第16話 装備一新! イオスはラルゴリンの盾を手に入れた!
ザテラ38を訪れた翌日――
俺たちは『マグダリア商店』を訪れた。武器を受け取るためだ。ザテラ38から帰ってきた翌日、装備の完成を知らせる伝言が宿に届いていたのだ。
ラルゴリンの盾と――
ブレンネン・ティーゲルのローブだ。
「いらっしゃいませ――あ、イオスさまとミーシャさまですね!」
カウンターの店員が俺たちを見るなり背筋を伸ばす。
……なんかVIP対応感があるな……。
「装備ができております。店長を呼んできますので少々お待ちください!」
店員は引っ込むと、奥から店長のマグダリアを連れてきた。
マグダリアが俺の顔を見るなり、にやりと笑う。
「いいもんができたぜ」
店員がカウンターにふたつの装備を置く。
ひとつ目は蒼く輝く盾――氷衛士のラージシールド。
ふたつ目は真っ赤なローブ――炎虎ローブ。
どちらもB級の素晴らしい品だ。俺たちの防御力を大きく高めてくれるだろう。
「どうぞ」
店員から受け取ったナイフで指を切り、装備に己の血を押しつける。血判――これで名実ともに装備は俺たちのものになった。
俺はラルゴリンの盾を手に取る。氷属性の装備だけあって、少しばかりヒヤリとした感覚を覚える。
あの夏の雪山を思い出す。
ラルゴリンと対峙した恐怖も、その背中に炎の短剣を突き刺した高揚感も。
そんな強敵ラルゴリンの鉱石――A級冒険者パーティー『宵闇の光刃』も欲した一級品。装備するだけで身が引き締まる思いだ。
だが、ためらうことも臆することもない。
俺こそがラルゴリンを倒したのだから。
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名前 :イオス
レベル:27(剣聖)
攻撃力:424(+510)魔狼ブロードソード
防御力:316(+535)氷衛士のラージシールド/青火鳥チェインメイル
魔力 :262
スキル:シュレディンガーの猫、剣聖、ウォークライ、強打Lv3、闘志Lv3、速剣Lv3、忍び足Lv5、暗殺術、バックスタブ、魔術(炎)Lv5、焦点具不要
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防御力が95も上がってしまった。前に装備していたジャイアント・リザードマンの装備はC級装備だったので比較にならないほどの戦力向上だ。
……おまけにラルゴリンの盾には固有スキルまでついている……。
これはかなりの強さが期待できそうだ。
横から声が聞こえてきた。
「着替えてきたけど、どうかな?」
姿を見せたのはミーシャだ。印象がガラッと変わっている。
「赤いね」
さすが炎の虎だけある。今までミーシャはずっと黒っぽい装備だったので派手さが違う。
「赤いねって! もうちょっと情緒的な感想をおくれよ! まあ、赤いけど!」
そう言って、ミーシャがけらけらと笑った。
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名前 :ミーシャ
レベル:27(魔術師)
攻撃力:242(+100)凶妖精スタッフ
防御力:242(+310)炎虎ローブ
魔力 :410(+240)凶妖精スタッフ
スキル:4大を統べしもの、魔術(水)Lv1、魔術(火)Lv1、魔術(風)Lv1、魔術(地)Lv1、魔術(無)Lv1、魔力回復Lv1、強打Lv1、パリィLv1
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ミーシャの防御力も100を超えて上がっている。
これはかなり安定感があるな。
わーわーと俺たちが話していると、マグダリアが横から声をかけてきた。
「どうだい? 装備の感じは?」
「すごくいいです! ありがとうございます!」
「仕事でやったんだ。礼を言われる筋合いはないさ。むしろ、俺のほうこそありがとうかな。ラルゴリンの装備なんて一生に一度の仕事だからな!」
マグダリアが機嫌良さそうに笑う。
「いい装備だ、大事にしてくれ。一流の冒険者に持ってもらえるのなら作った甲斐があるってもんだ」
「一流って、そんな!」
「何を言っているんだ、お前? その若さでB級装備に身を包んで、ネームドの装備まで持っている。それで一流じゃなけりゃ、なんなんだ? 他の連中が五流になっちまうだろ」
その言葉はすとんと俺の腹に落ちた。
……言われてみれば、確かに俺たちはもうそんなレベルなのかもしれない。たぶん、一流と言っても端っこのほうだろうけど。
俺とミーシャは顔を見合わせて、ふふっと笑った。
そんな俺たちの様子を見て、マグダリアがぼそりとつぶやく。
「……どうでもいいけどさ、お前たち、人の店でイチャつくなよ。胸焼けするだろ」
俺たちは店長に向かって大声で抗議した。
「「いやいやいやいや! イチャついてないですから、ほんと!」」
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マグダリア商店を出てから、俺たちはアンバーマーのダンジョンに向かった。
本職の装備強化が終わった以上――次は本職のレベルアップだ。
「……うーん、C層にしようかなと思っている」
前にB級モンスターであるブレンネン・ティーゲルを3人で仕留めているので、おそらくはB層でもやれなくはない――俺もミーシャもさらに強くなっているのだから。
だが、決して楽勝ではないだろう。
「……まだ危ない気もする。だから、安全性を考慮してC層で乱獲レベリングをするべきかな」
そんなわけで俺たち2人と1匹の乱獲レベリングが始まり――
3ヶ月が経った頃、ついにレベル30に到達した。
「よおおし!」
「やったー!」
レベル30か……。特に意味はないのだけど、大台に乗ったなあ……と少しばかり感傷的な気持ちになってしまう。
そのとき、ミーシャがこんなことを言い出した。
「よーし! 狙っていたスキルを取るぞ!」
「え? 魔術(炎)レベル2とか?」
「うぐー、ぴぽー」
ぴぽー?
ミーシャが口を楕円形に開き、ふらふらと左右に揺れた。目は焦点があっておらず、まぶたがぱちぱちと開閉している。
「先生、イオスくんが、いじめます!」
「え!?」
俺は何をしたんだ!?
「『俺は魔術(炎)レベル5を持っているけど、お前はレベル2を取るんだ? 俺はレベル5を持っているけど』と含んだ発言でミーシャさんをいじめてきます!」
「してない! してない!」
いけない! 不用意に発言するとミーシャのトラウマを抉ってしまう!?
「あはは! ごめんごめん、イオス。冗談だよ。お約束ってのは、やっておかないと消化不良になっちゃうからさ!」
ミーシャはひとしきり笑った後、
「取るのは魔術のレベル2系統じゃないよ。もっと面白いものを取るんだ!」
「面白いもの?」
「にししし! 秘密兵器だから、秘密! いつか明らかになるのを楽しみにしておいてよ!」
……なんか、こんな会話を前にもしたような気がするんだけど――
なんの話題だったかな……。
「ほーら、次に行くよ!」
すたすた歩いていくミーシャの後を俺は慌てて追いかけた。
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名前 :ミーシャ
レベル:30(魔術師)
攻撃力:260(+100)凶妖精スタッフ
防御力:260(+310)炎虎ローブ
魔力 :440(+240)凶妖精スタッフ
スキル:4大を統べしもの、魔術(水)Lv1、魔術(火)Lv1、魔術(風)Lv1、魔術(地)Lv1、魔術(無)Lv1、魔力回復Lv1、強打Lv1、パリィLv1、魔力電池
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