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第199話:転移者確保

『ふむ。成功しているな。一か八かだったが、何とかなる物だな』


(それは良かった。俺としてはもうこりごりだがな)


 アオイを助けるために来たのは良いものの、何故かユウトが激高し、攻撃してきた。


 相手が魔物ならばその時点で即殺なのだが、流石に相手が相手なので俺も悩んだ。


 一応とはいえこの二人は俺の被害者であり、問答無用で対処するのは憚られる。


 なので、ユウトには実験台になって貰う事にした。


 アオイとサクナシャガナの繋がりをグランソラスで断つ予定だが、流石にルシデルシアとしても初めての事なので、確実に成功するか分からない。


 丁度というわけではないが、俺を殺そうとしてくる奴が居るので、色々な意味も含めて実際にやってみたのだ。


 たかが剣が突き刺さった程度で気を失うとは、少々情けない気はするが、実験は成功した。


 ユウトからは勇者としての力が消え、ただの一般人となった。


 再び加護を与えられればちゃんと戻ると思うが、まあそこら辺はまた追々としよう。


 今は茫然自失としている、アオイを如何にかする方が先だ。

 

 このまま放置して、ユウトみたいに敵対されたら目も当てられない。


 因みにユウトの怪我は、剣を抜くタイミングでポーションを振りかけたので、剣に血が付着したものの、ほとんど出血はない。


 服に穴が開いてしまったが、男だし別に良いだろう。


「アオイさん。落ち着いて下さい。殺してはいませんから」

「……え? でも、ユウトは……」

「よく見てください。血が出ていないでしょう?」


 よろよろと倒れているユウトへと近付いたアオイは、服に開いた穴の部分をまさぐる。


 その後、心臓に手を当てて行動を確認した。


「本当に生きてる。けど、確かにさっき私との繋がりが切れた筈なのに……」


 ああ。やっぱり聖女と勇者ってのは何かしらの繋がりがある物なのか。


 俺の場合ディアナが勝手にやってしまったせいか、客観的観点からしかシラキリが勇者としか判断できない。

 

 思っていたよりもこの世の絶望みたいな顔をしているなと思ったが、アオイからしたらそれも仕方のない事か。

 

 とりあえず種明かしをしておくとしよう。

 

「この剣は特殊な能力がありまして。神の力を絶つ事が出来るのです。問題点としては、文字通りに刺さなければならない事ですね」

「もしかして、さっきユウトの様子がおかしかったのって……」

「サクナシャガナの介入を受けていた可能性がありますね。アオイさんは大丈夫ですか?」


 ユウトの様子が変わったって事は、アオイもそうなる可能性がある。


 パッと見大丈夫そうだが、安心できるものではない。


「……言われてみると、妙に感情が動いたような気が……」

「アオイさんも、あまり大丈夫ではないかもしれませんね。ところでですが、あの時の続きをお聞きしても宜しいですか?」

「――はい」


 あの日、聖都から逃げると決意したアオイだが、どうにかユウトを説得する時間をくれと頭を下げられた。


 どうせ神殿に乗り込む予定であったので、その時までは待つと猶予をあげた。


 結果として何かすれ違いっぽい感じになってしまったが、とにもかくにも、アオイから正式な答えを聞かなければならない。


「私とユウトを、どうか外へと連れだして下さい。それと、帰るために手を貸してください」

「分かりました。出来うる限り手伝わせていただきます。ですが、その前にやらなければならない事があります」

「先程ユウトにやったのと同じ事ですね……」


 剣を刺される事にアオイが青い顔になるが、こればかりは仕方ない。


 何ならユウトで成功したので、安全性は保障できる分有情だろう。


 まあやれと言われたら、正直断りたくなるけど。

 

 剣を刺すのは注射を刺すのとは天と地ほどの差がある。


 片方は少し痛いだけだが、もう片方は死ぬほど痛い……てか下手すると死ぬ。


 グランソラスも見た目がそこそこ悪いので、恐怖を煽るには十分だ。


「高校生にこの様な事を選択させるのは、心苦しいですが、既に残された時間は少なく、最悪の場合アオイさんは……」


 無いとは思うが、ミリーさんがサクナシャガナを殺した場合、アオイがどうなるか分からない。


 普通は大丈夫だろうが、アオイの場合はかなり特殊なケースとなっているからな。


 サクナシャガナが死にそうになった時、アオイの生命力を吸い取って……なんて事も起こるかもしれない。

 

 なんなら普通の信徒からも奪いそうだが、そうなった時は俺にはどうしようもない。


「はい。この騒動が何なのか想像しています」


 多分アオイが思っている様なものではないのだが、とりあえずやる事やってマヤの方も助けに行かなければならない。


 あの天使共が、マヤの方にも行っているだろうからな。 


「では、一思いに刺しますので、力を抜いて立っていて下さい。少し痛いですが、怪我は私が治しますので安心してください。不安でしたら、目を閉じていても構いません」

「いえ。ユウトがこんな目に遭ったのは私の責任もあるので、覚悟を示す意味も込めて、閉じないようにしたいと思います」


 意気込むのは良いが、アオイの視線は俺が握っているグランソラスに向いており、手が震えている。


 血を吹き飛ばしていないので、まだユウトの血が少し付着しているから、どうしても恐怖を感じてしまうのだろう。


 とりあえず一度振って、血を払っておこう。


「それでは――いきます」

「はい!」


 先程のユウトとは違い、なし崩しではなくて俺の意思で刺さなければならないので、少し緊張する。


「う! ……あっ……あぁ……」

 

 ポーションを準備してから、グランソラスの根元まで一気にアオイへ突き刺す。


『勇者のよりも太く、プロテクトすらされているが、想定の範囲内だな。それと、こちらも少し分け与えておこう。もう抜いて良いぞ』


(了解)

 

 アオイの血がグランソラスを伝って手に垂れてきた辺りで一気に引き抜き、直ぐにポーションを振りかける。


「大丈夫ですか?」

「は……はい。少し驚きましたが、思っていたよりも痛くなかったというか、何かが切れると共に、何か温かい物が……」

「かなり深く根付いていたので、心配していましたが、大丈夫そうなら良かったです。それと、服に穴を開けてしまったので、着替えて来て貰っても?」

「あ、はい。少し待っていてください」


 今更だが、上着を脱いで貰ってからやれば良かったな。


 穴が開くのは勿論、血で濡れてしまったので、服を駄目にしてしまった。


 そう言えば、ユウトは鎧を着ていたが、普通に貫通してしまったな。


 着せたままというわけにもいかないし、脱がせておくか。


 この様子では直ぐに目を覚ましそうにないし、俺が運ばないといけないだろうし。


(マヤはどの辺りに居る?)


『先程吹き飛んだ場所の地下辺りだな。位置的に考えれば妥当な場所だろう』


 マヤの存在は隠されていて、それでいて教皇ないしサクナシャガナが会いに行ける場所となれば、そうなるだろう。


 向かうだけでも危険な場所だが、かと言ってアオイ達だけを先行して帰す事も出来ない。


 今の二人には何の力もない。


 いや、転生者特有の能力が有るかもしれないが、今はそれを確かめている暇は無いし、それが戦いに向いていない可能性もある。

 

「お待たせしました……あの、何を?」

「運ぶのに鎧が邪魔ですから脱がせて起きました。それと、もう加護は使えませんので、十分に注意して下さい」

「はい」


 ユウトを背負い、廊下を歩きだす。


 いつの間にか戦いの音がここまで聞こえる位大きくなっているが、マヤは無事だろうか……。


 アオイ達は仕方なくだが、マヤは俺の未来のためにも助けたい。


 何ならマヤを助けた結果、神の思惑にまた巻き込まれる可能性もあるが、それでも助ける価値がある。


『急いだ方が良いかもしれんな。サクナシャガナの気が大きくなってきている』


(ミリーさんは大丈夫なのか?)


『まだ持ってはいるが、じり貧だな。まだ負ける事はないだろうが、先に建物の方が駄目になるだろう』


 アオイの所に向かう途中でも、盛大に建物を吹き飛ばしていたからな。


 ミリーさんもだが、早くしなければマヤが生き埋めになる可能性もあるか……。


ライラ「敵が多すぎるな」

シラキリ「斬っても斬っても減らないです」

アーサー「ま、魔力が……」

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