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第23話 新たな出会い

急遽用意された仮設テント郡、その中に一際大きなテントがあった。

ギルドマスターが設置したスタンピードの対策本部である。


(カーリルさんが言ってたのは、このテントだよな・・・・・・?)


核の討伐への参加について話し終えた後、ここへ来るよう告げられたシルトアはテントの前で足踏みしていた。


知らぬ場所に始めて入るのは誰しもが緊張を覚えるだろう、シルトアは数回深呼吸を行い息を整える。


(・・・・・・よし!)


心と体を落ち着かせ暗幕を手で掴むと、シルトアは勢いよく開き中へと足を踏み入れた。


そこで待っていたのは。


「お兄ちゃん! また油を無駄遣いしたでしょ、高いんだから大事に使ってよ!」

「悪かったって! ってかお前も俺の荷物勝手に見るなよ!」


「おいお前ら、時期にヴラドさんも来るんだからその辺にしとけって」


その時シルトアの目に映ったのは中央に置かれた縦長の木製テーブル。

では無く向かい合いお揃いの赤髪を揺らしながら喧嘩する男女。

そしてその2人を諌めるヴラドにも負けない程の体格を持つ茶髪の男だった。



男女の方は聞こえてきた会話からして兄妹だろうか、そんな風にシルトアが考えを巡らせていると2人を諌めていた男がこちらの存在に気付いたようで。


「ん? おいお前らそこまでだ、人が来た」


その声に2人は口喧嘩を止めると同じくシルトアの方に無言で目を向ける、刺すような視線に気分は品定めを受ける果物の気持ちだ。


「取り込み中のところだったみたいだな、悪い・・・・・・」


耐えかねたシルトアがまず口を開いて様子を見る、すると。


「おっと、こっちこそすまん! 恥ずかしい所見せちまったな! 俺はダリアリ、そっちは?」

「えっと、シルトアだ・・・・・・」


大きく髪を刈り上げた風貌の男は黒色の瞳を覗かせながらこちらに手を差し出すと、気圧されつつも応えたシルトアの手をガッシリと握りこんだ。


「兄ちゃんもここに来たってことは、ヴラドさんに声掛けられたのか?」

「あぁ、ということはあなたも?」

「まぁそういうことだ、俺らと同じってんなら自己紹介をしねぇとな!」


そう言うとダリアリは後ろにいた2人に前へ出るよう促すと、咳払いを挟み声を張り上げる。


「俺らは金等級パーティー"炎刃の鞘"!! リーダーは俺、ダリアリ。 そして──」

「前衛のライディ・・・・・・」

「お兄ちゃん失礼でしょ! 私は後衛を務めるクレナです。 先程は見苦しい所をお見せしてすみません!!」


ダリアリの高らかな声とは裏腹に、目を合わせず高圧的な態度で名乗るライディと対照的に畏まった自己紹介をするクレナの2人。

サラスと違い暗めな色調の赤髪と対面することで見えた共通の青い瞳、やはり2人は兄妹のようだ。


それにしても"金等級"パーティー。

まばらな空気感に流されかけたが、たった3人のパーティーで金等級とはそれぞれが相当な実力者ということなのだろう。


「じゃあこっちも、改めて俺はシルトア。 一応銀等級のメイガスだ」



自己紹介を聞いた3人はそれぞれ違った反応を見せた。

ダリアリは先程までとは違い真剣な顔付きを見せ、クレナは口に手を当てて目を見開いている。

そしてライディはこちらに目を向けたかと思えば眉をひそめ、シルトアに詰め寄り声を荒らげた。


「銀等級だぁ!? お前これから俺らが何しに行くか分かってんのか! メイガスだろうが関係ねぇ、死にたくねぇなら今すぐ帰れ!」


口を開いたかと思えば聞こえてくるのはこちらの参加を断固拒否する言葉だった。

シルトアは呆気にとられていたが直後、クレナがライディの襟首を掴み引き摺りながら下がらせる。


「おいクレナ! 離せ!」

「駄目! お兄ちゃんこそ初対面の人になんてこと言うの!」


「そうだぜライディ、まだ話も聞いてないのに決めつけるもんじゃねぇ」


2人からの言葉にライディは、唸りながらも物凄く不服そうな表情で引き下がった。



シルトアは急な出来事に面食らっていると、背後から聞き馴染んだ声が耳に響く。


「どうやら自己紹介は済んだみてぇだな」

「! カーリルさん」


顔馴染みが来たことにシルトアは内心安堵していたが、3人は逆に緊張した様子に変わり口数が明らかに減った。



ヴラドはシルトアに一瞬笑みを返すと、テント中央のテーブルに集まるよう号令をかける。


「さて、ここに集まってもらったからには理由の説明は要らんだろう。 よってくだらん口上は抜きに本題に入る」


全員の顔を確かめるように目を向けたヴラドは、一呼吸置いた後に口を開いた。


「お前達にはこれより、核の討伐を行ってもらう。 相手はボイリング・ブルだ」


低く力のある言葉に皆が息を飲む、そんな時ダリアリが声を上げる。


「ヴラドさん、あんたの目を疑ってる訳じゃないがひとつ確かめさせてくれ。 そこの兄ちゃんを討伐隊に入れた理由は、何だ?」


(!? ・・・・・・ まぁ、そりゃそう思うよな)


ダリアリの指摘は至極当然の物だろう、核の討伐という危険な役目。

金等級の冒険者でなくては手に余るような魔物を相手に、理由も無く銀等級に背中を預けたくはない。


「勿論説明する、今日のスタンピード第1波の最中で妙なことが起きただろう?」

「あぁ、急に赤い煙が魔物共を覆ったと思えば目の色変えて別のところに突っ込んでそのまま潰れてたな」


ヴラドの言葉にシルトア除く3人は昼の出来事を思い返し顔を悩ませた。

するとヴラドは何やら悪い笑みを浮かべて話を続ける。


「その魔物を引き寄せた上で一掃したのがそこのシルトアだ」

「「「!?」」」


その話を聞いた3人は目を丸くし、口を閉じるのを忘れてしまっていた。


(成程、この顔が見たかったのね・・・・・・)


大の悪戯好きな我らがギルドマスター、どうやらわざと情報を伏せていたらしい。

するとダリアリが喋るよりも前にライディが口を出した。


「ま、待ってくれヴラドさん! あんな物量メイガスだろうと捌き切れる訳がねぇ!」

「そりゃ"普通"だったらな」

「!」


するとヴラドがニヤケ顔のまま、ぐるりと軟体動物のような滑らかな動きでシルトアに目を向ける。


「おいシルトア、お前さんあのバカでかいのは何処にやったんだ?」

「え、邪魔になると思ってテントの外に置いてるが・・・・・・」

「丁度いい、こいつらに見せてやれ」




その後シルトアが担ぎこんできた巨大な2枚の盾にダリアリ達は愕然とする。

いくら力を込めてもピクリとも動かない鉄塊。

そしてあの魔物達を丸ごと受け止めたという事実、相手がボイリング・ブルということから3人もシルトアが呼ばれた理由を察した模様。


ライディは最後まで渋々といった様子だったが。


「さて、疑念も解消しところで、ボイリング・ブル討伐作戦の内容を伝える」



その概要はシルトアが思っていたものよりもシンプルかつ分かりやすいものであった。


まず、これより来る第2波を討伐隊を除く冒険者達で迎え撃つ。

その際より多くの魔物を惹きつけられるよう、第1波迎撃時よりも森林に近い位置で陣形を組む。

そうして手薄になった第2波の中を討伐隊が進み核の魔物を見つけこれを撃滅。


「と言うのが全体の流れだ。 留意すべきは核を見つけるまで極力戦闘を回避するってところだな、体力や物資を消耗して核と戦うって時に息切れしてるようじゃ目も当てられねぇ」


机の上に広げられた簡易的な地図を参考に要所を指差しながらヴラドは作戦の説明を行う。


「そして肝心の核の討伐についてだが、戦いの軸はお前だ。 シルトア」


その時目が合ったヴラドの視線の奥には信頼とまだ微かに罪悪感が揺らいでいた。


「奴の1番の脅威は圧倒的な速度と破壊力を持つ突進だ。 逆にそれを封じられるなら金等級が居なくても倒せる」


ボイリング・ブルの突進、一見芸のないだけの技とも思えるが事実この魔物による突進が死傷理由の6割強を占めているのだ。

強靭な脚部によって放たれる突進は予備動作を見ても回避するのは困難を極める。

更に頭部の角は突進に特化するかのように先端が体の中心軸に向いており、宛ら破城槌の如く鋼鉄をも打ち貫く。


「どうしたシルトア、怖気付いたか?」


シルトアがボイリング・ブルの脅威を頭の中で再確認しているとヴラドが声を掛けてきた。

その時いつの間にか冷や汗が額を伝っていたことに気付く。


あの盾ならその突進をも止めることが出来るかもしれない、そうなれば単純計算でも生存率は倍近く跳ね上がる。

責任重大だ、正直怖さを感じずにはいられない。


それでも。


「いいや、上等さ」

「・・・・・・ よし、では続けよう」


やると決めたのだ。

何よりラナの懸念のせいか、やらなくては後で必ず後悔するような。


そんな気がしたのだ。




















ここまでお読みいただきありがとうございます!


・面白かった!

・続きが気になる…!

・取り敢えず良かった!


と思えば是非とも☆評価をお願いいたします。

何よりの励みになりますし今後の活力となります!!


どうぞよろしくお願いいたします。

それでは次の話でお会いしましょう!

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