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 小屋の中で惰眠を貪っていたミシロは腹が空くのを感じた。布団の中で手足をうんと伸ばす。


「音惟、腹減った」


 声をかけてみるが返事はない。いないのか、と呟いてようやく布団から出る。それから布団に手をかざし綺麗にし、ついでに音惟の布団にも同じことをした。そうしてようやく音惟が呼び出しがどうの言っていたなと思い出した。


 小屋を出ると陽は既に高くなっていた。ミシロは診療所に向かおうかと思ったがそれよりもすぐ異変に気がついた。臭い、臭いのだ、屋敷中に臭いが立ち込めている。それに血の匂いもする。


「おえっ」


 口と鼻を抑えミシロは屋敷を飛び出した。そのまま体から力が抜けズルズルと座り込む。


「なんなんだこの臭い」


 ミシロは昔神に言われたことを思い出していた。


「いいかい、嫌な臭いがするところには近づいてはいけないよ」

「なんで?」

「そこには穢を持つものがいるんだ。例えば魔物とかね」

「魔物?」

「そうだよ。弱きものを喰らいそれを糧に力をつける愚かな存在だ」

「いやだな」

「愚かで穢れた存在に近づくと純粋無垢な存在は穢を取り込んでしまうからね」


 だから決して近づいてはいけないよ、とそう神に言われたのだ。だからこのまま診療所に向かって何もなかったように一日を過ごせばいいと頭ではわかっていた。自ら穢れるようなことをする必要はないと。


「音惟」


 でもあの血の匂いは音惟のものだった。きっと人にはわからないだろう、でもミシロにはわかった。音惟の血が流れていると。

 だからミシロは意を決して再び木戸を開け屋敷に入ったのだった。

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