番外編④『騎士団長、反省はするけどやめられない』
――セリア=マーゴット(伯爵令嬢)の一人称視点
「サイラス=ザイーク。貴方には今ここで――はっきりと“警告”を与えますわ」
私は両手を腰に当て、真正面から恋人を睨んでいた。
目の前の騎士団長は、まるで叱られる子供のように、私の話をじっと聞いている。
……もっとも、彼はただ黙って聞くだけで、まるで反省の色が見えないのが問題なのだけれど。
「私の髪の抜けた一本を『天然素材』などと言って瓶に保管するのはやめなさい。服のボタンを無くしたのを“奇跡”扱いするのも禁止。あと、ペンを噛んだ痕跡があるからといって“芸術的価値がある”とか言うのもやめなさい!」
「……すまない。言い訳はしない。反省している」
「本当に?」
「本当に」
彼の顔はとても真面目だった。
まるで重罪を問われた騎士のような厳粛な態度。
……ただ、その両手の後ろに隠している紙袋の存在が、私にはどうにも不安で仕方ない。
「その袋、何?」
「…………昼食用だ」
「嘘ですね? すぐに出してもらえますか?」
観念したように、彼はゆっくりと袋の中身を取り出す。
出てきたのは――
・私が試し書きしたメモ用紙
・髪飾りから落ちたビーズ(推定0.3秒で失われた)
・ティーカップに残っていたリップの跡付きナプキン(?!)
「…………サイラス」
「……反省して、いる……最中だった」
「それ、現在進行形じゃなくて、未遂って言うんですわよ!!」
私は頭を抱えた。
叱っても、集める。怒っても、嬉しそう。止めても、どうにか方法を捻り出す。
――この男、筋金入りの“セリアコレクター”だ。
「仕方ないわね……もう一度言いますけど、“人に見られたらまずいような保管”は絶対禁止ですわ」
「了解した。では“人に見られないよう”に徹底する」
「違う! そうじゃないの!」
私は再度、頭を抱えた。
けれど。
――その夜、彼の書斎でこんなものを見つけてしまった。
『セリア資料館【極秘】設計図』
・地下に専用スペースを作る
・温度・湿度管理は完璧に
・出入口に鍵(私の誕生日がパスコード)
「…………」
呆れるべきなのに、なぜか顔が熱くなる。
「馬鹿じゃないの……ほんとに……」
愛されていると実感できるのは、案外こういうところだったりする。
「……でも、隠しきれないほど集めたら、全部燃やしてやりますからね」
彼に聞かれないように呟いたその言葉に、どこかでサイラスがくしゃみをしていた。
――やっぱり、何もかもお見通しなのかもしれない。
終わり。




