光天姫
第2話はちょっと長いですけど、楽しんで読んでくださいまし。
あれから10年が経った俺は庭で素振りの練習している。
ちなみに何だが光天の読みは「こあま」って言うらしい。
「997…998…999…1000」
光天は懸命に木刀を振る。それも父親である信繁が見ている中。
光天姫はしっかりと成長しており、母の遺伝である綺麗な紺色の髪にお姫様カットで小柄であり、服装は黒い裁着袴を履いており、白のサラシを巻いて素振りをしている。
「光天、素振りを初めて一日で基本全てが身についてある。流石、我が娘だ。」
慢心そうに光天を見ている。俺はその言葉にちょっとイラッとしたので、
「父上!是非とも俺と手合わせ願いますか!」
「ほう、わしに手合わせを願うとは…じゃが、お主は女じゃ。到底わしには勝てんぞ。」
信繁はイカつい顔で男女の差を指摘した。
「父上、それをどうか…頼みます…父上…」
俺は女性特有のキラキラな目と上目遣いをした。
「んー・・・せめて三日後には手合わせをしてやろう。」
「やったー!」
信繁は自身の娘の可愛さに押し負けてしまいました。
「父上!」
「何じゃ?」
「城を下りてもいいでしょうか?」
突如の外出願いに信繁は、
「はぁ…良かろう。その代わり護衛と行くように。」
「はい!」
「それと下りるときは、きちんと上を着る事だ。」
「わかりました父上!」
そうして光天は駆け足で父の元から離れた。それを見ていた信繁は笑みを浮かべ・・・
「全く、流石わしの娘じゃよ。まさか、一日で基礎を上達しおるとはわしでさえ時間が十五日くらいは掛かっておる。それを一日で…誠に悔しい…」
信繁は光天の才能に悔し涙を流した。
・・・東虎口櫓門近く
真田の家紋が付いた着物を着ている。
「待ってください!姫様ぁ!!」
光天は走って護衛を引き離そうとしている。
「ええい、しつこいぞ!小助!」
こいつは俺の護衛の穴山小助だ。一応、戦での戦績は良好で対人戦は無敵とも言われている。
「姫様!お待ちくださいませ!」
あんなやつと隣を歩きたくないわい、熱苦しくて仕方ないぞ。
「うおーーー!!姫様ーー!!」
いつの間にか俺と小助の追いかけっこが乱戦した。
・・・2時間後
「ぜー…ぜー…ぜー…姫様…ぜー…ぜー…護衛を担当…します…ぜー…ので…どうか…逃げないでくだ…ん!」
小助は溝の所に顔を突っ込み、思いっきり吐いた。
「あー、なんかすまない事をしてしまったようだな。」
一方の光天は疲れさえも見えていなかった。
「はぁ…この小助がお守り致す!・・・ん!」
そして再度小助は、溝の中に顔を突っ込む。
あとでこいつには、団子を奢らせておくか… 本当に申し訳なかった小助殿…
光天は心配そうな顔で自身が行った罪を悔い改めた。
・・・城下町
「ふぅ…こんな雲一つない青空でお茶を嗜むのは、実に雅じゃ…」
光天は優雅にお茶を濁している。一方の小助は、
「本当にそうですなぁ…モグモグ…姫様…モグモグ…」
両手に三色団子を持って食べながら喋っている。
「小助殿…喋る時は口に残っている食べ物を飲み込んでから喋ろよ。せっかくの雰囲気が台無しだ。」
「すんません。姫様…」
「さて、お茶を飲み干したらとある場所に行くとしよう。」
すると小助は呆れ顔になり、手を顔に当てた。
「またあそこですか…姫様、何度も言いますけどまだ子どもではないですか。それにこの事がバレたら信繁様に何されるかわかりませんよ。」
「へーきへーき!父上にバレさえしなかったら問題無し!」
・・・
「じゃ、ここで待っていておくれ。」
「は、わかりました…」
腹ごしらえした光天はいつもの場所に、小助を置いていきとある場所に行った。その場所は路地裏にある人気のない所だった。
「おーい!聞こえてあるかー!俺だよ俺ー!光天姫じゃよー!」
光天は大声を出し誰かを呼んだ。
「光天様!!開いてますよ!」
すると井戸の中から声が聞こえる。
「何じゃ、開いてるんだ。さてご入場するかのう。」
すると光天は井戸の蓋を開けて、中へと入って行った。
水が跳ねた。着地した光天は井戸の壁をよく見て凹みがあり、それを触れて押した。すると井戸の壁が突然開き、そこに現れたのは通路だった。
「お邪魔しまーす!」
光天は慣れた感じで入り、通路を歩いて行く。歩いていくうちに襖に到着する。そして襖の取っ手に手を入れゆっくりと開けた。そこに映っている光景は、
「いらっしゃーい、光天様ー!!」
狭く暗い部屋の中に一つの蝋燭が灯っている。そこにいるのは一人の少女だった。
「こんにちは、一芽殿。」
彼女の名前は一芽。俺のビジネスパートナーの一人だ。こいつは主に武具の販売…つまり、刀などを裏ルートで売っている俺の悪友でもあり、相当な美少女だ。
「最近はどうだ?」
と俺は一芽へと問いかける。
「良好だよ。最近だと刀狩にあった客さんが再び刀を握れて大興奮してたよ。」
「それはいい事だ。」
「さて、今回は何の用だ?」
すると光天はニヤリと笑い・・・
「鉄砲は売ってあるか?」
すると一芽は暗い表情で笑い出した。
「くくく、光天様は運が良い。丁度、仕入れていた所だよ。」
「そうか!ならどのくらい要る?」
「そうだな…いつも世話になってるから特別割引で大判10つで取引しても良いぞ。」
「何とも太っ腹やな。一芽殿は!」
光天は満面の笑みで金袋を取り出し大判を10つ差し出した。
「毎度あり!」
そうして一芽は棚の中から縦長い木箱を取り出し、光天へと渡した。
「これが鉄砲だ。大切に使うんだぞ。」
すると早速、光天は木箱の中を拝見する。
「うひゃーー!!これが鉄砲!何とまぁ、立派な物だ!」
手に取り出して隅々まで見つめている。
「その鉄砲は少しばかり、改造してある。」
「改造ですか?」
光天の頭の上には?が浮かんでくる。
「ほれ、箱の中身を見ろ。」
「箱の…中?」
すると箱の中身を確認すると、とある物があった。それは、小さい刀だ。
「ま、まさか…!!」
「鉄砲にそれを付けて見ろ。」
箱の中の小さい刀を取り出し、台の下に取り付けた。
「天をも貫き人をも断つ、これぞまさしく鉄砲刀なり。」
一芽はドヤ顔をする。そして光天は目を輝かしている。
「うひゃー!!銃剣だぁ!!」
あまりのかっこよさに興奮している。
「のぉのぉ、一芽殿これ俺も改造しても良いのか!?」
その質問にドヤ顔していた一芽の顔が一瞬にして困惑した表情をした。
「え?改造するの。」
「そうじゃ。」
潔い返事をするが一芽の表情は固まったままだ。
「ちなみにどういう…感じに?」
顔を引き攣ったまま光天に問いかける。
「そうだね…鉄砲の弾詰めが面倒だから、その面倒を無くすようにする。」
「え?」
「次に、鉄砲の威力を上げる。威力を上げつつ鉄砲を軽くしようと思う。
「は??」
段々と一芽の表情がバカになっていく。
「楽しみだぁ…早速屋敷に持ち帰ったら研究するぞぉ!あははははは!!」
光天の鉄砲による改造発想が止まらなくなり、笑い出した。
「光天様…本当に普通のお姫様なのかしら…」
その光天を見て一芽はドン引きしている。
「それじゃ、ありがとな一芽殿!」
そう言って鉄砲を木箱にしまい、木箱に布を巻いて風呂敷に包み背中に背負った。
「はぁ…何考えているかはわからないけど、またのお越しをお待ちしておくぞ。光天姫様。」
もう一芽は光天が何を考えている事を考えるのをやめて、光天に手を振った。
「おう、また何かあったら来てやる。」
そう言って光天は去って行った。
・・・
空はオレンジ色になっていてもう少しで陽が落ちそうだ。小助は長らく立ったまま、光天を待っている。すると路地裏から光天が出てくる。
「小助殿!待たせてしまいすまない。」
「ええ、この小助、姫様が戻ってくるまで待ち続けましたぞ。それにしても姫様・・・後ろの風呂敷は何ですぞ?」
小助は背中の風呂敷に指を指した。
「ああ、これは手土産じゃ。屋敷に戻ったら食べる予定じゃ。」
光天は風呂敷の中に鉄砲がある事を、小助に誤魔化した。
「さて、そろそろ戻るとしよう。夜に帰ってしまったら、父上に怒られてしまう。」
「は!帰る時もお供しますぞ!姫様!」
「そんな大声じゃなくても聞こえておるぞ。あまり民達に迷惑をかけるではないぞ…」
熱苦しい小助を見て少々呆れている光天姫であった。
・・・・・・真田の屋敷
「父上、只今戻りました。」
俺は襖を開けると目の前には父上と母上がいる。
「おかえりなさい。光天」
と母上が太陽と同等な温かい顔で迎えた。
「光天…早速で悪いが座って貰えるか?話がある。」
と父上が光天に座るよう指示する。
「はい。」
そう言って俺は座り込んだ。
「実はな、お主には嫁がせようとする予定じゃ。」
父上は光天の婚姻について話した。
「は?」
光天はその言葉に困惑している。
「嫁ぎ先は・・・」「父上…」
光天は父の婚姻の話を妨害した。
「何じゃ?」
と信繁は困惑した表情になる。
「その婚姻の話をお断り致す。」
「え?」
突然の婚姻の話を光天はあっさりと断った。隣にいる竹林院は放心状態になる。
「光天…お主…今なんて言った?」
信繁は現状何が起こったのか困惑している。
「だから、その婚姻お断りします。」
すると信繁の顔は段々と鬼の形相を浮かべてくる。
「おい…光天…ふざけておるのか…?」
「いいえ、正気です。」
光天の顔は潔かった。それに対して信繁は頭に血管が浮かび、その表情は戦の時にしか見せない顔だった。
「・・・!信繁様、どうか怒りを治めてください!これには訳があるはずです。どうか…」
正気を戻した竹林院は、信繁の袖を引っ張って止めた。
「父上、生憎ですが俺は男には興味がないです。父上は何故俺が男の服装を着ているか分かりますか?」
「あれはお主が、着たいと言うから着せたんじゃ。それに断る理由はないじゃろう。」
未だに怒りを隠せていない信繁は返答する。
「実は俺は、女子が好きだからです。」
「え?」「は?」
信繁と竹林院は光天が言った事に頭が混乱している。そう、もう一度言うが、この少女は前世が百合が大好きな元男である。
「女子の体は良いですぞ。肌が滑らかで柔らかく、髪はサラサラで唇はプルプル、胸も柔らかく(自主規制)の中は冬に飲む味噌汁より温かい。愛らしい女子は見ているだけでも癒されます!それに比べて男は、体が硬く、唇は見た感じカサカサ、吐き気がする様な(自主規制)は以ての外です!」
光天は熱く熱弁している中、竹林院は何を言っているか分からず口から魂が抜けていて信繁は開いた方が閉じない状態だった。
「それと!」「もういいぞ!光天…」
慌てて信繁は光天の熱い熱弁を止めた。
「もうわかった。これ以上はわしの知らない領域に入りそうじゃ…だから婚姻の話は、辞めておく。」
信繁は光天の婚姻の話を無かった事にした。
「では、失礼致します。父上。」
俺は立ち上がり、部屋を後にした。
「なぁ、竹林…」
「はい…信繁様…」
竹林院は弱々しい声で信繁に返事をする。
「・・・・・・ぷっ、ガハハハハハ!!」
信繁は急に大きな声で笑い出した。
「どうしたのですか!?信繁様!?」
竹林院は急に笑い出した信繁を心配している。
「ガハハハハ!!流石、わしの娘じゃ!わし相手に怯まないのは中々じゃのう!決めたぞ、竹林!」
「はい?」
「わしは光天を一人前の大名にするぞ!」
「えーー!!」
あまりの信繁の決意に竹林院は目が飛び出す程驚いた。
「ガハハハハハ!!」
その夜、信繁の笑い声は屋敷全体に響き渡った。
・・・光天の部屋
「うーん、やっぱ難しいなー。」
鉄砲は中にある火薬を爆発させて弾を撃つ。そのためには縄に火をつけなくてはならない。だが雨の日はこの鉄砲ははっきり言って無意味に近い。雨の日は縄が濡れてしまい火がつけにくいからだ。この鉄砲を改造するにあたってある事を思いついた。
「スナイパーライフルにしてみるか。」
光天は紙を取り、机に広がる筆で設計図を書いた。
確かモシン・ナガンという狙撃銃があったその銃はソ連が作ったとも言われている。それを戦国時代に生み出せて見せようではないか。作り方は分からんがモデルガンのエアガンを解体した時を工夫すればいけるんじゃないか?多少、本家とはかけ離れるが本家寄りにすれば鉄砲よりもコスパが良い。しかし、モシン・ナガンにするには良いが、弾丸をどうするかが問題だ。鍛冶屋に頼んで作って貰う方がいいかもな。しかし設計図通りに作れるかどうかだな。物は試しだ。頼んでみるとしよう。弾丸についてはこれで終いだ。次は関ヶ原だ。もうすぐで関ヶ原の戦いが開戦する可能性がある。俺もその戦に参戦し、徳川の天下を阻止する。
しかし徳川には、四天王がいる。一人目は、榊原康政、奴ははっきり言って策士だ。奴の頭脳はとても繊細で鋭い。実力は本多に劣るがそれでも数々の戦を勝ち取ってきた名将だ。
二人目は、井伊直政。彼の頭脳はずば抜けている。奴が保有する軍は誰もが精鋭揃いだ。それに加えて、井伊直政自身は強い。何せ複数の敵を蹴散らすバケモンだ。だが、本多が異質すぎて薄れているけど。
3人目は、酒井忠次。彼はもうこの世には居ないが彼が元々保有していた軍は、この戦国ではトップクラスだろう。
4人目は、本多勝頼。こいつは文句無しの怪物だ。戦行って怪我一つないはバケモンだろ。間違いなく俺が戦ったら負ける。
こうしてみると徳川四天王はチート揃いだな。しかも徳川の東軍には厄介な奴が勢揃いだ。せめて、武将の首をたくさん取りたい気持ちだ。大将首10人を目標にして戦に出よう。それと、明日は小助殿と手合わせできるか相談しよう。この戦で、あの黒服を驚かせてやる。
そうして設計図が完成し、そのまま眠りについた。
・・・翌朝
「お願いします!!」
朝から光天の声が響き渡る。
「小助殿!どうか俺と手合わせ願いますか?」
俺はダメ押しで小助に手合わせするよう頼んだ。
「ダメですよ、姫様。何より姫様に怪我などされたらこの小助の首が飛びますぞ!」
「飛んでもいいから、どうか!」
「姫様ぁぁー!?何故、私に死んでほしいと申すのですか!?」
思いもよらない発言で小助は仰天した。
「お願いだから〜。小助殿〜、俺と戦おうぞ〜。」
光天は小助の袖を引っ張りして、駄々をこねた。
「良いぞ小助。」
すると何処からか声がした。
「これは信繁様!何の御用で!」
小助は床に膝をつき、信繁に最大の敬礼をした。
「小助、光天を鍛えてはくれぬか?」
「え?」
信繁の意外な命令に、小助の頭の中が混乱した。
「光天は大名にする予定じゃよ。だから、光天を鍛えてはくれぬか?」
「姫様を…大名に!?それは真ですか、信繁様!?」
「真じゃよ、小助。光天、2日後までには鍛えておくのだな。もし、このワシを打ち負かしたらお主を戦に連れて行くとしよう。」
その言葉に、光天は心臓が揺れた。
「はい!父上、俺は貴方を打ち負かし大名になって見せます!」
光天の目は炎より暑い視線を信繁は感じ、信繁は鬼の様な笑顔を見せ。
「楽しみにしてあるぞ!光天!!」
信繁の声には喝が入っている。
「はい!!」
こうして俺は、戦国大名になるための特訓を始めた。
そして、これから伝説を起こす姫の誕生であった。
♪( ´▽`)