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第154話:これまでの振り返り

 イノセンス教を広める理由は金と信仰のためとなるのだが、もう少し振り返る事としよう。

 

 俺の魂と同化しているルシデルシアとディアナについてだ。


 二人共この世界の住人だが、現在より千年以上前の人物である。


 とある理由でこの大陸ではほとんど記録が残っていないが、ルシデルシアは原初の魔王と呼ばれる存在であり、世界を破滅させようとしていた。


 その行為は間違いなく悪であり、本人も分かっていて人類や神に喧嘩を売っていた。


 擁護など到底出来るものではないが、ルシデルシアはそもそも世界を破滅させる気は無かった。


 自分で自分を倒せる存在を作り、更に武器すらも渡していたのだ。


 それが当時の勇者と、半神であり原初の聖女と呼ばれたディアナだ。


 少し考察が入るのだが、当時から魔王や聖女と呼ばれる存在は他にもいたはずだ。


 なのに、なぜ二人が始まりの存在とされているかだが、やり過ぎたから……この一言に尽きるだろう。


 概要についてはルシデルシアが教えてくれたが、詳しくは決して話してくれないので考察交じりだが、理由としては十分だろう。


 後は生き残ったと思われる勇者も関係していると思うのだが、ルシデルシアでも自分が居なくなっている間の事を詳しく知ることは出来ない。


 そもそも勇者の名前すら教えてくれないのだが、一体どんな因縁があるのだろうか?


 まあ歴史の流れは一旦おいておくとして、軽くまとめると、過去にルシデルシアが暴れ、ディアナが物理で説得した。


 その結果二人して死んでしまった……それだけの話だ。


 そして説得の時にディアナが使った魔法により、二人は世界を渡って、死に掛けていた俺を助ける代わりに、俺を魂のゆりかごにしたのだ。

 

 ……カッコよく言ったが、要は二人で俺の魂を借家にしたのだ。


 世界を渡るなんてありえないことをした結果、ディアナの魂は傷ついてしまい、癒さないといけなくなった。


 これはルシデルシアも一緒だったが、術者であったディアナの方が傷は深く、ルシデルシアが言うには俺と出会えなければ、ディアナは消滅していたかもしれないらしい。


 しかし事故で朦朧としていた俺は、当時の事をさっぱり忘れており、普通に生活をしていた。


 何事も無ければ、傷を癒し終わった二人はこっそりといなくなる予定だったのだが、ここで思わぬ事態を招く。


 この世界の教国が、異世界から聖女を召喚しようとしたのだ。

 

 これについては最近新事実が判明したのだが、今はおいておこう。


 この召喚はあくまでも聖女であるディアナを呼び出すものであり、俺とルシデルシアは対象外であった。


 俺達三人の魂は傷を癒す関係で相互扶助の関係であり、三つの内どれか欠けても駄目な状態だった。


 よって、ディアナだけが召喚された場合、その時点で三人仲良くあの世行きとなる。


 召喚が行われた頃、俺は普通に仕事をしており、ディアナが出した声を社員と勘違い適当に返事をしてしまった。


 その結果がこの姿である。


 ルシデルシアが言うには、召喚を覆すのは難しく、魂を混ぜて座標を書き換えるのが精一杯だったらしい。


 当時のルシデルシアは、観測は出来ても手出しすることは出来ず、見ている事しか出来なかった。


 俺の魂に寄生していたと言っても、寄生するための魔法を維持していたのはディアナ側であり、今みたいにルシデルシアが表へ出られるのは、魂が混ざったからだ。


 ディアナのおかげでこんな身体になったものの、一命を取り留める事が出来た。


 ――が、折角治り始めていたディアナの魂は無理をした結果、更に深く傷付いた。


 そしてその魂を癒すためには、信仰を集めて神力を注ぐのが一番いい方法なのだ。


 まあ傷付いた魂が混ざった結果、精神が不安定になったので、結局は自分のためなのだ。


 それはそれとして、たまにディアナが暴走しているのだが、この件についてはやっとルシデルシアが手を打ってくれたので、今の所落ち着いている。


 ついでにどうやら俺やルシデルシアとは違い、かなりスレンダーな体型らしく、本人もその事を気にしているらしい。

 

 そのせいか女神像を作る過程で一悶着あったが、今となっては懐かしい記憶だ。


 そう言えばディアナが半神という事は聞いているが、どうして半神なのかは知らないな。


 後でルシデルシアに聞いてみるとしよう。


 さて、イノセンス教の中身や俺の目的を纏めれば、こんな所だろう。

 

 後はそうだな……まったく関係ない事だが、ルシデルシアとディアナは相思相愛。


 分かりやすく言えば百合やレズ……かどうかまでは分からないが、ルシデルシアの感じからすると、それなりの仲だ。


 別に同性愛が駄目というわけではないが、元の世界に居た時から、この二人の魂は地味に俺の精神を蝕んでいた。


 言葉的に言えば悪い事だが、そんなに悪い事ではない。


 少々趣味趣向が変わってしまったが、だからと言って俺そのものが変わったわけではない。


 この世界に来てからは、その蝕んでいたモノに助けられていると言えなくもないが…………この話はおいておこう。


 だが、一言だけ残しておくなら、俺が男と結婚することは絶対に無いって事だ。


 だからと言って、女とそういう関係になる気も無い。

 

 話を少し戻して、異世界を渡った結果、俺個人の魂がルシデルシアとディアナに負けて女性の身体になったのだが、変化はそれだけではなかった。


 種族も一応人ではなくなり、寿命も人間とは変わってしまったのだ。


 ルシデルシアの受け売りだが、寿命には二種類あるらしい。


 それは肉体と魂だ。


 基本的にこの二つは天秤の様に釣り合っているのだが、俺の身体は異世界を渡る時に再構築され、魂は混ざり合ってしまった。


 その結果、寿命が異様に伸びた。


 ルシデルシアは一応魔族と呼ばれる種族となるが、神を取り込んだことで格が昇格し、実質的に神みたいな存在となっていた。


 また、最低でも数千年生きていたと本人が言っていた。


 そしてディアナは半神だ。


 そんな魂が混ざったのだから、寿命が延びるのも当たり前だろう。


 魂に引っ張られるように、身体の器も大きいらしいしな。


 まだ異世界に来て数か月だが、何事も無ければこれから最低でも数百年から数千年生きる事になる。

 

 元々普通の人間である俺の精神が、持たない気がするのだが、問題無いらしい。


 問題ないなら問題ないで良いのだが、人生とは長ければ良いと言うモノでもない。


 これから先、ライラやシラキリが死んだ後も俺は生きて行く事になる。


 死別するのは生き物なら仕方ないのだが…………いや、先の事を考えるのは止めておこう。


 とりあえず将来的にはブドウ畑を作って、ワインを酒造する会社を作ろうと思っている。

 

 折角寿命があるのだから、自分で酒を作るのも一興だろう。


 先ずはワインだが、出来ればウイスキーや日本酒なども作りたい。


 ウイスキーはワインと同じく寝かせると美味しくなるからであり、日本酒は趣味だ。


 元の世界なら宗教家がこんなことをすれば炎上ものだが、異世界だから大丈夫だろう。


 それに、表の運営は他人に任せる気だし。

 

 ついでだし、日記の方にも色々と書いておこう。


 教国の件が無事に終わって、無事にホロウスティアに帰れたらだが、帰ってからしばらくの間は忙しい日々となるだろう。


 教会の立て替え工事から始まり、シラキリの入試やライラの今後についてだけではなく、イノセンス教をこれから先どう展開するか。


 神官職が二人だけというのは、あまりにも寂しい。


 人数を増やさなければならないし、人数を増やしたら組織としての体制を作らなければならない。


 加護の関係でトップは俺となるが、役職的なトップは別で作る予定だ。


 あまり政治家……貴族と会いたくはないからな。


 後はルシデルシア次第だが、他宗教を取り込んでいこうと思う。


 これは上手く出来るか分からないが、一神教以外ならば、イノセンス教は受け入れることが出来る。


 俺が欲しいのは絶対的な信仰ではなく、名前を覚えてもらう程度の信仰だ。


 それに、イノセンス教だけが目立つのは世界のために悪い結果となる。


 この世界は沢山の神によって支えられており、信仰が偏り過ぎれば世界が滅びかねないのだ。


 なので、共存できる宗教……というよりは神とは、なるべく共存していく形を取らなければならない。


 今敵対している邪神? は別だが、ルシデルシアとディアナ次第では天界に行く方法を模索するなんて事も起きるだろう。


 ルシデルシアの考察では、神は減少の一途を辿っている可能性が高い。

 

 その原因は、ミリーさんの敵であり、おそらく復讐のために聖女召喚を行ったサクナシャガナのせいだ。


 いつから暗躍しているのかは分からないが、三つある教国の内二つはサクナシャガナの手に落ちている……というよりも、サクナシャガナが作ったものだ。


 サクナシャガナの行動は世界を滅亡に導くものだが、もしも本気で滅亡させる気ならば、既に滅んでいてもおかしくない。


 そんなサクナシャガナの本当の目的だが、おそらくディアナへの復讐と睨んでいる。

 

 サクナシャガナの事を知った当初は、またルシデルシア関係かと思ったのだが、色々と不自然な点が多数あり、暫定的にディアナへの復讐が一番可能性が高いと考えた。


 これまでの事件が全てルシデルシア関係だったせいで長らく勘違いしていたが、一番の決め手は俺がこの世界へくる事になった聖女召喚だ。


 ルシデルシアが目的だった場合、行うのは聖女ではなく魔王だ。


 もしかしたらどこかで二人が生きている事を知っていた可能性もあるが、態々別の存在を呼ぶ意味はない。


 その他にも不自然な点が幾つかあるが、結局は本人に確認しないと分からないんだ。


 仮説はあくまでも仮説でしかない。


 正直こんなヤバい相手に関わりたくないのだが、俺の恩人であり悪友であり酒飲み仲間であるミリーさんが深く関わっている。


 ミリーさんはあんなロリ……幼女……慎ましい……良い言葉が出てこないが、幼い姿でありながら、既に百年以上生きている。


 その理由は……正直俺達の中で一番重いのだが、物語風で言うならば、神によって運命を捻じ曲げられた少女……と言った感じか。


 流石に人から生まれたとは思うが、神の依り代として育てられた。


 当初は二十人位居たらしいが、様々な実験により二人まで数を減らし、ミリーさんは予備として生き残った。


 そして神降ろしの際に事故が起こり、ミリーさんは聖女となった。


 加護とは本来良い物だが、ミリーさんのそれは呪いと言っても過言ではない。


 しかもこれは推測になるが、ミリーさんはサクナシャガナに騙されている。


 これまでの話の通り、サクナシャガナは所謂邪神だ。

 

 ミリーさんは善と悪に分かれたと言っていたが、両方とも悪に違いない。


 何せ、天界に詳しいルシデルシアが色々とおかしい点を指摘していたし、天界側からもアプローチしている可能性が高いと言っていた。

 

 ……考えを纏めるために日記へ色々と書き込んでいたが、思いの外埋まってしまったな。


 纏めるのは一旦ここまでにしておくとしよう。


 何はともあれ教国に行って、解決してから考えなければ、ただの皮算用だ。


 少し昼を過ぎてしまったが、昼飯を作るとしよう。

 

ルシデルシア「スピー」

ルシデルシア「む、何やら邪な念を感じるが……うむ」

ルシデルシア「余は悪くない」

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