表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

晴れときどき・・・

晴れ時々・・・クリスマスツリー

作者: ふゆ~れ

昔書いたショートショート。



~ クリスマスツリー ~



「あれっ? あんなところにクリスマスツリーがある。」


ゆかりが、ふと立ち止まる。

12月に入ってしばらくした頃。水上ゆかりと沼田玲、大島つむぎはいつも

の3人で学校からの帰り道を歩いていた。


「本当だ~。誰か飾り付けたんだろうね~。」


「あれだけの木を飾り付けるのも大変だったろうな。」


つむぎと玲も後に続く。

3人の先には野原が広がり、その向こうにクリスマスツリーが立っていた。


「昨日まではあんなのなかったよな?」


「うん。昨日までは普通の木だったよね。」


玲とゆかりの言う通り、元々そこには大きな木が1本立ってるだけだった。

それが今、十数メートルもありそうな大きな木が、頭に三日月を乗せ、星を散

りばめたような電飾を身にまとい、殺風景に広がる冬の野原に輝いていた。


「きれいだね~。もうすぐクリスマスだもんね~。」


つむぎの、ほわっとした声もする。


「でも、こんなところにツリーを飾ってもほとんど誰も見に来ないよね。」


ゆかりが辺りを見回しながら軽く苦笑する。この時間、この道を歩いている

のはゆかり達と、他には同じ学校帰りの数人くらいである。三人はしばらく留

まってクリスマスツリーを見ていた。


・・・


「っくちゅん。」


つむぎが小さくくしゃみをする。


「・・・今日も冷えるわね。ずっとここにいたら風邪ひいちゃうよ。いこ。」


ゆかりは二人を促し、三人はその場を後にした。




・・・翌日。


「今日も光ってるね。」


ゆかり達はいつもの様に三人で帰っている。


「本物のお月様とお星様が飾ってあるみたいだよね~。」


つむぎが光るクリスマスツリーに見とれながら言った。

ふと玲は空を見上げて、


「・・・?。今日の天気、晴れだよな?」


「何言ってるの。今日もこれ以上ないくらい晴れてたじゃない。」


ゆかりが答える。


「むぅ・・・でも星が見えないぞ。」


その声にゆかりとつむぎもも空を見上げる。


「あれっ、本当だ。お星様、みえないね~。」


「そういえばそうね。・・・夕方になって突然曇ったとか?」


「この空の色は曇ってる色じゃないだろう。」


鋼のように暗く透き通った冬の夜空が広がっている。


「・・・もしかしてあそこだったりして?」


玲が光るクリスマスツリーを指差す。


「んなことあるか!!」


直ちにゆかりが否定にかかる。


「じゃ、ちょっと確かめてみようか。」


と玲が光り輝くクリスマスツリーの方へ歩き出した。



「あ、ちょっと待ってよ~。」



ゆかりとつむぎもそれに続く。



・・・



「やっぱり、あれ、本当に星と月じゃないか?」


歩きながら玲が同意を求める。ツリーに近づけば近づくほど月や星は本物っ

ぽく見える。


「う、うぅ~ん。」


「きれいだね~。」


信じたくないゆかりと、ただ見とれているつむぎ。


木を見上げるくらいまでに近づいたとき、


「っとと。」


歩いていたゆかりが何かにつまづき・・・、


「わわわっ!」


よろめきながら足元に転がっていた木の枝を盛大に踏み割った。



          バキッ!! ミ☆



その途端



    バサバサバサッ



「きゃ~っ」



突然ものすごい羽音とともにクリスマスツリーから一斉に光の点が空に舞い

上がった。飛び回る光の点の中で思わず逃げ出す三人。その間に光はあっとい

う間に空を昇って行き



星になった。



ツリーの天辺にあった月も、空に戻っていた。


辺りが暗く静かになると、三人は逃げるのをやめ、木の方を振り返った。


「・・・。」


しばらく、声も出ずに立ち尽くす三人。


「お星様、逃げちゃった。」


静寂を破ったつむぎにゆかりと玲が続く


「あ~びっくりした。でも・・・クリスマスツリーじゃなくなっちゃったね。」


「ゆかりのおかげで、光の正体も分かったし。ふっふっふっ、俺様の名推理。」


「うぐぐぐっ。」


ゆかりは反論できず言葉につまっている。




少しして、三人はクリスマスを前に真っ暗になってしまった元クリスマス

ツリーを後にした。


しばらく歩いて、いつもの道に戻ってふと木の方を見ると・・・。



「あっ・・・。」



いつのまにか、星や月が木に舞い戻っていた。


「やっぱり町にあふれるクリスマスツリーを見て、星とか月がそれをまねした

くなったんだろうな。」


「・・・いいけどね。」


得意満面の玲と、今ひとつ納得の行かないゆかりの声が残った。



・・・



クリスマスが終わり、クリスマスツリーも姿を消したある日。ふとした用事

でゆかりが例の木の見える道を通りかかった・・・


「時期が違うだろっ!!」


木には明るく「大」の文字が浮き上がっていた。




~END~



まぁそんな感じの話です。

たまには、空の星も地上に降りて来たくなるということで(^^;



ショートショートは、いったんこれで終わりです。

(過去に書いたものの投稿はもうしばらく続きます ^^; )

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ