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なんちゃってシスターは神を騙る  作者: ココア


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第222話:薬草採取

「確認したので、通ってどうぞ」


 西門とはどこかと思ったが、どうやらギルドから直ぐ近くの門だった。


 そして門番に確認を取ってから街の外に出るが、これはこれで新鮮だ。


 個人的には馬車で楽をしたいが、今回の移動は徒歩だ。

 

「良い天気ですね。薬草を集めるには良い日和です!」

「そうですね。ついつい眠気を誘いそうですね」


 眠気……そう言えばシラキリに残した置き手紙には、その内戻るとしか書いてこなかったが、大丈夫だろうか?


 既に起きているとは思うが…………まあライラも居るだろうし、何か問題を起こす事は無いだろう。


「薬草の採取地点まではどれくらいですか?」

「三十分も歩けば着くと思います!」


 幸いと言うか偶然と言うか、俺達の他に冒険者は見えない。


 薬草を納品したからとポーションが安く買えるわけでもないだろうし、あの金額ではあまり受ける人はいないだろう。



 アルテの言っていた出る可能性の高い魔物は、どちらも足が速い魔物である。


 魔法使いでは不利だし、そもそも最初の懸念通り怪我をする可能性が高い。


 どれくらい強いか知らないけど。


「アルテさんはあの街に住んでいるのですか?」


 黙って歩くのもなんなので、アルテに話を振る。


 予想では旅をしていると思うが……。


「いえ、旅の途中です。帝国に向かう途中だったんですけど、どうやら国境を封鎖されているとのことで、この街で様子を見ていました」

「そうだったんですね。封鎖されたのはいつくらいからとか聞いていますか?」


 予想通りだが、帝国に向かう途中だったのか。


 見た目は頼りないが…………いや、まさかそんなことはないはずだ。


 似たような事例……というか、なんとなくこの流れには既視感がある。


 あの日も急に現れ、流れで一緒にダンジョンに行く事になった。


 だが、聞いた話では基本的に帝国から出ることはほとんど無いと言っていた。


 あのアーロンも特別と言っていたし。


 敵……だとすれば流石に態々パーティーを組むなんて事はしないだろう。


 帝国へ行く……多分帰るってことなのだろうが……。


 流石に直接黒翼騎士団なのかなんて聞けないし、まあ敵の可能性が低いことが分かったし、様子見で良いだろう。


「えっと……確か一ヶ月くらい前だったはずですね。私も人から聞いただけなので、正確ではないですが……」

「一ヶ月ですが……物流は大丈夫だったのですか?」

「私も詳しくは知らないのですが、聖都や他の国からもそれなりに流れて来ているようで、少し値段は上がっているようですが、まだ問題になるほどじゃないみたいです」

 

 確かにギルド内では文句が出ていたものの、宿屋や街ではあまり物価に関する話は出ていなかった。


 情報封鎖をしているって訳ではないだろうが、おそらく神官達が上手くやっていたのだろう。


 だが、それも少し前までの話であり、問題が出てくるのは時間の問題かもしれない。


 まあその前にマーズディアス教国が国としての体制を保てなくなり、国境の封鎖も終わるだろう。


 そうなれば帝国が介入して、連合国とかも何とかするはずだ。


 流石のサクナシャガナも……というよりはいつの間にか死んでいた教皇も色々と考えてはいたのだろうが、まさか自分が死ぬとは思っていなかったのだろう。


 国境に現場指揮官クラスは居るだろうが、最終的な決定を下せる人間はいないのかもしれない。


 あくまでも予想でしかないが、居たならば既に国境で溜め込んでいる物資をどうにかしているだろう。


 奇跡が使えなくなるなんてのはマーズディアス教国の神官にとっては異常事態なわけだし。


「つまり、時間の問題という事ですね。暴動が起こる前に、上手く解決されれば良いですが……」

「そ、そうですね。わたしも早く帝国に行きたいので、国境の封鎖が解けてくれれば……あっ、見えてきました。あの付近に薬草が多いそうです」


 三十分ほど歩くと、小高い丘が見え、その付近に少し色の違う緑が生い茂っている。


 おそらくその緑が薬草なのだろう。


 後二十分も歩けば、到着しそうだ。


 道となっているところはそこそこ歩きやすいが、生えている草の背丈が高く、少し見通しが悪い。


 ウルフとかに襲われたら大変そうだな。


 ……そう思っていたのだが、特になにも起こること無く、薬草の群生地までやってこられた。


 薬草か……マヤが道すがら色々と採集していたが、その中にあったようななかったような……。


 俺がホロウスティアで見たものとは少し別のように見える。


「何事もなくここまで来れましたね!」

「はい。少し休憩といきたいところですが、先に薬草を集めてしまいましょう。私が集めますので、アルテさんは警戒をお願いします」

「分かりました」


 二人一緒に集めた方が早いだろうが、ここはしっかりと役割を分けるのが定石だ。


 正直大丈夫ではあるのだが、二人揃って屈んで薬草を採集していては、襲われた時に反応が遅れてしまう。


 それに依頼として受けている以上、俺も働いておいた方が良い。


 ギルドで袋と一緒に借りてきた手袋をはめてから、言われた通りに葉の部分だけを千切って袋に入れていく。


 マヤにお土産として持って帰るか悩むが、今日持って来ている鞄は普通のなので、どうしても根っこごと採取すると土の処理が出来ないので、諦める。


 とりあえず突っ込めばいい拡張鞄は本当に便利だが、無い物ねだりだ。


 しかし、こんなに天気がいいなら、サンドイッチとか買ってきて、ここで食べるのも良かったかもしれないな。


 旅の途中はいつも外で食べているが、観光を目的とはしていないので、景色や場所をあまり考えていない。

 

 見通しが少し悪いが、景色を眺めながら食べるご飯というのも良い物だろう。


「サレンさん。一度休憩をしませんか?」


 二十分程黙々と摘み取っていると、アルテが提案をしてきた。


 疲れ自体は大丈夫だが、此処は言われた通りに少し休んでおくとしよう。


 シラキリやライラがいない時間は貴重であり、少し位楽しんでも罰は当たらないだろう。


「そうですね。急いでいる訳でもないですし、少し休みましょう」

「はい! 良ければお茶をどうぞ!」


 お茶か。そう言えば思い付きで出て来たから、お金ととか武器は持って来たが、飲み物は持って来なかったな。


 全く気にしていなかったが、冒険に慣れてるアルテは、そこら辺にもしっかりと気を回せていたらしい。


 もう疑問を呈する気は無いが、間違いなくランク通りの人間ではないのは確かだと思っておこう。

 

「ありがとうございます……美味しいですね。これはどこで買ったのですか?」

「いえ、私が淹れたものになります。旅をしている時に教えてもらったお茶なんですが、気に入ったので今もこうやって持って来ているんです」


 貰ったお茶はほうじ茶と言う程ではないが、ほんのりと香ばしく、しかし僅かに砂糖とは違う甘みらしいものを感じる。


 マヤが淹れてくれた、ハーブティーみたいな清々しさもある。


 マヤのは味よりも効能を得るための側面が強いため少々きついのだが、マヤの淹れ方が良いのか、結構すんなり飲める。


 コーヒーの代わりに朝の一杯として、最近はいただいている。

 

「そうなんですね。景色を楽しみながらだと、より一層美味しく感じます」

「はい。風を感じながら飲むと、また美味しいんです。それにしても、魔物が出て来なくて良かったですね。いつもなら何回か出くわす事があるのですが、今日は運が良いみたいです」


 …………そう言えば、聖都に向かっている最中は結構な頻度で魔物と遭遇していたが、帰り道はほんの数回しか遭遇していないな。


 おそらく国境へ向かうついでに、兵士や信徒達が討伐していたのだろう。


 これから戦争を始めようというのに、魔物に脅かされるのは困るだろうからな。


 ただ、アルテの言い方には少し引っ掛かるものがあるのだが、まあ運が良かったと割り切っておこう。


「アルテさんは帝国のどこに向かう予定なのですか?」

「ホロウスティアを経由して、帝都に向かう予定です。ウィルライズ劇団の公演があるそうなので、どうしても見てみたくて」


 てへへと笑うアルテだが、また懐かしい名前を聞いたものだ。


 あの時は大量の寄付を貰ったが、エストリアさんは今どこで何をしているだろうか……。


 あの人には心の中でも呼び捨てにする事が出来ない。


 折角良いヴァイオリンを手に入れたので、次に会った時はセッションとかしてみたいものだ。

 

 

 

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