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振り返ってはいけない…気がする…

作者: 夢見心地

帰り道。

いつもと同じ道を歩いているはずなのに…。

なんだか背筋がゾワッとするような気がした。

不思議な感覚だ。

何者かに背筋をふっと、掴まれたような…

何故かわからないけど一瞬冷たい空気が背筋を凍らせたような気がした。

誰かに後をつけられているのだろうか?

いやわからない…。

でもなんだか前に進むのが怖い気がする。

今のゾワっとした感覚は一体何?

虫でも服の間に入ってきたのかと、両手を上と下から

シャツの下に突っ込んでまさぐってみた。

しかし虫の気配はない。

振り返って確かめたいけど、何故か振り返ってはいけない気がする。

とにかく早く家に帰ろう。

夏だ。非常な暑さに気が滅入っているだけだ。

駆け足になって道を急いだ。

すると…

なんだか何者かが自分の後ろを自分と同じテンポで走ってきているような気がする。

少しだけ歩を緩めてみた。

すると足音も少しゆっくりと、そして何か冷たい影が自分の後ろにぴったり

くっついてきているような気がする。

なんだか重い重圧を感じ耐えられなくなってもう一度走る。

冷たい影も自分と共に走っているように感じる。

背筋が凍った感覚もまだ治らない。

自分はどこかおかしくなってしまったのだろうか?

もう早く帰ろう。

とにかく振り返らずに早く走って帰ろう。

ああこの冷たい影、振り払いたいのに払えないこのやるせなさ。

苦しい。もう走っていられない。

暑さと息苦しさと得体の知れない恐ろしさに締め付けられて、その場にペタリと座り込んでしまった。

冷たい影もぴたりと自分から離れない…。

そして…そして…

ああもう振り返らずにはいられない…

振り返ってはいけない気がするけど振り返らずにはいられない。

恐る恐る…

後ろを振り返ろうとした時…

さわさわさわ…

風が吹いてきた。ひんやりする。

もう一度立ち上がりながら後ろを振り返ってみた。


何もない…。

何もいなかった…。

でも何かいるような気がする…。

精神が疲れているのだろうか…。

もう一度背筋をしゃんと伸ばして歩こうとしても、もう背筋が伸びることはないんじゃないかと言うぐらいに疲労していた。

もう一度走る。

やっぱり同じく自分の後を追いかけてくる足音が、聞こえる。

家の中に入るまで、これは止まないのだろう…

きっと姿の見えない夏の霊なのだ…。

もう一度振り返ったら今度こそ、沼の中に引きずり下ろされてしまうのではないか。

心なしかさっきよりも重い気がする…。

とにかく走る、走るのだ。

早く家の扉を開けて、中に入ろう。

そうすれば夏の霊はきっとどこかへ追い払える。

きっと、きっとね…。

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