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第144話:まったり朝ごはん

 目覚めの朝。


 久々にふかふかの布団で寝たので身体の調子は良いが、それ以外は絶不調…………まではいかないが、あまりよくない。


 結局ライラに説教され、ミリーさんは最低限の金を除いて没収されてしまった。


 どうせミリーさんの事なので、こっそり隠しているだろうが、一つ問題が起きた。


 買い出し時に、拡張鞄を持っていくことを禁止されてしまったのだ。


 そして買ってきたものは全て一度、ライラが確認する事となった。


 ついでに部屋へ鞄を持ち帰るのも禁止である。


 つまり、外で飲むことは出来るが、こっそりと旅の途中に飲むことが出来なくなってしまった。


 ミリーさんが隠していたへそくり(ワイン)はとっくに空なので、どうにかしないと水だけの生活となってしまう。


 別に嫌ではないのだが、ミリーさんの好感度を稼ぐには酒が必要なのだ。


 決して俺が飲みたいからではない!


 ……とは言ってみたものの、ミリーさんを助けると決めた日から、正直俺とミリーさんの仲は進展していない。


 そもそもホロウスティアに居た時から既にそれなりの仲であり、所謂悪友的な仲だ。


 好感度で言えば、上限に届いてしまっている。


 先ずは上限解放をしなければ、次のステージには上がれない。


 問題はその上限をどうやって開放するかだ。


 ゲーム風に言うならば、ミリーさんの難易度はルナティックやエクストラと呼ばれる位ある。

 

 友達レベルまでは簡単だが、その後は一切上がらなくなる。


 解放の仕方は勿論不明であり、攻略法なんてものもない。


 おまけにもしも失敗すれば、待っているのは死亡エンドだ。


「クシュン!」


 シラキリの頭を撫でながら微睡んでいると、運悪くシラキリの耳が鼻をくすぐる。

 

 目は覚めたが、久々のベッドなので、中々起き上がる事が出来ない。


 過去の俺は仕事の日ならばともかく、休日の日は結構怠惰的な人間だ。


 用事がないならば、大体昼くらいまで寝ている。


 正確には朝まで飲んだり遊んだりしているので、朝起きられないと言うより、朝まで起きているのだ。


「おはようございます……サレンさん」

「おはようございます、シラキリ」

 

 俺のくしゃみで目が覚めたと思われるシラキリに挨拶を返す。


 シラキリは子供なだけあり、体温が高い。


 湯たんぽとしては最高だろう。


 さて、このまま二度寝したいが、一応ミリーさんと買い出しに行く約束がある。


 もうそろそろ起きなければいけないだろう。


 布団から起きて、シラキリと一緒にシャワーを浴びる。


 昔に比べれば全体的にふっくらしてきているが、まだまだ細いように感じる。


 早く勇者の力を抜き取って、学園では健やかに過ごしてほしいのだが…………無理だろうなぁ……。

 

 出来ればミシェルちゃんが居る学園とは別の所を選んでくれれば良いが……上手く誘導するとしよう。


「おはようございます。ライラ、ミリーさん」

「おはよう。シスターサレン」

「おはよー」

「おはようございます」

 

 一階のロビーには既に三人が揃って思い思いに……。


「あの……ミリーさんは……」

「昨日馬鹿な事をした罰だ。まあ、効果などないだろうがな」

「あははー」 


 ライラとアーサーはソファーに座っているのだが、ミリーさんだけは床で正座をしている。


 昨日の件とは飲み比べの事だろうが…………哀れな。


 まあ悪いのは俺とミリーさんなので、ライラに逆らうことは出来ない。


 とりあえず見なかったことにしよう。


「そうですか。私は昨日話した通りミリーさんと一緒に買い出しへ行ってこようと思います」

「ああ。大丈夫だとは思うが、馬鹿に唆されないようにな」


 正座しているミリーさんを蔑んだような目で見るライラは、ソファーから立ち上がり、二階へと上がって行った。


 しかし、俺の横を通る時にしっかりと俺が持っている鞄を見ていたので、昨日の事は忘れていないらしい。


「いてててて……まったく、最近の若者はおっかないね。サレンちゃんは準備出来てる?」

「出来ていますが、朝食は大丈夫ですか?」

「各自で大丈夫でしょ。ライラちゃんは放っておいても大丈夫だろうしね」


 それもそうか……。


 元の世界なら、朝からやっている店はかなり少ない。


 しかしこの世界の店は、ほとんど朝からやっている。


 少しでも稼ぎたいからと言うのもあるのだろうが、労働基準法がないのが一番の理由だろう。


 逆に夜遅くまでやっている店は少く、日が沈むくらいにはほとんど閉まる。


 ホロウスティアは例外だが。


 朝だからと言って、外食するのは問題ないのだ。


「そうですね。それでは行きましょう。アーサーとシラキリはお話しした通りに」

「はい。行ってらっしゃいませ」

「行ってらっしゃい……」

 

 足が痺れて不可解な動きをするミリーさんと一緒に外へ出ると、仄かに冷たい風が吹いてきた。


 流石に少し寒くなってきたので、インナーか上着を買った方が良いかもしれないな。


 買うとしたらホロウスティアでとなるので、まだまだ先の話となるが。


「先ずは朝ごはんを食べに行こうか」

「そうですね。昨日の夜はお肉でしたので、野菜のサンドイッチとかどうですか?」

「いいねー。パン屋を頑張って探そうか」


 朝だから普通の会話だが、これが夜になると、一気に酷い内容となる。


 あのワインが飲みたい。このウイスキーが飲みたい。あのぼったくり酒場を潰したい。


 そんな感じの、駄目な大人の会話となる。

 

 途中までは羊の雲へ行く時に使った道を進み、途中で違う道へ進む。


 向こうが歓楽街ならば、今向かっているのは商店街だ。


 言い換えれば不健全な場所ではなく、健全な場所となる。


 少しずつ賑やかになり始め、客引きの声が道路に響く。


 前に寄ったアイリスの街は暗い雰囲気だったが、やはり街は賑わっている方が良い。


「昨日の飲み比べの時、シープビギニングとラム肉を一緒に食べてたけど、どうだった?」

「とても美味しかったですね。シープビギニングの風味とラム肉にとても合っていました」


 牛はデイラッシュなのに、ラム肉はラム肉である。


 元の世界と名前が一緒だったり別だったりと本当に紛らわしい。


 ラム肉も日本語名なら子羊の肉だから別と言えば別だが、なら店名も変えろと思わなくもない。


 とりあえず過去の異世界人が悪いのだが、本当にもっと頑張って欲しかった。

 

 混ぜる位なら全く別物の方が、覚えるのは楽だからな。


「おっ、あそこなんてどう? 中々おしゃれな喫茶店じゃない?」

「そうですね。良い匂いもしますので、良さそうです」


 カフェテラスのある喫茶店があり、外には花が植えられている。


 結構清潔そうに見えるし、料理も悪くなさそうだ。


「いらっしゃいませー。どちらでお召し上がりになりますか?」

「店内でよろしく」

「はい。空いてる席へどうぞー」


 カフェテラスがあるからと、外で食べる気はない。


 何せ、どんなトラブルが起こるか分からないからな。


 適当な席へ座り、テーブルに置いてあるメニューを見る。


 レストランとは違い、喫茶店はそんなにメニューが多いわけではないので、目新しいものは無い。


 コーヒーと野菜のサンドイッチを頼み、ミリーさんからこの街について軽く説明を受ける。


 アイリスの街とは違い、国同士の流通の要である国境は潤っている。


 戦争となれば最も被害が出る場所だが、逆に言えば戦争が起きない限り金を生み出し続ける。


 難点としては王国側の街であるのに、少し宗教色が強い事だろう。


 強いと言ってもあちこちで勧誘をしているとか、教会が乱立しているとか、そういった意味ではない。


 単純に大通りを行きかっている中に、神官っぽい人が多いのだ。


 ホロウスティアみたいな勧誘合戦が起きないのかと疑問に思ったが、そもそも王国側の国境には教会が無いのだ。


 王国側としては何か起きた際に、教国側が優位に立たないようにするための策なのだろう。


 布教行為自体は禁止されていないが、街の中で信徒を得る事は禁止されているのだ。


 世の中にはバレなければ合法と言う言葉があるが、もしもバレたら執行猶予無しで処刑である。


 教国側の国境ならそんな法律も無いので、こちらで無理して布教する馬鹿はいない。


 なので、昨日の夜神官である俺に対しても、気さくに声を掛けていたのだろう。


 一人は顔を見た瞬間に逃げたが。


 ついでに昨日は大通りから外れなかったから問題無かったが、治安は結構悪いらしい。


 此処では一人で動くつもりは無いし、態々路地裏を通ろうとも思っていないので、俺には関係ない事だろう。


 仮にスリとかされたとしても、控えているシラキリかアーサーがどうにかしてくれるだろうし。


 まあ予定では今日を含めて後四日位の滞在だ。


 そうそう問題も起こるまい。


 ゆっくりとモーニングを楽しみ、少し休んでから喫茶店を出る。


「結構美味しかったね」

「はい。コーヒーも雑味がなくて良かったです」


 適当に選んだ喫茶店だったが、質も量も中々のものであり、店内も清潔であった。


 もしも食べログがあるのならば、星五個を付けられる位の満足度がある。


「さっさと買い物を済ませて、お店でも巡ろうか」

「あまりはしゃいでは駄目ですよ。見張られているのですからね」


 ただの店ならば問題ないが、この店とは酒場とか酒店の事である。


 アーサー達に見張られているので、下手なことをしてライラに報告をされてしまえば、また怒られることになるだろう。


「分かってるさ。おっ、あの店は良さそうじゃない?」

「とりあえず入ってみましょう。欲しいものがあれば良いのですが」


 商店街に差し掛かり、適当な店に入って買い物をしていく。


 国境なだけあり、どの店も品揃えが豊富だ。


 折角なので、色々と追加で買っていくとしよう。


 運良く金には余裕があるからな。


  

アーサー「流石に問題は起きませんね」

シラキリ「そうですね」耳ピコピコ

アーサー「私達も少し食べておきましょうか」

シラキリ「パンが良いです」

アーサー「……ああ、シラキリのために喫茶店を選んだという事ですか」

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― 新着の感想 ―
取り巻きが束縛系のストーカーになりつつあるw ライラも気に入らない相手に当たる所はちゃんと父親譲りですな。
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