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夜の街で


 私たちは焦っていた。


「取り逃がした! これって不味いよ、どうするの!」


「しようがないだろ、情報が間違ってたんだ。あんなにデカいだなんて聞いてない!」


「と、とにかく! 一度、街に戻ろうよ! あんなの応援を呼ばなきゃ無理だ!」


「あぁ、もう! 天下の飛行魔導士がこの様かよ!」


 飛行魔導士になってからこの一年、私は必死になって勤めを果たしてきた。

 死にそうな思いをしたのも一度や二度じゃない。

 それでも頑張れたのは飛行魔導士が憧れだったから。

 誰もが空を飛べるわけじゃない。

 選ばれた者のみが翼で天空を駆ることができる。

 常に相応しくあろうとしたけれど、今日ついに恐れていたことが起こってしまった。

 取り逃がした、討伐対象の魔物を。


「あの魔物、街を襲ったりしないよね?」


「バッカ。縁起でもないこと言うんじゃねぇ」


「そうなったら僕たち飛行魔導士じゃいられなくなるかも」


「えぇ!?」


「だから! 縁起でもないこというなっての!」


 不安に駆られながら、一先ず街まで引き上げることに。

 本当に、本当に、どうかあの魔物が街を襲いませんように。

 出来れば森の奥とか、山の向こうに逃げて行きますように。

 お願いします、神様!


§


 森林での仕事を終えた傭兵組織虎ノ団は久方ぶりの街に身を寄せた。

 飲食店に駆け込む者、宿泊施設で眠りこける者、女に誘われてついていく者。

 禁欲生活から解放されて誰もが浮かれながら夜の街に散った。

 例外はタイガと金回り担当の数人くらいで、今回の仕事の報酬を受け取りに行っている。

 森林は街のほど近くにあった。

 魔物が繁殖すれば街にまで危険が及ぶ。

 それを未然に防ぐための荒仕事が俺たち傭兵の飯の種になる。

 もうこの辺に仕事はなさそうだから直にこの街ともおさらばだ。


「街に戻ったし、俺もどこかに入るか」


 刑務所を出たばかりの囚人のように、街のどんな娯楽も輝いて見える。

 けど、どれもしっくり来ない。

 ああでもないこうでもないと歩いている片手間で空を飛ぶ方法について考えてしまう。

 刃竜の解体現場は見させてもらった。

 どのような器官があって、どのような構造をしているかを頭に叩き込んだ。

 そのせいか、それ以降いつも頭の片隅で鋼ノ翼の設計図を描いてしまう。

 久しぶりの街だ、遊びたい気持ちは多いにある。

 けど。


「はぁ……ダメだな」


 今はやっぱり空のことを考えていたい。

 折角のいい夜だけど、宿に戻ろう。


「やだ、喧嘩よ。さっさと行きましょ」


「やぁね、男ってすぐ手が出るんだもの」


 擦れ違うご婦人方の言う通り、すぐに怒号が聞こえてくる。

 その中の一つに聞き覚えがあって近づいて見ると、やっぱり見知った顔がいた。


「アキラ?」


 店の前で男と言い争っている。

 その後ろには、がたいのいい男が二人。

 あのくらい傭兵ならなんともないけど普段のアキラなら数的不利になった時点で逃げてるはず。

 それでも食い下がるってことは、よほどのことがあったのか?


「よう、アキラ」


「ア、アイル」


「手伝おうか?」


「い、いや、今回ばかりは結構だ。また来るからな」


「何度来られても一緒ですよ」


 言い争っていた男に言葉を吐き捨てて、アキラは夜の街に消えて行く。


「あなたからも言っといてください」


 そう言って、屈強な男二人を連れて男は店の中に戻っていった。

 なにか事情がありそうだけど、あの態度からして俺に関わってほしくはなさそうだ。


「高利貸しの店……借金でもしてるのか?」


 今回の仕事で結構な額を稼いでいたはずだけど。


「まぁ、いいか」


 掲げられた看板から視線を下げて帰路につく。

 本当に困った時は頼りにくるだろうと、この件について考えるのは止めた。

 それより今は設計図だ。

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