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ニオイ3

「じゃミシロ、私はサクジロウさんの手伝いをするから」

「手伝い?何をするんだ?」

「ここの雑用よ。働かせてもらってお小遣いを貰ってるの」


 とはいっても子どもの音惟に大したことはできない。棚から包帯を出したり、布を洗濯したりと簡単なことばかりだ。それでも将来あの家を出るためにコツコツお金を貯めている。それにお昼ごはんまで貰えるのだ。


 音惟も薄々勘づいているが、音惟の伯父に頼まれた作次郎は不憫な彼女を陰ながら支えているのだ。音惟の父は下の(まい)が生まれてからは屋敷に寄りつきもせず国中を廻り商いをしている。家族からも町の人からも疎んじられる音惟にとってこの診療所の作次郎と女中だけは町で唯一の味方なのだ。


「ここはいいな。臭くな……イテッ、なにすんだ」


 言い終える前にミシロは音惟に頬を引っ叩かれる。


「匂いがどうこう言うのは失礼よ」

「そうなのか。でもなあ、この町の中全体が臭いんだ。たまったもんじゃないよ」

「私にはわからないけど」

「でもここだけは臭くない。なんでだ?」

「うーん、診療所だから?」


 そんな問答をしていたら作次郎に呼ばれてしまった。


「音惟さん、患者さんが来るよ」

「はい、今行きます」

「僕も行く」


 果たしてミシロが役に立つかわからないが何もしないよりはいいだろう。この診療所ではお金が払えない人も野菜や手伝いやらで治療を受けられるのだ。だから遠くの村からやって来る人もいる。猫の手も借りたいのだ。ヘビの手も借りられるなら借りておこうと音惟は思う。


 包帯を取ったり患者さんから聞き取りをしたりしながら慌ただしく時間が過ぎていった。ようやく落ち着いたと思ったその時。


「先生こいつを頼む」

「いてぇ、いてぇよ」


 うめき声を上げながら運ばれてきたのは大男だった。足に巻かれた血に滲んだ布を取るとそはざっくりと何かで切られたような傷がある。痛々しいその傷に思わず音惟は顔を背けた。


「こいつはいかんすぐ止血しないと。音惟さん!清潔な布を沢山持ってきなさい」

「はい、取ってきます」


 音惟は大急ぎで備品庫に行く。


「ミシロ君、君は水を汲ん……ん?何をしてるんだね」


 作次郎がミシロを見ると、彼は屈み込み男の足に手をかざす。するとその傷がみるみるうちに塞がっていく。


「こいつはすげえ」


 付き添いで来た男が目を丸くしている。ミシロは自慢げな顔で今や傷一つない足を示した。


「朝ご飯の礼だ」

「こりゃ驚いた。医者いらずだな」

「いや力を使うと腹が減る」


 そこへ音惟がありったけの布を抱えて戻ってきた。


「センセ、布……あれ?怪我は」

「ミシロ君が治してくれたんだよ」

「あんた、やるじゃない」

「ふん、神の使……むぐ、なにを」


 慌てて音惟はミシロの口を押さえた。こんなところで神がどうの言われたら絶対に変な目で見られる。それにあの傷跡、荒くれ者かもしれない。ミシロの力に目をつけられ見世物にされてしまうかもしれない。

 それにしても音惟も似たような力を持つが治せるのは指についた切り傷位だ。あんな大きな傷を傷跡なしに治せるのはすごいと彼女は思った。

 男達は沢山のお金を置いていこうとしたが作次郎は断り少しだけ受け取った。

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