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因果応報

 哀れなヘビは抵抗するように身を捩る。その様子がいっそ哀れで背筋にぞわぞわと不快感が走る。


 抵抗したって無駄なのに、と音惟は歪んだ笑みを浮かべた。


 もっと力を込めようと思ったその時彼女の呼吸がおかしくなった。


 息ができない。

 なぜか足が宙に浮いている。


 そうして音惟は何かに首を絞められているとようやく気がついた。ヘビと自分以外誰もいなかった筈なのに目の前には長髪の人が立っていた。いや人なのだろうか。白い肌といってもこの国の者とも音惟の肌とも違う艷やかな硝子のような質感だ。そして長い髪は銀色で真っ直ぐ垂れている。

 意識を失いそうになりながらも音惟は男の手を払おうとする、が男の手はしっかり彼女の首を掴んでいるのに彼女の手は霞を掴むように手応えがない。


「矮小な存在が我の大切な者を傷つけるとはな」


 凍りつきそうなほど冷たい声と眼差しで男は音惟を見るが彼女の目はもう何も見えていなかった。しかし彼女はヘビを踏んだことを全く後悔していなかった。いっそ清々しい気持ちだった。


(これでいい。気持ち悪い存在(わたし)は天罰を受けて消えるのだ。ようやく終われる)


 それにしても自分と同じ気持ち悪い存在(ヘビ)がこんな美しい人に大切にされるなんて少し羨ましいと彼女は思う。


(じゃ、最期に)


 音惟は消えそうな意識の中なんとか指に力を込める。彼女が気持ち悪がられるもう一つの理由、体の内に持つ怪しい力を指先に込め、そしてヘビがいたであろう地に放つ。これでヘビの傷は癒えるだろう。そういう力なのだ。


 力を放つと同時に首への力が消え、代わりに体全体に痛みが走った。地面に投げ飛ばされたのだ。強か腰を打ち痛みに耐える。ゲホゲホむせながら新鮮な空気を肺に取り込む。そうしてようやく目線を上げると男がこちらを見下ろしていた。


「おまえのせいで我の大切な存在が穢れてしまったではないか。もうそれはいらぬ。我は我の世に帰る」


 吐き捨てるようにそう告げ男は消えた。

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