姉
この回は音惟が暴力によって痛めつけられる表現が多くあります。流血描写もあります。苦手な方はお避けください。
姉によって音惟が理不尽に暴力をふるわれます。
ぬくぬくとした布団に包まれ目覚めた朝。布団から出たくない、もっとくるまっていたいと音惟はもう一度目を閉じようとした。それからすぐ飛び起きた。すっかり忘れていたが今日は呼び出しの日なのだ。
まだスヤスヤ寝ているミシロの肩をそっと叩くとむにゃむにゃと寝ぼけ声が聞こえた。
「ミシロ、ミシロ、一度起きて」
「ん……飯……白飯……」
寝ぼけるミシロをなんとか起こす。仏頂面なミシロに音惟は告げる。
「これから朝餉だけど。もし戻らなかったら先にセンセのところへ行っていて。朝ご飯貰ってね」
「なんで?」
「姉様に呼ばれてるのよ」
「ふーん、わかった。おやすみ」
本当に分かっているのだろうか、ミシロは再び布団の中に吸い込まれていった。
「じゃあね」
返事がないが気にせず音惟は小屋を出た。気が進まないが行かなければ後が怖いのだ。
朝餉の時間は昨日と同じである。時折姉の結惟がチラチラと音惟に視線を送っていたが音惟は下を向いたまま食事を終えた。
このまま何もなかったように戻りたい。音惟がさりげなく席を立ち部屋を出ようとした時。
「もう音惟ったら、どこへいこうとしてるの?」
結惟が優しい笑みを浮かべて音惟を呼ぶ。もうそれだけで音惟の体は凍ったように止まり、それからふるふる震え始めた。
「可愛い子ねえ」
何も言い返せない音惟に近づき、後ろから抱きしめるように体を包む。母も妹もそんな二人を気にすることなく席を立って去っていった。
「さ、私の部屋にいらっしゃい」
「……はい」
音惟は小さな声で返すのが精一杯だった。