」


ラルクの提案をダリアリが止める、その理由として今回のスタンピードは第1波の時点でかなり手強い魔物が紛れていた。

よって第2波が並のスタンピードと同程度の危険度と断定することは出来ない以上、時間は掛けられない。


「となると・・・・・・」

「あぁ、やるしかねぇ。 手早く済ませるぞ」


シルトアの言葉を続けるようにダリアリが全員に声を掛けた。

皆はその言葉に静かに頷くと各々の武器に手を掛ける。


幸いにもバーンウルフのいる場所は開けた地形なので月明かりも相まって戦いやすい。

更に明るい向こうからは暗闇にいるこちら側を視認するのは至難の業、奇襲するには持ってこいの状況だ。


「いいか、合図で飛び出すぞ。 俺とライディが手前をやる、クレナは奥のヤツをやれ」

「「了解」」


「ラルクさんはクレナを守ってやってくれ」

「お任せ下さい」


各自に目標を示すダリアリ、そして最後に彼はシルトアへと目を向ける。


「兄ちゃんは、俺らについてこい。 俺とライディの背中を頼む」

「! 分かった」


シルトアはダリアリの言葉にそう返すと拳を握る、背中を預けられたその信頼に応えるべく。

そして風が吹き木々の凪ぐ音が一際大きくなったその瞬間。


「今だっ!!」


掛け声を合図にダリアリ、ライディ、シルトアは勢いよく飛び出した。

続いてクレナが立ち上がり矢を引き絞ると、その足元の茂みからラルクが姿勢低く踏み込む。


「先ずはこちらを!」


その声と共にラルクは懐から十数本の金属針を取り出し投げ放つ。

放たれた針は前を進むシルトア達の合間を縫い、見張りをしていた数匹に直撃した。


突如として走る痛みに怯むバーンウルフ、その時生まれた僅かな隙は彼らにとって致命的な物となる。


「助かったぜ! そらぁ!!」

「はっ!」


ダリアリとライディは足を止めること無くすれ違いざまに一撃、見事に首筋を捉えた。

そこに針の直撃を免れたバーンウルフが飛び掛るが。


「させるかよ!」


タイミングをずらして茂みから飛び出したシルトアが飛び掛るバーンウルフを盾で殴り飛ばした。


「よし次だ! 目が覚める前に出来るだけ多く!」


ダリアリは大きく踏み込むと地面に蹴り跡を残し急加速、一気に間合いを詰め薙ぐように大剣を振るう。

騒ぎに続々と目を覚まし始めるバーンウルフだったが、その身を起こし切る前に脳天を矢に貫かれた。


後方にて構えたクレナの狙撃である。

呼吸を整え放たれる矢にはブレがなく、その一つ一つが的確に急所を貫いていく。


しかし。


「っ! 間に合いません!」


スタンピードによって気が立っているのか、目を覚ましたバーンウルフの戦闘態勢に入るまでの速度が異様に速いのだ。

クレナ1人の狙撃ではとても処理が追い付かない。


「任せろ!!」


するとライディがロングソードを強く握り込むと戦闘態勢に入ったバーンウルフ達に切り込む。

体術を駆使しながら常に1体1の状況になるよう立ち回り、月明かりに照らされた眩い刀身が弧を描きながら確実に魔物を斬り伏せる。


(強い・・・・・・)


シルトアもそれなりに倒している方だが彼らと比べると霞んでしまう。

背中を守ろうにも背面に回られる前に倒しているのだ。


そんな時、前線の3人を迂回する形で後衛のクレナに向かって数匹のバーンウルフが高速で詰め寄るがそこにラルクが立ちはだかる。


「先生! そっちに行きました!」


これに気付いたシルトアはラルクに向けて声を飛ばすが、当の本人は至って冷静で直立のまま後ろ手を組んでいる。


「先生!!」


バーンウルフがラルクの鼻先にまで迫った瞬間、彼はその身を翻し魔物の腹を蹴り上げた。

そして続け様に襲い来るバーンウルフの前足を掴むと、今度は側面目掛けて掌底を打ち込む。


危険を感じ取ったのかバーンウルフ達は息を合わせ同時に飛び掛るが、その最中ラルクは胸元を軽く払いそのまま腰のベルトへと手を掛ける。


そして次の瞬間、振り抜かれた"ベルト"はバーンウルフを纏めて切り飛ばした。


「さぁ、どんどんかかって来なさい。 文字通り教鞭を振るって差し上げましょう」


その手に握られていたのは鞭のようにしなりながらも、金属剣の鋭さと高度を併せ持つ長剣。

ウルミである。





シルトアはそんなラルクの戦いぶりに舌を巻いていたが、突如ラナの声が頭に響いた。


「シト、彼の背後にひとつ隠れています」

「!?」


するとその直後、ライディの背後からバーンウルフが飛び出した。

恐らくは仲間の死骸に身を隠しながら迫っていたのだろう。


「伏せろライディ!」

「!!」


その声にライディは咄嗟に身をかがめるとその頭上をシルトアの盾が風圧と共に通り抜け、バーンウルフを吹き飛ばし木の幹に叩きつけた。


直後、シルトアはライディに駆け寄ると。


「余計なお世話だ、あれくらい対処出来る」

「・・・・・・悪い」


「だがまぁ、礼は言ってやる。 案外動けるじゃねぇか」

「! まぁな」


今ので多少認めてくれたのだろうか、彼のシルトアに対する態度が少し和らいだように感じた。


「まだ来ます!!!」

「! くそっ、次から次へとキリがねぇ」


後方から響くクレナの言葉に再び2人は構えるがバーンウルフは相当数残っている。

核の魔物を前にこれ以上時間を無駄にする訳にはいかない、そう判断したダリアリはライディに声を飛ばした。


「消耗は避けたかったが仕方ねぇ、ライディ! 炎を使うぞ!」

「速戦即決だな、了解!」


「? 一体何を・・・・・・」


シルトアが二人の会話を理解出来ないでいるとライディは顔をニヤつかせて口を開く。


「下がってな、ひよっこにこいつは熱すぎるからよ」


ライディはそう告げると手にしたロングソードを肩掛けの鞘では無く、腰に提げた鞘へと納刀した。


「こっからが炎刃の鞘の本領発揮だ!」



















ここまでお読みいただきありがとうございます!


・面白かった!

・続きが気になる…!

・取り敢えず良かった!


と思えば是非とも☆評価をお願いいたします。

何よりの励みになりますし今後の活力となります!!


どうぞよろしくお願いいたします。

それでは次の話でお会いしましょう!

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