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第166話:四人一緒の朝

「朝だよー!」

「黙れ」


 うまい飯を食べ、軽く……本当に軽く酒を飲んだ次の日。


 ミリーさんの声と、ライラのツッコミで目が覚める。


 道中は色々とあったものの、終わり良ければ全て良しな一日だった。


「おはようございます。朝から元気ですね」

「おはようサレンちゃん」

「おはようシスターサレン」


 挨拶をしてから、いつの間にか布団に潜り込んでいたシラキリを起し、身支度を始める。


 そう言えば、皆と同じ部屋で寝るのは初めてかもしれないな。


 旅では基本的に交代で寝ていたし、基本的に廃教会では一人で寝ていた。


 だからと言って何かある訳ではないが、朝から賑やかだなー。


 顔を洗ってから神官服に着替え、手袋をポケットに仕舞い、鉄扇を袖の下に装備する。


 これまで襲われる事態には一度も陥っていないので、手袋の出番は一度もないのだが、料理の時は度々お世話になっている。


 緩衝材が断熱効果も補っているので、鍋掴みの代わりに丁度良いのだ。


 さて、今日の予定だが、午前中は手分けして買い出して、午後には街を出発する予定だ。


 この街を選んだ理由は、それなりの大きさというのもあるが、品揃えが良いというのもある。


 交易都市から二つ程しか離れていないため、様々な商品がありながらもそこまで大きくはない。


 治安もそれなりらしく、交易都市が近いこともあり闇市なんてのも無いらしい。


 要は良いところも悪いところもあんまり無い、普通ならば通りすぎてしまう街って奴だ。


 分かりやすい例で言えば、あまり美味しくない狩り場が近い街って感じだろう。


 有るとありがたいが、無くても少し遠出すれば買い物が出来る。


 その程度の街だ。


 まあ俺達みたいな立場の人間からすれば、とてもありがたい街なのだがな。


「それでは行きましょうか。そろそろ待ち合わせの時間になりますから」

「そうだな。なるべく早く用事を済ませてしまうとしよう」


 久々のフル装備ライラを見たが、いつ見ても威圧感が凄いな。


 グランソラスを含めて計八本の剣。


 七曜剣グローリア。ライラが魔法を十全に使うためにドーガンさんから買った合体剣。


 もう少しで試作の文字が抜けると、ホロウスティアを出る時に言っていたが、だからと言ってライラ以外に使えるのはいないので、二本目が作られることはないだろう。


 正確には二本目を作る場合、七本作ることになるのだが。

 

 部屋を出る前に軽く掃除をし、それから食堂に向かう。


「……おはようございます」

「おはようございます。本日はよろしくお願いします」


 ライラを見たマヤが一瞬言葉を言い淀んだが、直ぐに笑みを浮かべた。


 フル装備のライラを見て驚くのは仕方のない事だろう。


 護衛の二人も少し身構えていたし。


 今日の買い物だが、俺がよろしくお願いしますと言ったように、マヤ達も付いてくる。


 しかし流石にこの人数で一緒に動くと目立ってしまうので、二つの班に分ける予定となっている。


「分けるのは、昨日の夜お話した通りで大丈夫ですか?」

「はい。ロイ達にも話はしてあります」


 班分けだが、普通に考えれば俺とマヤは別の方が良い。


 しかしマヤは俺と一緒が良いと良い、表向きは断る理由が無いので、一緒に行く事となった。


 班は俺とマヤ。それから護衛としてロイとライラ。

 

 もう一つがその他となる。


 表向きアーサーはタダの商人なので、戦えないことになっている。


 タリアさんも見た目通りらしいので、この二人の護衛として三人が付く。


「それでは、朝食をいただいたら行きましょう」


 朝食は流石にメニューがあるわけではなく、バイキング方式となっている。


 パンやおかずが大きなテーブルに積まれており、そこそこ種類がある。


 流石にドリンクバーのサーバーみたいなのはないが、飲み物が入った大きなピッチャーが幾つか用意されている。


「中々素晴らしいサービスだな」

「私も二度目なのですが、自分で食べる量を決められるので、この方式は素晴らしいと思っています」


 ライラの呟きをマヤが拾う。


 バイキング方式は料理としての質は下がってしまうが、量の調節を個人で出来るのは良い点だろう。


 ついでに味付けもシンプルな物が多いので、元の素材が悪くなければ大体食べられる。


 朝と言うことでパンを二つと、おかずとなる料理を皿に盛り付け、緑茶をピッチャーからコップに注いでからテーブルに座る。


 班を分けたこともあり、テーブルに座るのも班で分けてあるので、椅子が足りないなんて事にもならない。


 強いて言えばシラキリが微妙に不機嫌な顔をしていること位だろう。


「ロイさんはその量で足りるのですか?」

「はい。訓練をしている時ならばともかく、日常的にはこれで十分です」


 先にテーブルに座っていたロイだが、皿に盛られているのは俺と同じくらいの料理だ。


 因みにロイの見た目はガタイの良いアーサーと言った感じだろう。


 身長は180位ありそうで、ボディビルダー程ではないが、服の上からもしっかりと筋肉が付いているのが分かる。


「そうですか……」

「心配していただき、ありがとうございます。食べる時は食べるので安心してください」


 本人が大丈夫だと言うなら、俺は黙るしかない。


 会話を終えて直ぐにライラとマヤも来たので、直ぐに食事を始める。


 マヤが仕方のないと言いたげな視線をロイへと向けていたが、単純に少食と言うわけでもなさそうだな。


 何が理由かは分からないが、俺もわざと食事は少な目にしているので、人の事は言わないでおこう。 


 身体の元となっているのは俺だが、世界を渡る時に変異してしまっているため、完全に別物となっている。


 頭に角の跡がある通り既に種族として人間ではないので、食べる量はいくらでも調整できるのだ。


 これは俺が酒を幾らでも飲めるカラクリでもあるのだが、俺の身体は基本的な成分は人間と一緒だが、神力があれば生きていけるのだ。


 そして食べた物は全て……ってわけではないが、ほとんどを神力に変換する事が出来る。


 この事を俺が知ったのは、サクナシャガナによって腹を貫かれた時だ。


 属性的に考えれば、ルシデルシアは回復魔法を使えない。


 勿論神の権能を使えば治すことは出来るが、あの時神の権能を使っていれば、流石のサクナシャガナも無視する事は無かっただろう。


 ルシデルシアが魔族だから、自己修復出来る可能性もあるが、そうではない。


 ルシデルシアが俺の身体を治せた理由だが、神とは神力があれば不滅なのだ。


 そして神力をそのまま、身体の修復に充てる事が出来るのだ。

 

 昔の事だが、流石のルシデルシアでも神の軍勢を無傷で相手にするのは無理だった。


 戦って神の力を取り込んでいる内に、実質的に神となったルシデルシアはこの技を体得したのだ。


 まあ、普通に奪った権能でも治せるのだが、この方法なら魔法や権能に割く時間がいらないので、とても楽らしい。


 因みにこの方法で、俺が俺を治すことは出来ない。


 つまりペインレスディメンションアーマーとの戦いの時に、あのまま剣を振り下ろされていれば俺は死んでいた。


 所詮俺は、微妙に良い能力を持ったモブ程度の実力なのだ。


「最初は何を買いに行きますか?」

「調味料や保存が利く物を買いに行こうかと。雑貨は向こうが担当してくれますから」

「なるほど。その後の食料品といった流れですか?」

「はい。そして最後に飲料ですね」


 若干黄昏ながら朝食を終えて、出掛ける前に軽く打ち合わせをしておく。


 馬車はこのまま宿屋に置いておき、お互いの買い物が終わり次第集合して出発する流れだ。


 因みに飲料と俺が口にした時に、ライラが鋭い視線を向けてきたので、そっと頭を撫でてご機嫌を取っておく。


 どうかライラには安心して欲しい。俺がこっそり酒を買うなんて暴挙に出る事はない。


 何故ならば、既にミリーさんにお願いしてあるからだ。


 無論ライラもシラキリにミリーさんを見張るようにお願いしていたが、ミリーさんならやってくれると信じている。


「分かりました。道案内はお任せください。大体の場所は覚えていますので」 


 マヤ達と一緒に買いに行くのは目利きもあるが、単純に土地勘があるからである。


 一応ミリーさんもあるにはあるが、来たのは数十年以上も前なので、当てには出来ない。


 まあ俺達だけならば、俺が休んでいる間にアーサーとミリーさんが街の地理を確認してくれるので、問題はない。


 なんなら俺が寝ている間に確認しに出掛けていたかもしれない。


 行き先を決めて宿屋の外に出ると曇り空であり、そこそこ冷たい風が吹いていた。


 朝食を食べて温かくなった身体には丁度良い。


 さて、ご当地の美味しいものはあるだろうか?

 

 

 

サレン「スヤスヤ」(寝ている)

シラキリ「……ススス」(ベッドに潜り込む)

ライラ「……」(見て見ぬふりをする)

ミリー「スピー」(爆睡中)

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更新ありがとうございます。お疲れ様です。 サレンが寝てるベッドにみんなで入ろうの会 みんなでおぎゃろう...
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