そして、選ばなかった方へ
葵(あおい)は、恋をしていた。
いや、正確に言えば、ふたりの男の間で心が揺れていた。
一人は遥人(はると)。
落ち着きがあり、仕事にも誠実で、誰からも好かれる存在だった。葵の家族や友人も、遥人のことを絶賛していた。常識的で、礼儀正しくて、何より葵を大切にしてくれた。彼と一緒にいると、未来がちゃんと見える気がした。
もう一人は湊(みなと)。
少し破天荒で、突拍子もない発言をすることもあったが、どこか憎めない。直感的で、嘘がなく、喜怒哀楽をそのままぶつけてくるような人だった。彼と一緒にいると、自分が“生きている”と実感できた。けれど、その自由さはときに不安を呼んだ。
葵は何度も考えた。遥人のような人となら、穏やかで安定した日々が過ごせるだろう。
湊のような人となら、きっと退屈しない人生になるだろう。
家族も、友人も、遥人を推した。
「彼がいいと思うよ。間違いないって」
「湊くんはちょっと危なっかしいんじゃない?」
葵もそう思っていた。思っていたはずだった。
いや、正確に言えば、ふたりの男の間で心が揺れていた。
一人は遥人(はると)。
落ち着きがあり、仕事にも誠実で、誰からも好かれる存在だった。葵の家族や友人も、遥人のことを絶賛していた。常識的で、礼儀正しくて、何より葵を大切にしてくれた。彼と一緒にいると、未来がちゃんと見える気がした。
もう一人は湊(みなと)。
少し破天荒で、突拍子もない発言をすることもあったが、どこか憎めない。直感的で、嘘がなく、喜怒哀楽をそのままぶつけてくるような人だった。彼と一緒にいると、自分が“生きている”と実感できた。けれど、その自由さはときに不安を呼んだ。
葵は何度も考えた。遥人のような人となら、穏やかで安定した日々が過ごせるだろう。
湊のような人となら、きっと退屈しない人生になるだろう。
家族も、友人も、遥人を推した。
「彼がいいと思うよ。間違いないって」
「湊くんはちょっと危なっかしいんじゃない?」
葵もそう思っていた。思っていたはずだった。