迫り来る合戦
・・・真田屋敷
「のう、吉継殿よ…近頃の支度は済ませておるのか?
」
一人の男が縁側でお茶を飲み、吉継は室内で正座をしている。
「はい、昌幸殿も済ませておられますか?」
吉継は返答をし、昌幸にも言った。
「うむ、ある程度はできておる。それに、家康が攻めようとも此方の兵が圧倒的に有利じゃ。そして何より、左近殿も参戦する。じゃから、ひとまずは安心じゃ。」
昌幸はお茶に口をつけ、お盆へと置いた。
「次の天下は、三成殿に明け渡しますか?昌幸殿の意見が聞きたいのだが・・・」
「わしは三成殿は秀吉様の後継者には相応しいと思う。三成殿はわしらよりは若いが、幾つもの功績がある
・・・それに秀吉様は三成殿をとても気に入っておられる。吉継殿はどうなんじゃ?」
「わしも、三成殿に相応しいと思います。あれは我らが秀吉の家臣でも一枚上手であり、この世を変える力を秘めている。」
二人は石田三成の影響力を高く評価している。すると昌幸は湯呑み茶碗に手をつける。
「そうじゃ、お主の久しい光天とは話をしてやったか?」
昌幸は光天の話題へと変更した。
「ええ、光天とは五年間も会ったなかったのでとても嬉しく思います。」
吉継は嬉しそうな表情で返答する。
「カッカッカ!そりゃ、良かったわい。」
昌幸は笑いながら、お茶を飲む。
「じゃがのー、吉継殿よ。」
「はい」
昌幸は再び湯呑み茶碗を、お盆へと置いた。
「わしは、光天がこの乱世を終わらせるかもしれないと日々思うんじゃ…」
「え?・・・光天が?」
吉継は浮かない顔で困惑が包み込んだ。
「わしは幾つもの戦に出ている。時々、敵軍の中を突撃して、敵を蹴散らしておる。それに、わしは一眼見るだけで敵の強さがわかるんじゃよ。」
昌幸は顔から汗が滲み出る。
「じゃが、光天を一眼見ると・・・武神が宿っている様に見えるんじゃよ。」
「武神が…ですか…?」
吉継は間抜け面をしている。自分の孫娘に武神が宿っていることに戸惑っている様だ。
「何のご冗談ですか昌幸殿…」
「真じゃよ。吉継よ。」
彼の目には、偽りの無い黒い瞳孔が吉継を見つめている。
「わしはあの夜を、今でも鮮明に覚えておる。」
すると昌幸は語り出した。
・・・2年前
「ふぅ…最近になってから尿意が、感じやすくなったわい。」
昌幸は縁側を歩いている。時間は深夜3時くらいで、人気がなくあるとしたら城の周辺の家来しか居ない。・・・はずだった。
「何か聞こえてくるぞ。」
『カンカン!』と何かを叩く音が聞こえてくる。距離は余り遠くない所でなっている。
「せっかくの夜が台無しじゃよ。全く見つけ出して、怒りに行くか。」
そうして昌幸は音が鳴る方へと向かって行った。
「どうやらこの近くの様じゃな。確かここら辺は森林に近い。誰かが木でも切っておるのか?」
段々と音が大きくなってくる。昌幸は岩の影へと隠れた。
「さて、一体何の音か見ようではないか。」
昌幸はそろそろと岩陰から顔を出した。すると昌幸は、仰天する程の光景を見た。一本の木に木刀が当たる音が鳴り響き、そこにいたのは実の孫娘である光天であった。
(あの音の正体は光天なのか!?それにしても何じゃ、あの技は!?)
光天は桜の花びらが落ちた時の様な舞で木を叩いている。
「は!どりゃ!」
光天は汗水を掻き、手には血が流れている。
「はぁ…はぁ…まだだ、この程度では戦には勝てない…」
(戦じゃと!?今、光天が戦に出るじゃと!?)
昌幸はその言葉に、仰天している。
「あと少し練習したら眠りにつくとしよう。」
そうして、光天は再び木刀を振った。
・・・・
「それは真なのか!?」
吉継は目を大きく開けて驚いている。
「真じゃよ…わしも正直あの光景が嘘かの様な感じだったわい。」
「まさか…光天が…」
吉継は深刻そうな顔で下を向いた。
「じゃが、光天には武神に力を与えられた存在。わしは光天が、この乱世を終わらせる可能性があると思うんじゃ。」
昌幸は吉継の方へと向き、真剣そうな眼差しで言う。
「光天は女だぞ。いくらなんでも、戦には出させんぞ。」
吉継は自身の孫娘に戦を行かせることに拒否している。
「吉継殿…気持ちはわかる。お主がどれだけ、光天の事を大切にしていることはわかっておる。じゃが、光天は自力で戦に参戦するじゃろう。そうじゃ、吉継殿よ。」
「何ですか?」
すると昌幸は何かを企んでそうな顔で、吉継にとある案を出した。
「お主、光天と手合わせすると良い。」
「何ですと!?」
吉継はその案に、驚いている。
「昌幸殿!わしは光天を傷つけとうないぞ!」
吉継は怒りを露わにしている。
「断るなら、光天を戦に連れて行くぞ?」
「昌幸…」
「勝てば光天を戦には行かせなぬ・・・どうじゃ?いい話じゃろう?」
これは明らかなら挑発である。吉継は今にでも昌幸をぶん殴りたい程の気持ちにまで達している。
「はぁ…わかった…その案、この吉継が飲むとしよう。」
吉継は諦めたかの様な顔で、案を飲んだ。
「カッカッカ・・・では早速、光天を呼ぶとしよう!そこにいるんじゃろ?光天よ!」
昌幸は吉継の背後にある襖に目を当てて、光天を呼んだ。すると、その襖がゆっくりと開き、そこにいたのは光天であった。
「流石です。まさか、バレていたとは。」
「カッカッカ!わしから隠れるなど10年早いわい!」
昌幸は満足そうな顔で笑っている。
「光天よ。」
「はい、吉継殿…」
吉継の目から、微かに炎が見える。
「庭に出るぞ…手合わせだ。お主がどれだけ強いか、わしが試してやろう。」
「はい!」
すると吉継は昌幸の草履を履き、庭に出た。
「負けたら大人しくして貰うぞ…」
「ええ、ならこの手合わせに勝ち…戦へと参戦致します。」
すると吉継は、腰に付けている刀を鞘から抜いた。
「真剣ですか。」
「ああ、実際の戦は殺し合い・・・木刀などでは人は死なぬ。なら真剣でお主の強さを測ろうぞ。」
吉継は刀を構えて戦闘体制に入っている。
「しかし、俺には刀が・・・「光天よ、受け取れ。」
すると急に昌幸は、光天に刀を投げた。光天は右手でキャッチした。
「刀…」
「戦に出たいんじゃろ?なら、この手合わせでお主の強さを証明してみろ!」
昌幸はいつもよりか真剣そうな顔で光天を鼓舞する。
「はい!」
「さぁ…来い。この吉継を討ち取ってみるがいい!」
-光天 対 大谷吉継-
「では、参ります!」
光天は足で地面を蹴り飛ばした。
(最初の踏み込みが速い…じゃが、わしも乱世を生きた者・・・光天よ、わしを超えて見せろ!)
光天は鋭い横薙ぎを出した・・・が、吉継はそれを防ぐ。すると吉継は光天の腹部を目指して蹴りを入れるが、光天はバク転で回避した。
(確かに光天には武神が宿っている…じゃが、飛んだ状態だと避ける事などできるまい。)
吉継は連続して、飛んでいる光天に刀を振った。・・・だが、光天は体を捻り横薙ぎで吉継の振りを防いだと同時に吹っ飛ばした。そのまま壁にぶつかり、布の口当たりに血が滲んできた。
(何が起こった…?)
吉継は何が起こったのかが分からず、困惑しているその隙に光天は爆速で吉継に詰め寄る。
(今は考えるな…わしは、大谷吉継ぞ。数々の戦を乗り越えてきた大名ぞ!)
吉継は刀を構え、詰め寄る光天の斬撃を防いだ。
「わしは…大谷吉継ぞ!!」
喝を入れると同時に光天を押し返した。
やべーな…流石、数々の戦を勝ってきた武将なだけある。小助とは比べ物にならない。
吉継の姿を見て、光天は感心する。
「さぁ…光天よ…わしを乗り越えて見せろ!」
「ええ、俺も全力で貴方を乗り越えて見せます!」
両者とも刀を構えた。その辺りの空間から気迫が感じられる。
「うおおぉーー!!」
最初に出たのが吉継だった・・・並外れたスピードで光天に近づき、刀を振った。それに対して光天も振る。刀と刀がぶつかり合い、火花が散っている。
速い…だが対応できる。
あたり一面火花が散っており、吉継は刀を止めなかった。
(わしは何としても、光天を戦には行かせぬぞぉー!)
すると吉継の斬撃が激しくなってきた。
段々と速くなっている。もうそろそろ、解放してもいい頃合いだろう。
「どうした!光天!防いでいるだけでは、わしは倒せんぞ!!」
「わかってますよ吉継殿…ここから先は、怪我で済まないと思います!」
すると光天は、刀を全握力で握った。すると光天の髪の毛先が段々と赤色へと変色していく。
この姿は、俺のもう一つの力・・・一年前の特訓で身につけた姿だ。
(髪が赤色へと変化しているだと…?)
吉継はその姿を見て、驚いていると同時に違和感を感じた。
(なに!?)
吉継が感じ取った違和感は、段々と押されている事だった。それはつまり、光天は速さと力で吉継を遥かに上回ったと言う意味だ。
(まずい…このままだとッ)
「吉継殿!どりゃぁぁーーー!!」
大声を上げると、吉継の持っている刀を弾き飛ばした。その出来事で、世界がスローモーションになる。見ている昌幸は驚き、吉継は目を瞑り、光天は放心状態になる。弾いた刀が落ちたと同時に世界は、いつもの速さになった。周りは静寂へと包み込み、一人の声が聞こえる。
「そこまでじゃ…」と昌幸は、手合わせを終了させた。
-勝者- 光天
すると、光天の顔が段々と笑みを浮かべ・・・
「やったぁーー!!」
片手を握り、上へと突き立てたが・・・『グギ!』と肩から痛みが滲み出た。
「ぎゃぁぁーーーーーー!!!!!」
屋敷全体に光天の叫び声が聞こえる。
・・・
「いてて・・・ちょっと優しく巻いてくれないか…?」
光天は侍女に包帯を巻かせてもらっている。
「カッカッカ!実に天晴れじゃよ光天!無傷で勝利かと思ったが、まさか勝利した後に脱臼するとは笑い話じゃよ!」
昌幸は大爆笑していると同時に、吉継は口から魂が抜けている状態だ。
「爺殿…余り言わないでください…恥ずかしくて今にでも死にそうですぞ。」
光天の顔は恥ずかしさの余り、真っ赤になっている。
「さて話を変えるが・・・光天よ、お主は吉継殿と手合わせで見事勝利を掴み取った。よってお主には戦に出ることをきょk「ちょっと待ってください!」
「え?」
突然のことで、昌幸の顔が困惑している。
「俺はまだ、父上と手合わせをしておりませぬ。俺は父上である信繁と手合わせに勝ち、戦に出たいんです!」
と光天は父である信繁との約束を果たして戦に出る事を昌幸に言った。
「・・・そうか。なr「いいじゃろう。」「え?」すると部屋の奥から声が聞こえた。すると奥の部屋の襖が開き、そこにいたのは信繁であった。
「父上!」
「いい心構えだ。それでこそ真田の血を引く者だ。」
信繁は顔に笑みを浮かべて、光天を褒めた。
「だが、とある事情ができた。」
信繁の顔から段々と笑顔が無くなってきた。
「とある事情…?」
周りは困惑の雰囲気を漂わせる。
「東の徳川家康が三日後に攻めてくる。」
その一言で周りの雰囲気が変わる。今まで賑やかだった空間が一気に絶望へと落ちている。
「と、徳川が…攻めてくるじゃと…」
昌幸は驚きの表情を露わにする。
「ええ、家康は秀吉様の死後で益々と力を着けている様です。それに加えて、徳川には『和風月神将』と言う家臣がいる事が判明されておる。」
和風月神将…?聞いたことのない単語だ。神将で言うと十六神将が一般的だが・・・和風月神将とは一体なんなんだよ〜?
光天は初めて聞く単語に錯乱している。
「なので、二日後に佐和山城に行き作戦を立てる事にした。」
信繁の顔がいつもより頼もしい姿をしている。
「それに光天よ。」
「はい!」
すると信繁はあり得ない事を言う。
「お前も同行する事を許可する。」
その言葉で周りの人達の体が固まった。もちろん、光天も頭の理解が追いついていない状態だ。
「え?父上何を…?」
信繁の口角が上へて上がり嬉しそうな顔で答える。
「光天よ。お前には戦に出てもらう権利を与えると言う事だ!」
「「「・・・」」」
「「「ええぇぇぇーーー!!!!」」」
三人とも驚きの余り発狂した。その日の光天は一眠りもできなかった様だ。
・・・
-浜松城-徳川陣営
真夜中に二人の人物が歩いている。
「ねぇねぇ、もし家康様が天下を取ったらどうなるのかな?」
一人の男が陽気そうな話し方で質問する。
「そんなもん・・・江戸幕府ができるぐらいしか知らんぞ。」
もう片方の男は適当に質問の答えを出した。
「だけど現に僕たちは、和風月神将でしょ?なら戦が終わった後は、僕たちも政権に参加してもいいのかな?」
すると片方の男はその場で立ち止まった。
「なぁ・・・お前さんが政権に参加したらおっかない事は俺だって重々承知だぞ。」
そして陽気な男はゆっくりとにやけつき・・・
「ははは!やっぱり君も此方側の人間だからわかるんだよね?」
自分と同類だと言うと・・・
「はぁ…お前さんと一緒にしないでくれ、俺は好きで人を殺しているわけじゃないんだよ。」
その男は呆れた顔で否定した。
「だけどさぁ、僕たちに勝てる人なんて実際にいないでしょ?」
陽気な男はゆっくりと追い越して、男の前で言う。
「ふっ、確かにそうだな。行くぞ。」
男はニヤリと笑い、陽気な男を追い越した。
「ちょっと待ってよー。」
陽気な男は後を追った。
・・・
-浜松城天守閣-
「ふははは!実に楽しみじゃ!」
家康は畳に座り酒を嗜んでいる。家康の正面には一人の男が座っている。
「家康殿は戦が楽しみで仕方がない様ですね。」
男は落ち着いた声で家康に言う
「そりゃ、楽しみだわい!何せ、わしが天下を統一する事ができるんじゃよ。わしには、和風月神将がいる限り秀吉派が勝てるわけがあるまい。」
家康は顔を真っ赤にして酔っ払っている様だ。
「ええ、私達がいる限り貴方様の野望は叶える事ができるでしょう。」
「楽しみにしておるぞ"東 清晴"殿…クックック…はーははははは!!!」
浜松城には家康の笑い声が響き渡る。
・・・二日後
俺たちは佐和山城に馬に乗って向かっている。
「もうすぐで佐和山城だ。三成殿には失礼ない様にするんじゃぞ。」
信繁は、光天に向けてそう言う。
「はい」
馬を走らせたら佐和山城に着いた。俺は父上と爺殿の後を着いて行き門まで着いた。すると門の横の家来が近づいてきて。
「真田一同お待ちしておりました!どうぞお入りくださいませ。」
と俺たちは城内へと入った。
・・・
佐和山城の天守閣の畳の間に着いた。
「待っておったぞ昌幸殿!」
そこにいたのは遠くからでもわかるその威厳"石田三成"だ。
「ご無沙汰致します。三成殿!」
昌幸はお辞儀をした。
「今回は長い時が過ごせる様じゃのう。ほれそこに座るが良い。全員が集まるまで時間がある。」
すると俺たちは座布団がある方へと座った。
「それにしても昌幸殿、こんな大変な時に女を連れてくるとはどう言う事なのじゃ?」
三成はにやけついた顔で光天を見ている。
「この者は我が孫娘である光天姫であります!」
「はい!俺の名は光天でございます!真田家の次期後継になっている者です!」
俺は気迫がこもった声で三成に挨拶をする。
「ほーう…こんな美女がわしら男どもの作戦に加担する事なんぞ聞いた事ないぞ。それに加えて、真田家の後継が女など今後が心配で仕方ないぞ。」
俺からしてもわかる。あいつの顔一回でもぶん殴りたいんやけど…
三成のムカつく様なすまし顔に光天はイライラしている。
「そして女のくせに男物の服を着ているなんて猛々しくて笑えてくるわい!がっはっは!」
容赦なく光天の服装を嘲笑っている。それに対して光天は怒りが絶頂にまで達している。
「シネシネシネシネシネシネシネシネ…」
光天は口に髪を咥えて、三成に恨みをボソボソと言う。
(やばい…このままでは我々の仲に亀裂が入ってしまう…)
昌幸はこの状況に察して、なんとかしようと焦って考えている。
「あのー「三成殿!」「え?」
昌幸の声はまたしても、信繁の声に遮られた。
「失礼ながら三成殿、この光天は実力で言うと一騎当千でありますぞ。それに徳川の家臣である和風月神将に匹敵する可能性がございますぞ。」
信繁は自分の娘の強さを三成に誇らしげに言った。
「それは誠なのか?信繁殿。」
「この信繁、断じて偽りを言っておりませぬぞ。」
彼の目には偽りがない黒い瞳が写っている。
「わかった。なら訂正しよう。光天殿、我々の力になってもらい大変嬉しく思うぞ。」
三成は信繁の圧倒した気迫に押され、光天のことを認めてあげた。
・・・1時間後
全家臣が揃い作戦会議が開かれた。
「皆のもの今宵集まってもらい大変嬉しく思うぞ。我々一同は秀吉様の跡を継ぎ、来世の為にも良い未来を築こうではないか。」
この会議は三成が仕切っている。
「ではこの天下分け目の戦に勝つ為にも作戦を考えようではないか。まずは和風月神将についてだ。この件は吉継殿に頼もうではないか。」
そうして皆が吉継に注目する。
「は!まずはこのわしが和風月神将について説明致す。和風月神将は一人一人が人ならざる者であり、その強さから一人で一つの国を滅ぼせるとも言われておりますぞ。」
一人で国一つ滅びるとかどんだけの強さなんだよ…
光天はその事を聞いて驚いている。
「そして和風月神将は十二人で構成されており、実力順に序列が出来ております。まずは睦月からじゃ。
睦月である"阿部安秀"は和風月神将の最弱でもあるが実力は確かな者であり、知的な大名ですぞ。」
阿部安秀…聞いたことのない名前だ。
「如月の"豹堂虎昌"はあり得ない程の怪力の持ち主で岩をも砕く腕力、敵を立った一撃で二十人を吹き飛ばす程じゃ。」
一撃で二十人吹っ飛ばす武将なんて聞いたことないぞ!そんなもん!
「弥生の"笠松鷹妖"は軍師で、笠松陣列は難攻不落で奴の軍を見かけたら最期、全滅すると思いますぞ。しかし、笠松鷹妖は姿を現してあらぬ。」
笠松陣列…なんか聞いた感じ、やばそうな策士だ。しかしなんだ?しかし、姿を見せないか…つまり何処か遠い所にある事だよな?しかしなんだ?俺の知らない武将が出てくるぞ?取り敢えず、全部聞いたほうが良いな。
「卯月の"濵田且頼"は正に韋駄天、あの者の足に追いつける人などおらぬ。いるとしたら和風月神将の上位層の者たちじゃろう。話によると其奴に斬られた事がわからないぐらい速いとのことじゃ。」
どんだけ速いだよ…
「皐月の"世良雅信"は殺しを生き甲斐にしており、その残虐さが有名でしょう。殺しに対して快楽を持ち合わしており、特に女を大量に殺し慰め物にしておる。正に屑という漢字が合う奴じゃ。」
女を殺すじゃと?絶対にこいつだけは苦しませて殺す…
光天は世良の事を聞いて殺意が湧いてきた。
「水無月の"天音"はくノ一であり、忍耐と速さで大名の命を掻っ攫った。もしかすると服部殿よりか優れているかもしれない。」
くノ一だと!?それは楽しみだ!
くノ一だと聞いた光天は興奮した。
「文月の"桑田洞泉"は誰もが知る殺戮者だ。そいつが持つ七支刀は正に神の如し、数千の敵軍をたった一振りで薙ぎ払う。一騎討ちで戦うのは自殺行為じゃろう。」
聞いた感じタイマンでは勝てそうではないな。だが、それは俺以外の話・・・俺がタイマンするとどうなるんだ?
「葉月の"井伊直政"は井伊の赤鬼と呼ばれており、その圧倒的な力と知恵を持ち合わしており、それすなわち鬼に匹敵すると言われておられる。」
流石、井伊の赤鬼・・・名声はやっぱり高かったか。
「長月からは上位層で不透明な情報となられる。
長月である"雷轟崇之"は噂によると妖の様な力を持っておる。それに其奴が戦っていた場所は不自然に焼け野原になっておったわい。」
妖の様な力?それに焼け野原になっていた?
「神無月の"堂田酒呑"は情報が不透明じゃから説明ができない…」
情報が不透明…?それに神無月は序列で言うと第3位ってことだよな。
「霜月の"本多忠勝"は正にこの時代最強に等しいじゃろう。戦では怪我なしで帰還し、全ての戦を突破した者じゃ。」
本多忠勝…やはりこいつは壁だ。だけど本多忠勝でさえ2位だと…ならば1位は誰だ?
「最後の師走の名は"東清晴"其奴は化け物じゃ。10年前の惨劇である蝦夷惨殺は清晴一人で蝦夷を壊滅させた。それに加え、榊原康政の軍隊が一夜にして全滅した噂がある。それをやったのが、東清晴じゃよ。それに奴の力は未知数…もしかしたらこの戦で、奴の強さがわかるじゃろう…」
東 清晴・・・あの榊原康政を壊滅させただと…?どうやら徳川にはとんでもない奴らがたくさんいる事がわかった。
「以上が和風月神将の家臣達じゃ。どうか怯えず懸命に戦に臨んで欲しい…この大谷吉継、必ずしも其方達に勝利をもたらす様この命・・・燃え尽きるまで使うとしよう!」
「「「「「「は!」」」」」」
全員が吉継の喝で反応している。
どうやら皆は、戦いそうじゃのう。これはこれで楽しみじゃ。
そうして会議はその後も続き、昼には佐和山城を出た。
俺と爺様と父上は馬に乗ってゆっくりと上田城に戻っている。
それにしても父上は、あの三成殿に挑発された時、父上は俺のことを庇ってくれた。やっぱり父上って、人柄も凄かったんだな。
父の背中は、いつもより輝いて見えた。
「父上!」
「なんじゃ、光天?」
「俺は、必ず父上に恩を返せるよう。明日の戦では、勝って見せます!」
信繁はにっこりとした顔になり、
「そうか・・・流石はわしの娘じゃよ。」
そうして上田城に着いたのが、夜になったくらいだ。俺は寝室で寝ていた。
いよいよ明日が天下分け目の大合戦…勝てば生、負ければ死…だけど、俺は必ず家康の首を取り勝利をこの手で掴み取る。
そうして光天は深い眠りへと着いた。