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なんちゃってシスターは神を騙る  作者: ココア


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第223話:アルテの正体

 少し休憩をした後は再び薬草集めを再開し、袋が一杯になるまで詰め込めるだけ詰め込んだ。


 中々頑張ったが、これだけ頑張っても日本円換算で二万円位だ。


 薬草ついでに魔物を倒せれば稼ぎとしてはそれなりになるだろうが、薬草だけではあまり良いとは言えない。


 日当で考えれば良いかもしれないが、準備や危険度を考えればトントンと言った感じだろう。


 とりあえず依頼自体はこれで達成となるので、後は無事に帰れればそれで終わりとなる。


「よいしょっと。それでは帰るとしましょう。忘れ物は大丈夫ですか?」

「はい! 魔物も来なかったので大丈夫です!」


 魔物が襲ってこなかった以上、武器やポーションなんかを使うことはなく、持ってきたバッグが荒らされるなんてことも起きていない。


 アルテは完全に散歩をしていただけみたいなものだ。


 まあお茶をくれたり、しっかりと警戒をしていたのは見ているので、文句を言うつもりは無いが、少しだけ釈然としない。


 釈然としないものの、役割分担としては妥当なので、さっさと忘れてしまうとしよう。


 薬草が詰まった袋を肩にかけて、来た道を戻っていく。


 まだまだ日は高く、間違いなく日が高い内に街まで戻れそうだ。


 時計が無いので正確には分からないが、三時前くらいには帰れるだろう。


「――止まって下さい」


 ふと、アルテが俺に手をかざし、小さな声を出す。


 少し注意を辺りに向けると、風とは違う感じで草が擦れる音がした。


 魔物……なのだろう。


 言われ通りに足を止めて、アルテとつかず離れずの距離を保つ。


 念のため薬草の袋は地面に置き、いつでも鉄扇を振れるように身構えておく。

 

 少しずつ草の擦れる音は大きくなり、アルテは剣を鞘から抜いて構える。


 鞘は少しみすぼらしい感じだったが、刀身はしっかりと手入れされているのが良く分かる。


 分かるのだが、その刀身は日の光を反射するような鋼の色ではなく、光を吸い込むような黒い刀身をしている。


 ただ黒いだけならば厨二病と切り捨てることが出来るが、これまでそれなりの業物を見てきた俺の目には、アルテの剣はその業物に分類されるものだと告げている。


 どう見てもDランクの冒険者が持つにはおかしく、俺に対して正体を隠す気があるのかと聞きたくなる。


 ミリーさんは使う武器は勿論の事、人間関係にすら気を遣っていたので、ミリーさん側から教えてもらうまで、ほとんど不明であった。


 一応鞘はランク相応に偽装しているので、考えてはいるのだろうが、それならば鞘に魔法を纏わせるとかした方が良いような気がする。


 そこまでのナメプをする気は無いとも見られるが、とりあえず俺の身の安全は保障されたと思っておこう。


 こんな物を持っていて弱いなんて事は、間違いなくない。


「えい!」


 飛び出してきたウルフを、可愛らしい声とは裏腹に一刀両断する。


 しかも、しっかりと飛び付きを避けてから首をである。


 俺の目だから追うことが出来たが、素早くありながらしっかりと洗礼された動きであった。


「……この一体だけみたいですね。群れだったら危なかったです」


 ほっと一息つき、アルテさんはウルフから魔石を取り出し、魔法で掘った穴に素早くウルフの死体を埋めた。


 こんなところで一々素材を取ってはいられないが……アルテの魔法の属性は土か。


 他にもあるかもしれないが、死体の処理には有力な属性だ。


 旅をしていて思ったが、どの属性の魔法も旅をする上でかなり役に立つ。


 どれも魔導具で代用できるが、やはりサクッと魔法を使えると色々と捗る。


 俺自身は魔法を使えないので諦めるしかないが、あるとないのでは快適さが本当に違う。


 将来的に俺も旅に出る予定ではあるが、何かの際にはルシデルシアに活動してもらう気でいる。


 ルシデルシアなら魔法が使い放題なので、代わりにやって貰う予定だ。


「冒険者なだけあって、とても手慣れていますね」

「これ位は出来ないと、冒険者をしながら旅は出来ませんから。仲間が居ればまた違うのかもしれませんが、流石に旅について来てくれる人はいなくて……」


 言葉に嘘は無いのだろうが、仲間を作らないのは俺みたいな人物に近づくためだろう。


 ミリーさんもそうだが、複数人でいるよりは個人で動いていた方が身軽だからな。


 この感じだと、あわよくば俺達と行動をしているとも考えているかもしれないが、答えはノーだ。


 帰るだけなのに、これ以上の厄介事はいらない。

 

 それにミリーさんが勝手に手を打ってくれるだろう。


「それは悲しい事ですね……アルテさんに良き出会いがある事を祈ります」

「あはは。ありがとうございます」


 気を取り直して薬草の入った袋を持ち上げ、街を目指して歩き出す。


 魔物との遭遇はこの一回だけであり、再び街の門まで戻って来ると、出る時に居た門番の人が出迎えてくれた。


 一応椅子もあるみたいだが、一日中立っているのは大変そうだ。


「おかえり。どうやらしっかりと集められたようだね」

「はい! 魔物とも一度しか遭遇しなかったので、運が良かったです」


 アルテが門番と軽く世間話をし、許可を貰ってから街の中に入る。


 因みに俺は、後ろでフードを被ってあまり顔が出ないようにしている。


 出る時もだが、俺の顔は中々インパクトがあるので、こういった時は後ろに控えていた方がすんなりと事が進む。


「それは良かったですね。通って大丈夫ですよ」

「ありがとうございます!」


 すんなりと許可が出たので、そのまま門を通ってギルドまで向かう。


 そして何事もなくギルドの受付にて薬草の入った袋を渡し、依頼料を貰って終わりとなる。


「今日はありがとうございました! これがサレンさんの分になります」

「此方としても貴重な体験が出来て良かったです」

 

 貴重な体験イコール、体験したくなかった事だが、とりあえずお金の入った袋を受け取りバッグへ入れる。


 金額としてはあまり大きくないが、へそくりとして持っておくとしよう。


 ライラやシラキリから貰ったお布施についてはしっかりと帳簿をつけており、基本的に無駄使いすることが出来ない。


 ミリーさんと飲みに行く時の支払いは全部ミリーさん持ちなのだが、大体飲み比べなどを行い、無料となる事もしばしばある。


「それでは私はこれで失礼します。今度は普通に会えることを願っています」

「はい。今日はありがとうございました。これで少しの間生きていけます!」

 

 俺に話し掛けてきた時はオドオドとしていたが、今は結構元気そうだ。


 ただ、俺の言葉の意味の裏までは伝わっていないらしい。


 まあ俺も分からないように言葉を選んではいるが、端的に言えばもう依頼に俺を誘うなって事だ。


 アルテに軽く手を振り、別れを告げた。


 さてと、帰る前にシラキリにお土産を買っていくとしよう。


 間違いなく拗ねているだろうからな。





 

1





 

「……なるほど」


 にこやかにサレンへと別れを告げたアルテはその顔から表情を消し、無機質な声で呟く。


 そして人気のない路地へと入り、その姿は街から消えた。


 消えたと言っても空気に溶けたとか、転移をしたとかではなく、魔法によって地中へと潜っただけだ。


 アルテが姿を消してから少しすると、街から少し離れた森の中にその姿があった。


 森の中に姿を現したアルテは、木を乗り移りながら走り出し、国境へと向かう。


 珍しい事に、サレンの読みは八割方当たっており、アルテは黒翼騎士団の騎士であった。


 本来アルテは王都にて活動をしている騎士なのだが、王国の動乱や連合国の内乱や教国との悪化する関係。


 更にミリーが本格的に動くと知らせを受け、結果を見守るために派遣されたのがアルテだった。


 黒翼騎士団への命令権は皇帝が持っているのだが、ミリーの件はかなり特殊であり、裏事情を知っている者は合計で片手の数しかいない。


 そしてこの森の中を疾走しているアルテは、その片手の中に納まる人物である。


 ミリーは年齢や変わらない見た目を隠すために黒翼騎士団の一般騎士となっているが、アルテは身分上ミリーよりも上であり、更に言えば黒翼騎士団第三隊長のアランよりも上の存在だ。


 今回の件でミリーが動く事さえなければ、アルテが動く事は無かったが、ミリーを失う可能性も考慮し、最良の手としてアルテが派遣されたのだ。


 そう、アルテの正体は黒翼騎士団の中で二番目に偉い存在である、副総隊長なのだ。


 アルテは今回の一連の騒動の全てを見ており、サレンの異質さや、ライラの本気。シラキリやアーサーの危険さを知ってしまった。


 黒翼騎士団は皇帝ではなく、国に仕える都合上、任務の結果を全て報告する必要は無い。


 今回の件も、アルテの匙加減一つでサレン達の行く末が決まると言っても過言ではないのだ。


 だが、ここで問題になってくるのは、サレンに関してはアルテではどうしようもないという点だ。


 他のメンバーならばアルテは軽く殺せると思っているが、姿の変わったサレンについてはお手上げだとアルテは諦めきっている。


 これはミリーに対しても同じだが、ミリーの場合は強固な檻に閉じ込めたり、魔力を封印したりなどの絡め手次第では無力化可能だが、サレンについてはどうしようもないのだ。


 


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― 新着の感想 ―
サレンさん、アンタッチャブルな存在と認識されてて草。
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