彼は裏切られ、そして目覚める
「俺たちならSランクになれる!」
ジュード・ヴァーミリオンには輝かしい未来が約束されていた。16歳で冒険者登録をして以来、次々と魔物を討伐し、数々の功績を残してきた。ジュードの名前は瞬く間に広がり、18歳でBランク冒険者に昇格すると、誰もが「次はAランク、いや、Sランクも夢ではない」と噂した。
だが、19歳の誕生日、その運命は残酷に裏切られた――魔族の襲撃が、彼のすべてを奪ったのだ。
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その日、ジュードたちはいつも通りの依頼をこなしていた。魔物を数匹討伐するだけの簡単な任務だった。エルが軽やかに魔法を放ち、ユーマが弓で援護する。ジュードはそれを守るかのように前に立ち、次々と魔物を撃破していった。
Bランクパーティ「運命の三銃士」、これが大剣士ジュード、魔法使いエル、弓使いユーマたち3人のパーティ名である。
レヴィオス冒険者ギルドに所属するパーティは、冒険の安全性を考慮し、5人以上で構成されることが義務づけられている。
しかし、幼少期から共に育った彼らの連携は見事なものであり、誰が見てもその息の合った動きには感嘆の声が上がるほどだ。
そのため、ジュードたち三人は特例として、ティターン支部のギルド長から特別に3人だけでパーティを組む許可を受けていた。
エルが考えた「運命の三銃士」という名前には、Sランクを目指すために、まずは三人だけでAランクに到達しようという意味が込められている。そんな彼らももうすぐ冒険者Aランク認定試験を控えている。
「もうすぐ依頼主の村に着くし、これでもう終わりかな?」
ユーマが振り返って笑顔を見せる。
「今回の依頼もジュードのおかげで楽勝だったね!早く帰ってジュードの誕生日祝わなきゃ!」
エルが達成感に満ち溢れた顔をしながら嬉しそうに言った。
「何言ってるんだよ、2人がいるから安心して前で戦えるんだろ!」
ジュードが2人の肩を叩こうと駆け寄ろうとする。
その瞬間、何かが彼の心をざわつかせた。普段の明るい雰囲気の中に、どこか不穏なものが潜んでいるように感じたのだ。
「ちょっと待て、みんな。」
ジュードが急に足を止める。何かが違う。彼の直感が警告を発していた。
「どうしたの、ジュード?」
エルが不思議そうに尋ねる。
「何か、村の方から気配を感じる。出発前とは違う……」
ジュードは少し怯えた声で返す。
ユーマも微妙に緊張した表情で同意する。
「確かに、空気が重くなっているような気がする。」
彼らは互いに顔を見合わせ、気持ちが通じ合った。
「早く村に急ごう!」
ジュードが声を上げ、3人は一斉に走り出した。村に近づくにつれ、空気は段々と重くなり、冷たい霧が漂っている。
「村のみんなはどこに行ったんだ……?」
ジュードが鋭く声を上げた次の瞬間、闇の中から姿を現したのは、圧倒的な力を持つ魔族だった。全身が黒い霧に包まれ、その眼光は鋭く赤く輝いていた。
「逃げろ!」ジュードは叫んだ。
しかし、動けなかった。エルとユーマが呆然と立ち尽くす中、魔族の爪が鋭く輝き、彼らに襲いかかろうとしていた。
「くそっ……!」
ジュードはその瞬間、反射的に二人を庇った。だが、その代償はあまりにも大きかった。魔族の爪が彼の体を貫き、冷たい呪いが全身に染み渡っていく。苦しみで顔が歪み、膝をついた。
「ジュード!」
エルの悲痛な叫びが耳に届いたが、彼はその場で倒れ込んだ。魔族の低い声が彼の耳元に響く。
「俺の呪いは誰にも祓うことはできない。……もう二度とお前の力が戻ることはないだろう。」
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それから3年。ジュードのかつての名声は影を潜め、今ではパーティの荷物持ちにすらなれれば良い方の落ちぶれた冒険者となっていた。
彼がその身に受けたのは「半減の呪い」であり、その名の通り、自分のステータスが本来の半分となる呪いである。エルの魔法や聖職者の祈りもその呪いを祓うことはできず、筋力の落ちたジュードは大剣を持ち上げることさえ不可能になった。
ジュードはそんな自分に嫌気が差し、エルとユーマの元を去っていた。
「……俺の人生、これで終わりかよ……」
ダンジョン内の薄暗い通路を、ジュードはふらつきながら進んでいた。後ろには現在のパーティメンバーがいて、彼に苛立ちを見せながらついてくる。
「おい、ジュード! また遅れてんじゃねぇか!」 リーダーのリガルドが声を荒げた。
「すまない……」
ジュードは謝罪したが、心の中では言い返したかった。だが、体が言うことを聞かない。かつては自分が先頭に立ち、みんなを守っていたというのに、今や誰も彼を頼りにはしない。
「呪い持ちが!」
リガルドは笑いながら、仲間と共にジュードを蔑んだ。
「お前なんか、荷物持ちすら役に立たねぇじゃねぇか!」
その言葉が突き刺さる。ジュードは唇を強く噛み締め、拳を震わせた。しかし、反論できるだけの力が自分にはなかった。
「こんなはずじゃなかった……」
そう思った瞬間、突然、足元の地面が崩れ落ちた。
「ッ゛――!」
反射的にジュードは崖の縁を掴んだ。なんとか落下を免れたが、指先から力が徐々に抜けていくのを感じた。
「誰か……助けてくれ!」
ジュードは必死に叫んだ。しかし、崩落を回避したリガルドたちはただ冷たく見下ろしていた。
「ハッハッハッ!!こりゃいいや!お前、役立たずなんだから落ちちまえよ。」
リガルドはジュードの荷物を剥ぎ取り、笑みを浮かべたままその場を離れた。
「やめてくれ……!」
ジュードは叫び続けたが、誰も振り返らなかった。希望が消え、絶望だけが胸に残った。
「……そんな、馬鹿な……」
その瞬間、掴んでいた崖がさらに崩れ、ジュードの体は宙に投げ出された。落下する中で、意識が遠のいていく。冷たい風が頬を撫で、次第に全てが暗くなっていった。
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どれほどの時間が経ったのか、ジュードは冷たい地面に倒れていた。全身が痛むが、何とか生き延びていた。体を起こし、目の前を見つめるが何も見えない。
「くそっ、なんでこんな目に会わなきゃいけねぇんだよ...」
ジュードは痛みと悔し涙を堪えながら、立ち上がり、出口を探すために歩き出した。
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数時間後、ジュードはすでに助かる希望を無くしており、なぜ歩き続けているのかもわからないほど、疲弊していた。
呪い、裏切り、暗闇、痛み、そして、孤独。彼の気力を奪うものは全部揃っていた。
「....もう無理だ...」
明かりのない静かな空間に掠れた声が響く。そして、無意識のまま倒れ込み、ジュードは壁に頭をぶつけ、気絶する。
ぶつけた壁から光が漏れ出ていることに気づかないまま.....
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どれくらい気を失っていたのだろうか。ジュードはようやく目を覚まし、目の前の光に気づく。最後の力を振り絞り、その光に包まれるために両手を血だらけにして壁を殴りつける。
やがて、壁は壊れ、彼の目の前に巨大な機械が眠っているような部屋が現れる。機械は古代の遺産のように見えたが、突如として動き出し、ジュードの体をスキャンし始めた。
『生体反応確認、〈装備スキル:引き継ぎ〉付与のためのプロトコルを実行します。』
声が頭の中に響き渡り、機械から放たれた光が彼の体を包み込んだ。
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2日後、俺は他の冒険者に発見された。どうやらギルドはリガルドたちからダンジョン崩落の報告を受けて、二次災害を防ぐためにダンジョンを閉鎖する措置を取ったようだ。その調査のために派遣された冒険者が、俺を見つけ出したらしい。
その日のうちに、俺は意識を取り戻した。周囲の眩しい光に思わず目を細めながら、俺は病室のベッドに横たわっていることを理解した。
「ひゃっ!ジュードさん!起きたんですね!!大丈夫ですか!?」
近くにいた女性が話しかけてきた。
「セリアさん、、俺どれぐらい寝てたんですか?」
彼女はギルドの受付嬢であり、俺がルーキー時代からお世話になっているうちの一人だ。
「えーと、ジュードくんがギルドを出発してから3日目だから、発見されてから2日間も寝てたのよ。もう心配させないでよね。今、ギルド長呼んでくるから!!」
セリアさんが嬉しそうに病室を出る。
どうやらここはギルド内の病室らしい。ギルド長か、、。正直あの人のこと苦手なんだよなー。
まあ、リガルドを訴えるにはあの人に話すのが一番だからな。リガルドの野郎、俺のこと見捨てやがって、くそがっ!!今度会ったらタダじゃおかねぇ!
あれ、そういえば、なんで俺2日間も寝てたのにこんな頭冴えてんだ。体も痛くねぇし。まさか、知力とHPが増えてたりして。
俺は何気なくステータスを確認する。
『スキル:引き継ぎにより、2日分のステータスの引き継ぎを実行しました。ご確認ください。』
なんだこのウィンドウ、邪魔だな。俺は見知らぬウィンドウを払いのける。
その瞬間、信じられない光景が俺の目に飛び込んできた。
「え?……俺のステータス、どうなってんだ……」
ステータスの全ての能力値が全盛期以上になっていたのだ。
ステータスの細かい数字などは後ほど追加させていただきますのでお待ちください。
スキルを手に入れた後、客観から主観に視点を変えてみましたが、どうでしょうか。
Xランクの設定忘れていませんのでこのままで大丈夫です。