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第21話 剣聖イオスvs英雄フィラルド(下)

シュレ猫2章2部どうでしたか? 連載継続のためにも、書籍2巻(09/30発売)の購入をお願いいたします!

 雷鳴のような斬撃が俺を切り払った。


「うぐ!」


 こらえきれずに俺は吹っ飛び、地面にごろごろと転がる。

 フィラルドが小さく息を吐き、空を見上げた。


「日も傾いてきた。終わりにしよう」


「……すみません、フィラルドさん」


「うん?」


「時間を取らせちゃって」


「ははははは! 気にするな、誘ったのは俺だ。俺だって楽しかったよ。お前を調べるためだ、とか言ったけどな、あれは半分嘘だ。活きのいい若いやつと剣を合わせるのが趣味なんだよ!」


「そうなんですか?」


「若いやつらがね、必死な目で俺に食らいついてくるのが好きなんだよ」


「……俺の目、必死でした?」


「必死も必死。五本の指に入るくらいは必死だったな」


 フィラルドはそう言って、あっはははは! と大笑いした。


「だけどな、粘り強さってのは冒険者にとって大切なんだよ。勝負が決まっていても投げ出さない心の強さと同じくな。ワンチャンはどこかに転がっているものさ」


「……今回は転がってなかったですけど」


「そうだな。なかったな!」


 またフィラルドが、はっはっはっはっは! と大笑いする。


「でも、まあ、本当に先が楽しみだよ。俺が戦った中だと上から2番目くらいに筋がいい」


「……ありがとうございます」


 その言葉は俺の胸にみた。

 少なくとも俺の積み上げたものは英雄の評価――その端っこには届いたらしい。


「さて、と……そろそろ帰ろう」


 フィラルドが倒れている俺を見る。


「立てるか?」


「……立てますけど、まだ身体が重いです……」


「もう少し休むか。俺は近くを歩いてくる。何かあれば大声で呼んでくれ」


 そう言うと、フィラルドは飛竜バスタードソードを回収して歩き出した。

 遠のいていく足音を聞きながら、俺は、はあ、と息を吐く。

 祭りは終わった。

 遠のく足音があれば、近づいてくる足音もある。

 ミーシャがニャンコロモチを抱えたまま、倒れている俺の横にしゃがみ込んだ。


「にししし! お疲れ様!」


「ホントね、疲れたよ……」


「楽しかった?」


「夢のような時間だったよ」


 その言葉に偽りはなかった。学生時代から『宵闇の光刃』は有名だった。彼らの活躍は俺たち冒険者の卵たちの胸を焦がしたものだ。

 彼らはみんなこう思っている。

 いつかどこかでフィラルドたちに出会えたら最高だ!

 もちろん、俺もそんな学生たちの一人だった。

 出会えただけでも最高なのだ。

 なのに、こうやって剣まで交わせるなんて!


「……学生時代の夢が叶った感じだな」


「よかったね!」


「ああ、本当によかった」


「いつかは勝てそう?」


「……それ、今訊く?」


「にししし! 訊きたい!」


 ここまで打ちのめされた。完敗もいいところだ。そんなざまで、いつかは勝てる、なんて言えるものでもない。言える資格もない。

 だけど――

 俺は吐息とともに言葉を押し出した。


「勝つよ」


 俺はそう言った。

 きっとあの人は、その言葉を待ち望んでいるだろうから。


「ま、いつかね、いつか……本当にいつか……」


 ……少しの弱音をこっそり添えるくらいは許してもらおう……。

 そんな俺をミーシャがにやにやとした顔で見る。


「いつかですむかにゃー?」


「どういう意味?」


「ラルゴリン戦があるでしょ?」


「……あ」


 しばらく争わずにすむと思ったけど、そうか、そこがあったか。俺は現役最高峰パーティー『宵闇の光刃』と獲物を奪い合って勝たなければならない。

 あの強さを垣間見た後だと身の程知らずもいいところだけど……。


「へいへい、剣聖ビビってる、ビビってるぅ!」


「ま、まあ、ここまでボコられると、さすがにな……」


「そう慌てなさんなって。獲物の奪い合いは力比べじゃない。わたしたちだって勝つチャンスがあるかもよ?」


 確かに。

 ……あの双剣使いの女を出し抜いてブレンネン・ティーゲルも狩れた。頑張れば何とかなるかもしれない。

 バックスタブに炎の短剣。

 俺たちにはラルゴリンを殺す矛があるのだから。

 そして、その事実を誰も知らない――


「力じゃ勝てない! でもさ、いっぱい喰わせてやろうよ!」


「……そうだな」


 そこで俺はミーシャの顔を見てにやりと笑った。


「軍師ミーシャの知略に期待するよ」


「にし!?」


 げ、仕事振られた!? みたいな感じでミーシャが固まる。


「たはははー、ま、頑張るよ!」


「ああ……頼む。俺をせいぜいこき使ってくれ。根性だけはあるつもりだからさ」


 俺はミーシャから視線を外し、空を見上げた。

 もうすぐ、この夏の山に雪が降る。


 ――いよいよ競争の始まりだ。


この辺の、主な加筆エピソードは――


・vsフィラルド戦でイオスが剣聖スキル全開放で挑む


ですね。他にもありますが。


ただ一度かもしれない英雄に胸を借りるチャンス! 出し惜しみなく挑むイオスの意地を楽しんで欲しいですね。


なかなかラノベの打ち切り回避も大変なので、ご協力いただけるとありがたいです。

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shoei
― 新着の感想 ―
[一言] 楽しく読ませてもらってます! 一番筋が良かった人は今後出てくるのかな? 色々続きが気になりますね。
[良い点] イオスに対するフィラルドさんからの評価高くてよかったですね!! ラルゴリン戦でのミーシャの作戦にも期待ですね!! [一言] ラルゴリン戦を制するのは誰か、楽しみです!!!
[一言] ミーシャの知略が凄いからこそ打つ手があるって見えるんよね。 悪く言うがイオスも割と脳筋の傾向にあるから(戦士系統全般に言える事でもあるけど) 四大よりも知恵系統のスキルあったらもっと化けて…
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