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序章

ああ、この感覚。

ひさしぶりだな・・・

十年以上前、小学校にも上がらない時の記憶。

大人も子供も信じてくれなかった自分だけが見た女の子。

彼女は怪我をして薄暗い路地にうずくまっていた。

「けがをしたおねえちゃんがいる!」

そう叫ぶが道行く大人も幼馴染たちも信じてはくれなかった。まるで見えていないかのように。

「おねがい!このおねえちゃんをたすけて!きゅうきゅうしゃをよんでよ!」

幼い自分がそう叫ぶが周りの視線は冷たいものだった。

「坊や、ありがとう。もうすぐ迎えが来る。心配無用だ。」

「でも!」

ツゥ!と顔を痛みに歪ませる彼女は不謹慎だが可愛かった。

「りくくん、なにいってるの?だれもいないよ?」

幼馴染の女の子が言うが自分には見えてるし会話もできる!

「ななみちゃん!ほんとうにみえないの?」

「・・・うん。」

幼馴染は言いづらそうに答えた。

「ごろうくんも?!」

もう一人の幼馴染の男の子に訊くが首を横に振る。彼にも見えないようだ。

彼だけではない。

数人いる大人たちも同じ反応だ。

気がつけば自分が残念で可哀想な視線にさらされている。

「ほんとうにいるんだって!しんじてよ!」

堪え切れず叫ぶが周りの反応は冷ややかなものだった。

フフフw

クスクスクスw

嘲笑が聞こえてくる。

何も無い場所を指差し、助けを求める幼児の姿はさぞや滑稽だったろう。

その場の空気に耐え切れず耳を塞ぎながら叫んだ!

「なんで!?みんな!みえないのー?!」

その瞬間音が、いや、全てが止まった。


“そうだ。お前以外は見えてはおらぬ。”

地響きのような声と共に路地の暗がりから男が出てきた。

「驚いたな。魔力どころか神々すらおらぬこの世界で我等を観測できる者がいるとは。」

穏やかな口調だがめちゃくちゃ怖い顔したおっさんだったことを憶えている。

「おじさん、だれ?」

恐る恐るきいてみた。

「我か?我はこの出来損ないを迎えに来た神よ!!」

おっさんは乱暴に彼女の髪を掴み上げた!

「情け無いのお!あの程度の魔神に遅れを取り、我等の加護さえ届かぬ見放された世界に飛ばされるとは!」

「くぅ!」

短い悲鳴をあげる彼女

その時、切れた。切れてしまった。

「やめろー!おねえちゃんにひどいことするなー!!」

体中に電撃が走ったような気がした。

バチン!という音と共におっさんの手から彼女が解放された。

「グゥ?!」

おっさんは苦悶の表情で混乱した。

「え?え?」

彼女も混乱していた。淡い光に包まれ、怪我が治っていく。壊れた防具や折れた剣も。

「これは・・・?」

「だーはっはっはっは!」

完全に治癒した彼女の隣で爆笑するおっさん。

ひとしきり笑った後に彼女が問うた。

「何がそんなに可笑しい?」

「これが笑わずにおれようか!喜べ!お主にも〈信者〉ができたのだぞ!三千世界を見渡してもこの(わらべ)だけだろうがな!」

ククク!と笑い、言葉を続ける。

「しかも!この童!いや、童だからこそか?高純度の[信力]をお主に捧げおったわ!その証拠に傷どころか神器まで治してしもうた!」

そう言われてはっ!と何かに気づいた彼女は自分のところに駆け寄った。

「坊や。身体は大丈夫?痛かったり、気分が悪かったりしない?」

「うん。だいじょうぶ。」

怪我した彼女をみつけたり、そのことをみんなに信じてもらえなかったり、おっさんが恐かったり、彼女の怪我が治って安心したりで色んな感情が込み上げて涙をこぼしてしまった。恥ずかしい!

「ふふふwありがとう。」

礼を言いつつ涙を拭う彼女。うれしいやら気恥ずかしいやらで顔が熱くなる。

「なるほど、なるほど。あれほどの[信力]を捧げてもなお正気を保っておるとは〈司教〉どころか〈大司教〉の器かもしれぬ。」

意味不明な文言を並べながらまだ笑っている。

笑いすぎじゃね?

「くはははは!しかし残念よのう!せっかくできた[信者]とこれきりでお別れとは!」

「貴様!この子に何をするつもりだ?!」

訳がわからなかったとはいえ、彼女に[信力]を捧げた行為はおっさんに対する攻撃と受け取られたようだ。

自分から出た“なにか”がおっさんの手にあたったし、神様とかいってたからバチでもあたるのか?とか彼女の背に隠れ、ガクブルしながら考えていると意外な返答がきた。

「勘違いするな。我に手傷を負わせたことは万死に値するが面白いものが見れた。お主を回復する手間も省けたしのお。よって此度の無礼、不問とする。」

助かった!のか?

「童よ。悪いことは言わぬ。このことは早く忘れるが良いぞ。我等が再び出会うことは叶わぬ。」

そういうとおっさんは(きびす)を返し、暗がりに消えた。

今までの会話から彼女とおっさんは別の世界の神様でその世界に帰ったら二度と会えないということだろう。

「本当にありがとう。さようなら。」

そう言うと彼女はフワリと空中に浮き、溶けるように姿が薄くなってしまった。

そうだ!大切なこときかないと!

目一杯、手をのばし叫んだ!

「おねえちゃん!おなまえは?!」

「我の名は・・・」











システムメッセージ

東条 陸(トウジョウリク)〉はスキル【判官贔屓(はんがんびいき)】【空気不読(くうきよまず)】【頑固一徹(がんこいってつ)】を入手した。










エラー  これらのスキルが発動してもこの世界では恩寵は得られない

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