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第158話:夜のおでーと(酒カス)

 姦しいプラス一(女四人)での夕食は終えて、シャワーを浴びてから部屋へと戻り、布団に入る。


 ライラはまだ本調子とは言えないが、違和感が無くなったらしく、助かったとお礼を言われた。


 魔力の全回復にはそれなりにかかるらしいが、既に戦う分には問題無いと言っていた。


 いざとなればグランソラスから魔力供給もあるし、心配無用だろう。


 二度目以降は、魔力の波長とかも合ってくると言っていたし。


 そして食事の時は話題に上げ辛かったので、食べ終わった後に聞いたのだが、いつも煌めいているライラの髪が灰のようにくすんでいたのだ。


 どうやらライラの髪は魔力を保有する役割りもあるらしく、魔力が少なくなったことで、色が落ちてしまったらしい。


 何だか昔見たアニメで、魔力を使いすぎると萎れてしまうキャラが居たような気がするので、それと同じなのだろう。


 ライラの髪については、流石のミリーさんも見て見ぬふりをしていた。


 さて、俺が珍しく食事をした後、酒を飲まずに布団に入った理由だが、シラキリのせいである。


 ……少し語弊があるな。


 ミリーさんのせいでむっすーとしているシラキリを慰めるために、早めに布団に入っているのだ。


「ミリーさんに勝てないのは、まだ仕方ないことです。シラキリはまだ幼いのですから」

「分かっています……。でも、勝ちたいんです」


 俺の腹……胸にグリグリと頭を擦り付け、駄々をこねる。


 流石のシラキリでも、ミリーさんに勝つのは無理だ。


 本気のミリーさんの戦いを実際に見たことはないが、百年以上生きていて弱いはずかない。 


 最低でも十倍以上シラキリより年上なのだから、熟練度も百倍と考えれば分かりやすい。


 それにどんな手かは知らないが、神を殺せる可能性がある奥の手も隠し持っている。


 戦いに詳しいわけではないが、手数的にもミリーさんの方が上だろう。


 シラキリがくノ一なら、ミリーさんは聖女だし。


 一応シラキリも勇者ではあるのだが、ルシデルシアからすればまだ見習い勇者らしい。


「まだまだ先があるのですから、ゆっくりで良いと思いますよ。帰ったら学園もありますからね」

「はい。ずっと一位でいられるように頑張ります」


 学校とは学ぶだけではなく、お互いに競い合う場所でもある。


 切磋琢磨するのは当たり前だが、それだけではマンネリしてしまう。


 日本で言えば、中間試験や期末試験での順位付けみたいなのが、学園にも存在している。


 これはミシェルちゃんから聞いた事だが、学園では二つの順位が存在している。


 片方は学力テストによる、年二回ある大きなテストで決めているものだ。


 因みに赤点とかも存在しているらしいが、詳しくは聞いていない。


 でも日本とそう変わらないだろう。


 学力試験の結果はそのまま成績となるらしく、結果を出す事により学園側が色々と便宜を図ってくれるようになるらしい。


 例えだが、特待生で入学しているならば順位次第で授業料を免除されたり、逆に入学金を請求されたりなんて事がある。


 一般生徒が高い順位ならば、食堂の無料券だったり授業の免除があったり等がある。


 そしてもう一つが、戦闘能力による順位だ。


 これはただ強ければ良いと言う訳ではないらしい。


 中には戦いは苦手だが治療や錬金が得意という人も居るので、一概に強い弱いで順位が決まるとは言い切れない。

 

 それでも基本は戦いによって順位を決めているらしいが、抜け道も色々とあるらしい。


 詳しくは一旦おいておいて、順位を決める時期だが、学力テストとは違い教師立ち会いの下で戦うことによって順位が決まるとか。


 授業中以外ならばいつでも戦っても良いらしいが、色々と決められたルールがある。

 

 戦いの際には何位以内でないといけないとか、一度戦ってからは何日空ける必要があるとか、長期休みの一週間前は戦ってはいけない等のルールがある。


 ついでに強さのランキングは、学年内と学園ランキングの二つがある。


 基本的に順位はコロコロと変わるらしいが、たまに化物みたいに強い人がいると、ミシェルちゃんが言っていた。


 そんなミシェルちゃんは学力は学年上位で、ランキングも学年内なら十本指に入ると、自慢気に言っていた。 


 来年以降はシラキリにボコボコにされるだろうが、その時は誉めておいてあげた。

 

「頑張るのは良いですが、無理してはいけませんよ」


 顔に突き刺さる耳をどかしながら撫でて、機嫌を取る。


 たれ耳ならばこんなことにはならないが、この耳はこの耳で良いので悩ましい。


 シラキリ自身が気付いているかは分からないが、シラキリの耳は起きている時はピンと立っているが、寝ている時はかなりふにゃふにゃとなる。

 

 つまり、シラキリは俺が起きるまでいつも寝たふりをしている。


 寝たふりをするのは構わないが、耳だけはどうにかしてほしい。


「はーい」


 眠そうに返事をしたシラキリは、ゆっくりと目を閉じる。

 

 俺が撫でている内にシラキリは眠りにつき、耳から力が抜けてふにゃふにゃになっていく。


 シラキリも寝たことだし、俺も寝るとするか…………なんて思ったが全く眠くない。


 ミリーさんを呼んで夜の街に繰り出しても良いが、流石に今日は自重しておこう……………………いや、折角タダ飲み出来るのだし、この機会を逃すのは勿体無い。


 いつ飲むのかと聞かれれば、今しかない。


 シラキリの様子見も含めて、十分程横になったまま過ごし、そっと布団から出る。


 下手に物音を出すとシラキリは直ぐに気付いてしまうので、音を出さないよう慎重に部屋から出る。

 

「やっぱり来たね」

「折角ミリーさんが賭けに勝ちましたからね。飲まないのは損でしょう?」

 

 一階のリビングに降りると、俺が昼間やっていたように、ミリーさんも武器の整備をしていた。


 鞘や柄から業物だと思ってはいたが、刀身を見ると俺の考えは当たっていたと分かる。


 二本の剣はどちらも吸い込まれるような輝きを放っており、見た目ならばライラのグランソラスに引けを取らないように見える。


 どちらも高い筈なのだが、どうやって手に入れたのやら……。


 ミリーさんは剣を鞘へ納めてから腰の後ろに装備し、軽く服を叩く。


「それじゃあ行こうとするか。タダ酒を飲みにね」

「はい」


 ここからは、大人の時間だ。


 マリアンが泣かない程度に沢山飲むとしよう。







1




 



「……肩が凝るな」


 ミリーとサレンが羊の雲で乾杯している頃、アランは肩に手を当てて回す。


 ミリーが居なくなった事で仕事が増えた黒翼第三部隊……正確にはアランとカインの二名だが、連日の徹夜に書類仕事。


 他区に居る副隊長との打ち合わせや、帝都への報告。


 ブラック企業もビックリな様相を呈している。


 流石にこのまま仕事を続けても効率が悪いと思ったアランは、冷した果汁水を作り、一気に飲み干す。


 冷たさと果汁の甘さにより、少しだけマシになった眠気を更に追い出すように目を揉む。


「失礼するっす。例の財宝の見積もりが出たっす」


 アランが仮眠をするか、キリが良いところまで仕事をするか悩んでいると、カインが紙の束を持ってやって来た。

 

 カインの目元に大きな隈があり、頬も心なしか痩けている様に見える。


 これについてはアランにも同じことが言えるのだが、人がいない以上、居る人間で対処しなければならない。


「公爵家からのミリーが泥棒した奴か。どれくらいになった?」

「価値だけの場合は約二十程です。美術的観点から言えばもう数倍にまでは上がるかと」

「悪くないな。それならば教会の周辺を渡してしまっても、言い訳が立つか」


 スラムの土地は表向きマフィアとしてアランが牛耳っているが、実際には国営の土地だ。


 浮浪者として不法占拠しているならともかく、土地として売り渡すには相応の理由が必要だ。

  

 流石にアランでも、勝手に売買する事は出来ない。

 

 ミリーならばやろうとすればできるが、それでは面白くないので、自分の意思では絶対にやらないだろう。


「しかし、まさか本当にやってしまうとは思わなかったす」

「グランソラスを使えるのならば、公爵家の一つ潰せて当然だろう」 


 カインが言ったのは、ライラによる復讐の事である。


 曲がりなりにも公爵家とは、王家の次に偉い立場である。

 

 相応の武力を持つのは当たり前であり、暗殺と言った汚れ仕事をしたとしても隠蔽できる権力を持つ。


 小娘一人がどうにか出来る戦力ではないのだ――普通ならば。


「しかし使えば命を喰らうって話じゃないっすか。あのシスターさんがそんなことを許すんですかね?」

「お前は関わっていないから知らないだろうが、過去にはグランソラスの能力を使っても、前当主の様に倒れずに使える者がいた。あの剣は、正当な使い手ならば命を喰われずに済むのだ」


 なる程と頷いたカインは、回らない頭でライラの事を思い出す。


 ……が、眠くて回らない頭では上手く思い出すことが出来ない。


 下手に考えごとをしたせいでカインは限界が近づき、思わず倒れそうになる。


「……お前も限界みたいだな」

「……ミリーさんのせいで、休みがなくなったもんですから」


 サレンに懺悔と言う名の愚痴を吐き、貰ったアドバイスを元に、アランに直談判して勝ち得た休み。


 それはミリーがサレンに同行する事で、黒翼の人員が減った事により無くなった。

 

 たった一人。されど一人。少なくなった分の仕事を負担するのは、難しい物であった。


「仕事は溜まるが、半日休みにしよう。互いに寝ないと無理そうだからな」

「流石に王国と帝国を一日で往復は疲れたっす……」


 いつも自由に行動し、たまに仕事を手伝わされたり迷惑を掛けられているが、カインはミリーのありがたみを今になって感じていた。


「いなくなって分かるが、あいつが抜けたのは大きいな」

「帰ってくるのってまだ数ヶ月先っすよね?」

「ああ。だが、もう少しすればこの忙しさも幾分かマシになる。話したい事はあるが、今は下がれ。一分一秒が惜しい」

「了解したっす」


 カインが居なくなったことで、アランは背もたれに寄りかかり目を閉じる。


 今黒翼が忙しい理由は、王国への報復が関係している。


 裏で糸を引いている教国はミリーからの報告次第だが、王国が帝国に対してやったことは逆鱗に触れることだった。


 よって、徹底的に王国の勢力を削ぐ活動をしているのだ。


 ライラによりその大部分は終わったが、騎士団による仕事はまだまだ残っている。


 だが今は少しだけ、アランは休むことにした。


 いくら黒翼騎士でも、限界はあるのだ。

 

 

マリアン「いらっしゃーい。今日も演奏していく?」

サレン「……あの、何故まだピアノが?」

マリアン「気にしない気にしない。先ずは一杯どうぞ♪」

ミリー「味をしめてるなー」

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― 新着の感想 ―
ミリーちゃん死んじゃうと黒翼がお仕事量で壊滅しちまう。せめて引き継ぎしてくれ〜(泣)早まるな〜(泣)
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