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世界を救うはずの勇者が世界を支配する魔王に!?  作者: 栗山 ぽん酢
1章 この世界とのお別れ
5/8

5.終わりと始まり

 学校へ入るといつになく校内が騒がしかった。


「あ、そうか。明日か。」


 僕の学校は明日から、青春三大イベントの1つ、文化祭が始まる。文化祭中は新たなカップルができたり、新たな友達ができたり、友情をさらに深めることが出来たりする、リア充大好きイベントだ。


 だが、クラスでの僕の扱いは空気と同じ。

何をするにしても、僕に発言権はなく、クラスの人達の僕の利用価値と言えば、日頃の鬱憤晴らしに、イジめることぐらいだ。


 なので、僕が、そんな華のような青春を謳歌できるわけがないのだ。


 高校ではイジメを受けている僕がなぜ、わざわざイジメられる学校に行くのかと、不思議に思う人もいるかもしれない。


 母さんが生きているときは、母さんから「母さんのことはいいから、学校にだけは行きなさい。それがあなたのためになるから」と言われていた。

ただ、それだけでなく、今だから言えるが、もしかしたら僕は母さんを守りたいという気持ちとは裏腹に、その環境から逃げたかったのかもしれない。まぁ、学校でイジメられてたら本末転倒なのだが……。


 そして、母さんがいなくなってしまった今、母さんの言いつけは遺言のようなものだと、勝手に解釈し、母さんの言ったことは守ろうと思い、学校へ行っている。


 それと、僕の目標として、「幸せになる」というのがあるが、これは漠然としていて、実際に何をして良いのかがわからない。

だから、世間一般的に、幸せは、良い大学に入り、良い会社に入ることで幸せは掴むことが出来ると言われている。

良い大学に入れるかは分からないが、最低でも高校卒業は必要だと考えたので、学校へ行こうと思った。


 そう、僕は以外にもそういうところは真面目なのだ。

 こんなに将来について考えてる僕に幸せの一個や二個くれてもいいんだよ?

 などと考えながら教室へむかっていると、


「ドンッ」

 誰かと肩がぶつかった。

「痛っ」

 ぶつかったのは同じクラスの女子だった。


「あ、ごめ、チッ、お前かよ。ちゃんと前見て歩けよ。」


 な、ぶつかって来たのになんて態度だ!


「いやいや、ぶつかって来たのはそっちじゃないか。」


 僕が反論してきたのが意外だったのか、少しの間、黙っていたが、


「は?ウケるwwなに反論してきてんの?アンタはさ、

 空気なんだよ?空気が反論すると思う?しないよねwwほら、さっさとどいて。邪魔」

 と言い、彼女は教室へ入っていった。


 な、なんだよアイツ。てか分かってはいたけど僕ってここまで人権なかったんだな。


 今日はいつもと違い、オカシイ。いつもの僕ならより悪化する反論なんて行為は絶対にしないのに、今日はなぜだか力が湧いてくるように、立ち向かう勇気が湧いてくる。


 あれ?もしかしてこれって、勇者とか、そういうのになれる前触れじゃね?僕、勇者になれんの?やったぁ。巨乳の仲間に囲まれてハーレム作れるわ。あ、でも貧乳属性でも僕はイケる派だからウェルカムだよ?などと馬鹿なことを考えながら、教室へ入った。


 教室へ入ると同時に、水の如く流麗に、バレリーナの如く華麗に自分の席へ向かい、誰にも気づかれることなく座った。


 この技は、以前教室に入った瞬間に濡れ雑巾が顔に投げつけられるというイジメを受けており、それを回避すべく、編み出した技だ。


 その名も「流麗座り」。いいネーミングセンスだろ?

 いや、そのまんまやないかぁーい!


 などと、ボケとツッコミの一人二役を演じていると、近くの女子の会話が耳に入った。


「ねぇ、聞いてよ。さっきさ、あの〜、名前なんだっけ?ほら、空気だよ空気。」


 喋っていたのはさっきぶつかってきた女子と、クラスカーストでも上位を占める女子たちだった。


「あぁ、え〜と、和正だっけ?」


 いや、和人だよ。誰だよ和正って、小〇か?小〇和正か?雨上がりの空でも見ようか?


「そうそう!和正!そいつがさ、さっきさ、私にぶつかってきてさ、謝りもしないで逆ギレしてきたんだよ?ひどくなぁーい?」


 いやちげーよ。和人だよ。てか、ぶつかって来たのはそっちだろ。


「え、何それひどぉーい。」

「あいつは空気なんだから発言権なんてないのにね。」

「そうそう。あいつは空気なんだから私たちに従ってたらいいんだよ。」

「ほんとだよね。」


「ねぇ、だったらさ、あいつの家に今度なんかしない?」

「なんかって?」

「んー、例えば落書きとか?」

「いやいや、もっと大きくいこうよ!」

「大きく?」

「じゃーん、見てこれ」

「何それ?花火?」

「そう。文化祭の実行委員に友達いてさ、後夜祭で使う打ち上げ花火余ってるって言ってたから貰ってきたんだよね。これをさ、あいつん家に打ち込むって言うのは?」

「いいねぇ。」

「何それ、楽しそう!」

「それあり!」


 いや、ありじゃねぇよ。犯罪だわそれ。てか、俺ここにいるんだぞ。


 あ、そうか。僕の「流麗座り」のおかげで誰にも気づかれていないのか。僕ってすげぇ。これマジで勇者に成れるレベルじゃない?

っと、話が逸れてしまった。

んで、なんの話しだっけ?

あぁ、そうか。花火の話か。


たく、黙って聞いていれば、ペラペラと、ターゲットの真ん前で堂々とイジメの計画話してんじゃねぇよ。おっp揉みしだくぞ!あ、やべ、つい欲望が出てしまった。今のは聞かなかったことにしてくれ。


「え、でもそんなことして、もし家に燃え移ったりしたらやばくない?」


 お、あんなバカ女たちの中にも少しはマトモなやつがいるじゃないか。


「大丈夫、大丈夫。どーせあいつが死んでも誰も悲しまねぇよ。」

「あぁ、それもそっか!」


 全然マトモじゃなかった!



「それにあいつの親なんて、きっとどうしようもねぇヤツらだろ?別に死んでも誰も困らないって。」



 その言葉を聞いた瞬間、僕はカチンときた。僕のことをバカにするのはまだ許せる。でも母さんや、父さんを悪く言うのだけは許さない。

「おい、」流石に我慢が出来なくなり、反論しようとした瞬間。


「や、やめなよ。そ、そういう話。」

 誰かがそういった。


 その瞬間、騒がしかったクラス全体が一瞬にして静まり返った。


 クラスでは空気扱い、ゴミ以下の価値しかない僕を庇ったのだ。当然の反応だ。


「は、はぁ?何言ってんの、幸知(さち)。まさかあんた、あの空気を庇う気?」


 僕を庇ったのは、宮村 幸知(さち)という女子だった。彼女は昨日の帰り道で、僕に話しかけてきた女子だ。


「え、い、いや、そういう訳じゃなくて……。」

「は?じゃあ何よ?」

「ほ、ほら、ほ、放火とかは犯罪になっちゃうからさ、止めといた方がいいんじゃないかなって、あはは、、」

「え、犯罪?そうなの?」

「う、うん。最悪死刑になるらしいよ。」

「え、ねぇそれやばくない?」

「ねぇ、それならやめとこうよ。」

「う、うん。そうだね。教えてくれてありがとうね、幸知」

「う、うん。どういたしまして……」

 そう言って彼女は下を向きながら自分の席へ戻って行った。


 チラッと僕は彼女を見ると、彼女は何かを口ずさんでいた。


「おえんささえ?なんて言ったんだろ。」


 唇を読んでみようとしたが無理だった。


 はぁ、僕を助けてくれた訳じゃなかったのか。馬鹿だな僕は。かつての友達だからって少し期待しちゃったじゃないか。やっぱりこのクラスには僕の味方は1人もいないんだ。何を期待してたんだ。


 クラス内は一瞬静まり返ったが、彼女が僕を庇った訳では無いと分かると、また、いつものように賑やかになった。


 すると、今度は教室に、朝、僕を襲ってきた連中が入ってきた。


 これぞ世にいう一難去ってまた一難か。うん。嫌な予感しかしない。


「いやぁ、まじ最悪だよな。」

「それな。誰だよチクッたやつ。マジムカつくわ。」

「それよりも和人だよな。なんだよ、急に反論してきやがって。」

「ほんとな。あいつ舐め腐ってんな。」

「お、噂をすれば、あいついんじゃん。」

「あ、ほんとだ。へへへ、じゃあ一発喝入れますか。」


 ほらきた。やっぱり嫌な予感が当たったじゃないか。


「おうおうおう、和人くんよ、何のうのうと学校来たんだ?あ?」

「僕が学校に来てたら行けないのかい?」

「あ?また反論かよ。なあなあ、お前立場わかってる?」

 僕の頬を掌がペチペチと叩く。

「僕、君たちに何かした?」

「は?今更何訳わかんねぇ事言ってんだよ!」

「バチンッ」

 強烈な平手打ちが僕の頬を襲い、椅子に座っていた僕は衝撃に耐えきれず、椅子からずり落ちた。


「キャア!」


 それを見ていた女子たちが悲鳴をあげる。


「クッ、痛った。」

「へ、へ、へ、お前はそうやって這いつくばってればいいんだよ!」


「うおぉぉおぉぉ!」

 僕は雄叫びと共にすぐに反撃にうつる。


 僕の反撃を予想していなかったのか、僕の右ストレートは綺麗にヤツの頬にささった。


 すると、それを見ていた取り巻きたちが、僕を取り囲むようにして襲ってきた。


「この野郎、やりやがったな!」

「死ね!クズが!」

「てめぇは黙って殴られときゃいいんだよ!」

「ったく。痛ってぇな!この野郎!」

 僕が殴ったやつもすぐに僕を殴ってきた。


 僕はこの不利的状況を打開する策は当然なく、サンドバックのように、ただ殴られ、蹴られの繰り返しだった。


「お、おい!」

 そんな声がして、一瞬僕への攻撃が止んだ。


「あ?なんだよ堅守(けんじゅ)?お前もこいつを庇うのか?あ?」

「い、いや。そういう訳じゃなくて……。ほ、ほら、あんまり強くやりすぎると死んじゃうかもしれないからさ、ちょっと手加減してやれよ?こ、壊れたらストレス発散もできないだろ?」

「それもそうか。助言ありがとな。程々に痛めつけるわ。」


 な、なんだよそれ。お前もやっぱりそっち側の人間なのかよ。

 てか、お前ら程々って言葉知ってる?これのどこが程々なんだよ。

 さっさと終わってくれ。


「おい?聞いたか?和人。お前を助けるやつなんてどこにもいないんだよっと」

「グハッ」

 いい蹴りが僕の腹にくい込む。


「さ、HR始めるぞ〜、」

 そう声がして、担任が入ってきた。

 よし、とりあえずこれで一旦は収まる。

 そう思ったのもつかの間、


「な、お、おい。お前ら、や、やるのは程々にしとけよ?」


 な!止めないのかよ!このクソ教師!それに、クラスのやつらもだ。なんでほかの教師を呼びに行かない!そうか。こいつら、自分が標的になるのが怖いのか。だから止めにも入らないし、呼びにも行かないのか。


「グハッ」


 蹴りが鳩尾に入り、気持ち悪い感覚が全身を包む。

 僕は激痛のあまり、腹を抱えた状態でうずくまり、動かなくなった。


「お、おい。死んじまったんじゃないか?」

「おい。死んでねぇよな?」

 僕の生死を確認しようと、顔を覗き込む。


「ウッ、」


 痛さに悶える僕の顔を確認すると、

「だ、大丈夫、死んじゃいねぇ。」

「今日のところはここまでにしてやるよ。死んでもらったら俺らのストレス発散も出来ないしな。」


 そう言って朝のいじめは幕を閉じた。


 くっそ。痛てぇ。あいつら容赦なく僕をリンチしやがって、覚えてろよ。

 それにしても先生や生徒達は腐ってるな。みんな自分を守ることで精一杯で見て見ぬふりをする。

 この世界全てが腐っている。


 そうか。この世界には僕の味方は1人もいないんだ。こんな世界にいても僕は幸せになれない。


 だったら、()()()()()()()()()()()()()()()()


 僕の邪魔をするやつは殺してでも、幸せを掴み取る。


 僕は心からそう誓った。


 その時


「ガシャン。」

 突然クラスの前後にある扉が勢いよく閉まった。

「キャッ!」

「おい、なんだよ。」

「と、扉が勝手に……」


 扉が勝手に閉まり、みんな驚きを隠せず騒がしくなった。


「誰だよイタズラしたやつは」

「おい、祐樹、お前か?」

「いや、俺じゃねぇよ。」


 教室内は僕が教室で倒れているのにもかかわらず、この現象に目を向け、イタズラと判断し、犯人探しが始まった。


 おいおい、ここに人間はいないのかよ。


「おい!この扉あかないぞ!」

 そう誰かが叫んだ。

「ほんとだ、開かない!」

「え?どういうこと?私たちここから出れないの?」

「ねぇ、開けてよ!」

 ドンドンとドアを叩いたり、ドアを外そうとするもダメだった。

 僕はふと外を見た。

「え?」

 なんと、外は真っ白。何も見えない。

 みんなドアに目を向け、外に注意を向けていないが、僕らは異常なことに巻き込まれている。そういうことだけは明らかだった。


「ゴゴゴ、、」

「な、なんだ?」

 突然大きな揺れが僕たちを襲う。

「キャア!なに?この揺れ?」

「お、おい、なんだよ、これ。」


 クラス中が騒ぎ出す。


 次の瞬間、目の前は白くなり僕の意識は眠りに落ちるように自然と切れた。


この作品を読んで、面白い、また読みたいと思ってくださった方は、よろしければ、ブックマークの登録、星をつけてくださると嬉しいです。また感想も受け付けておりますのでどしどし送ってきてください!

尚、誹謗中傷などは私の豆腐メンタルをズタボロにするので辞めていただけると幸いです。


いやぁ、大変長らくお待たせいたしました。ここまで間を開けるつもりはなかったんですけど、書いていた原稿が2回ほど消えるという災難に見舞われ、やる気がガン下がりになったり、登場人物の名前が納得いくものが見つからず、ずっと悩んでいたりと、様々なことが重なりに重なり、ここまで遅くなりました。大変申し訳ないです。

そして、また、読みにくい文章を世に出してしまったなと、恥ずかしい限りです。じゃあ出すなよ!って話ですよね?しょうがないじゃないですか、これが語彙力皆無の私の全力なんですから。


この作品を読んでくださっている方は、和人くん成長と共に、私の文章力の成長も一緒に楽しんでくださると幸いです。

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