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第13話 決闘の幕開け

──拝啓、先生へ。


如何お過ごしでしょうか?

ご無沙汰しています、シルトアです。


先生に置かれましては北方の寒空の元、毎朝身が引き締まる思いをしておいでかと思います。


私ですか?


私は今、我が身に降り掛かる試練の数々に冷や汗が止まりません。



遥か遠方にいる己が師に向けた手紙を頭の中でしたためるシルトア。

彼は今ギルドのある大通りから外れ、郊外の一角に設けられた冒険者向けの訓練場に訳も分からぬまま立たされていた。


「さて、準備は出来たか?」



(どうしてこうなった!!!!)



向かい合って立つサラスの声で我に返るとシルトアは質問に質問で返す。


「・・・・・・まだこうなった理由を聞いてないんだが?」

「単純な事だ、私は君を悪意ある者ではないと判断した

「それは・・・・・・ どうも」

「ならば後は己のアーティファクトが違法物ではないと証明出来れば良い、自分の意思で御せる物だとな。 連行されたとしても同じことだろう?」


(あぁ、なるほど。 そういうことか)


サラスは分かっていた。

騎士団による強制連行が容疑者にどんな思いをさせるのかを。

かといって可哀想だからで片付けられてしまっては法の意味が無い。


そして彼女は考えた末に、暴走の危険性があるアーティファクトかどうかの審問を決闘という形で行うことにしたのだろう。



しかし。



「それで、本音は?」

「! ・・・・・・ なんの事だ」

「楽しみなんだろ? その滾った表情を見れば分かる」


その言葉に一瞬驚いたサラスはすぐに自身の顔に手を当て静かに笑った。


「あぁ、君の言う通り決闘を選んだ最大の理由、それは"戦ってみたかったから"だ。 落胆したか?」

「いいや、寧ろ安心できる理由だな」


(戦闘狂って噂まで本当だったとはな・・・・・・)


サラスは左腰に下げた剣に手を伸ばし、シルトアもそれに応えようと身構える。

しかしシルトアはここで大事なことに気付いた。


「おいちょっと待て、俺のアーティファクトはどこだ?」

「? 両腕に嵌めたその篭手がそうでは無いのか? 報告では防具を模した特異なアーティファクトと聞いたが」

「いや確かにこれも武装なんだろうが、本体は別にあるというか・・・・・・」


焦るシルトアは訓練場の外周で観戦しようと立ち並ぶビルケス含めた冒険者達に目を向けるが、彼らも互いに目を見合わせるだけで誰も気付かなかった様子。


(だよな・・・・・・ 仕方ない、取りに行くか?)


「その必要はありません」

「おぉわっ! びっくりしたぁ」


いきなり真横で声がしたと思えば、そこには神の使いである少女が並び立っていた。


「音もなく真横にいられるの心臓に悪いから止めない?」

「まずは頭の中で私の盾を強くイメージしてください」

「聞けよ・・・・・・ まぁいいや、それでイメージだったか」


言いたいことはあるものの、一先ずシルトアは息を整え瞼を閉じてあの盾を思い浮かべた。

形状に大きさ、厚みに重さが徐々に頭の中で組み上がり次第に明瞭になっていく。


「マスター、できましたか?」

「あぁ」

「ではそのイメージを保ったまま腕を空に掲げてください」

「分かった!」


シルトアは目を見開き勢いよく右腕を突き上げた。

瞬間、ガントレットを小さな稲妻が駆け巡り僅かに腕が痺れた。





「・・・・・・何も、起きな──!?」


そう口にしかけた時にシルトアは不思議な気配を感じ取り、すぐさま身体ごと視線を気配の先へと向ける。


そこに居たのは、晴れやかに澄みわたる空を翔ける2羽の鴉。


しかし今のシルトアの目にはその正体がはっきりと映っていた。


「おいおいおい、あれって!?」


勿論、鴉などでは無い。

それは回転しながらシルトア目掛けて飛来する無骨な鉄塊だった。


目を疑いたくなる光景にシルトアは後ずさろうとしたが、それを隣に立つ少女が引き留める。


「マスター、姿勢はそのままに。危険は恐らくありません」

「今不安になる要素あったよな!」


周囲の者も異変に気づいたのか目を丸くしてその光景に見入っているが、そんな中でシルトアは捨て鉢気味に構える。



そしてシルトアに向かって突っ込んできた鉄塊は、鈍い金属音と共に大きく砂埃を巻き上げたのだった。





「なんかでけぇのが飛んできたが、シルトアの奴大丈夫なんだろうな・・・・・・」


その場にいた者には何が起きたのかまるで分からなかった。

黒い何かがシルトア目掛けて飛来し、轟音を響かせ土煙が上がっていること以外。


「おい! 見ろよあれ!」


その時、冒険者の1人が土煙の中心を指差す。

揺らめくような影は次第に形を定め、煙が晴れきった時にその姿を顕にした。


降ろした腕を完全に覆っても尚、肩上より頭頂部にかけて余るほどの巨大な鉄塊を両腕に備えたシルトアの姿を。


「あれがシルトアの・・・・・・」

「すげぇ迫力だな!」


ざわめく冒険者達が思い思いの言葉を口にする中、シルトアの真剣な表情を見たビルケスは笑みを浮かべて静かに呟いた。


「いい顔しやがって、様になってるじゃねぇか」






(・・・・・・くっそ怖かった)


ビルケスは真剣な表情だと思っていたようだがその実、シルトアは単に驚きと怖さで表情が固まりきってしまっているだけである。


「成功のようですね」

「成功でいいのかこれ? ってかどういう仕組みだよ!」


声を僅かに震わせながらシルトアは少女に率直な疑問を投げかけると、少女はその声色をほんの少しだけ弾ませながらシルトアに説明した。


「マスターは磁石をご存知ですか?」

「金属を引き寄せるって特殊な石だろ、純度が高いのはそれなりに値が張るって聞くが」


「原理はそれと同じです。 ガントレットに特殊な電気を流すことで、どれだけ離れていようとも武装のみを引き寄せることが出来るのです」

「電気って言うと冬場とかでよく指がバチってなるやつか? ったく後で詳しく聞かせてもらうぞ」


シルトアは息を整えると、再びサラスに向き直る。


「準備は出来たようだな」

「あぁ、待たせたな」


彼女はもう楽しみで待ちきれないといった様子で左腰に提げたもう片方の剣を抜き放った。


「! 刺剣・・・・・・ そっちが本命か?」

「あぁ、直剣も不得手ではないがあの剣は騎士として授かった言うなれば正装の一部のようなものだ。 本気でやるならこちらでなくてはな」


彼女が剣を抜いた瞬間、空気が変わったのを感じた。

シルトアの額に汗が滲み、陽射しに焼かれるような緊張感が肌の表面をなぞる。


「どうした、やはり盾で戦うというのは心許ないか? 何なら今からでも得意な武器を用意してやるぞ?」


(! 言ってくれるな・・・・・・)


その言葉は聞き捨てならない。

サラスの言葉はシルトアを焚きつけるのには充分すぎる物だった。


「悪いが──」

「その必要はありません」

「!?」


言い返してやろうと口を開いたシルトアを遮ったのは、意外にも横に立つ少女だった。

己の一部を馬鹿にされたのが気に障ったのだろうか。

少女は僅かに頬を膨らませながらサラスを睨みつけ、その言葉にも怒りか込められてるように聞こえる。


その様子を見たシルトアは驚きつつもすぐに笑みを浮かべ、少女の頭に手を置く。


「悪いがサラス。 そういうことだ、俺はこいつと自分のアーティファクトを信じる」

「マスター・・・・・・」


こちらを見上げる少女の顔に笑顔で返すと少女はいつもの調子に戻り、光の粒子となってブレスレットに宿った。




「ならば良い・・・・・・ 打ち合いの火花に真実を見るとしよう」

「あぁ・・・・・・」


2人の様子に僅かに笑みを零したサラスは即座に目付きを尖らせ、剣の切っ先を水平に保ち弓を引き絞るように構える。


それに対しシルトアは腰を軽く落とし、大盾使いらしく左腕を前面に拳を握りしめた。



そして風が止んだ刹那。

シルトアは思い切り地を蹴り上げサラスの目前まで肉薄し、勢いのまま盾を振り下ろすのだった。




















ここまでお読みいただきありがとうございます!


・面白かった!

・続きが気になる…!

・取り敢えず良かった!


と思えば是非とも☆評価をお願いいたします。

何よりの励みになりますし今後の活力となります!!


どうぞよろしくお願いいたします。

次の話でお会いしましょう!

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