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剣を極めしもの

----------------------------------------

名前 :イオス

レベル:27(戦士)

攻撃力:370(+510)魔狼ブロードソード

防御力:289(+440)大緑鱗スケイルシールド/青火鳥チェインメイル

魔力 :235

スキル:シュレディンガーの猫、剣聖、ウォークライ、強打Lv3、闘志Lv3

----------------------------------------


 Lv27になった俺はスキル『剣聖』を選んだ。


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剣聖

効果時間:常時

リキャスト:なし

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・攻撃力+150(武器が剣の場合)

・攻撃力+25%(武器が剣の場合)

・上位職業『剣聖』に転職可能(Lv20以上)

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 その瞬間、俺のステータスが一瞬で向上する。

 攻撃力:1288

 防御力: 729

 素の攻撃力が4桁を超えた。

 だが、これで終わりじゃない。俺はレベル20を超えているので戦士から上位職業『剣聖』への転職が可能になる。

 違うスキルツリー――例えば、戦士から斥候のようなケースだとその場での転職はできないが、同じスキルツリーに存在する職業ならばその場で転職できる。

 俺は『剣聖』へと転職した。

 戦士では1レベルに付き10ずつ上がっていた攻撃力は13へ。防御力は7から8へ。魔力も5から6へ。


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名前 :イオス

レベル:27(剣聖)

攻撃力:451(+510)魔狼ブロードソード

防御力:316(+440)大緑鱗スケイルシールド/青火鳥チェインメイル

魔力 :262

スキル:シュレディンガーの猫、剣聖、ウォークライ、強打Lv3、闘志Lv3

----------------------------------------


 剣聖のスキル補正を加算すると、

 攻撃力:1389

 防御力: 756

 になる。これに闘志Lv3による『攻撃力+10%』の補正が入るので攻撃力は1528まで上がる。

 1528!

 それはとんでもない火力だ。

 だけど、その計算は決して机上の空論ではないことを俺は――俺の身体は理解している。

 なんだろう。

 この全身を駆け巡る力は。剣を極めしものの到達点が今、この俺の身体に宿っている。


「え、イオス――ど、どうしたの……?」


 俺の変化を感じ取ったのだろうミーシャも声を震わせている。

 俺はミーシャの頬をそっと撫でた。


「剣聖になったんだ」


「……え……!?」


「勝つよ」


 俺は、たん、と地を蹴った。

 一瞬だった。

 一瞬で俺は山羊頭との距離を詰めて脇を通り過ぎた。そして、そのすれ違いざまに――

 山羊頭が悲鳴を上げた。

 すれ違いざまの一閃で俺は山羊頭の脇を切り裂いた。

 恐ろしい切れ味だった。まるで岩を叩いているかのような山羊頭の肌がこうも柔らかいとは。これが攻撃力1528の威力――

 間合いを一瞬で詰めたのは剣聖の特殊スキルだ。


--------------------------------------------------

縮地(前)

効果時間:一瞬

リキャスト:任意

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・敵がいる方角めがけて超加速が可能。

・発動のたび魔力を消費する。

--------------------------------------------------


 特殊スキルは『剣聖』という職業に最初からついてくる。

 縮地――

 このスキルは爆発的な超加速を可能にするスキルだ。一瞬で相手との間合いを詰めることができる。

 スキル説明にあるとおり敵のいる方角にしか使えないが。

 それは剣聖、決して退かず敵を斬り捨てる覚悟の現れだ。

 俺は山羊頭の後ろへすり抜けたので、急いで反転――加速する。


「縮地」


 一瞬で山羊頭の背中へと近付く。

 まだ痛みで苦しんでいる山羊頭の背後を剣で切り裂いた。


「グギャアアアアアアアアアアアアアアア!?」


 山羊頭が絶叫した。

 ぶぅん! と腕を振るうが、もうすでに俺はいない。走り抜けて、さらに次の縮地を展開する。

 縮地、縮地、縮地。

 そのたびに山羊頭の負傷が増えていく。

 俺の剣は山羊頭をとても簡単に切り裂いた。さながら柔らかくなったバターを刻むように。

 ざく、ざく、ざく。

 あんなに硬かったのに――

 こうも変わるものなのか。


「イオス……すごい……」


 そんなミーシャのつぶやきが聞こえる。

 その声のどこにも不安がなかった。ミーシャもまた安堵を感じてくれている。勝利を見てくれている。

 それが俺には嬉しかった。

 安心してくれ、ミーシャ。

 俺は必ず――勝利を君に捧げよう。


「ニニャニャー!」


 よろよろと立ち上がったニャンコロモチも叫んでいる。

 このまま進めても間もなく山羊頭は倒れるだろう。


 だが――

 それだけだと俺の気持ちがおさまらない。

 ミーシャやニャンコロモチがあれだけ痛めつけられたのだ。このまま削り殺すのでは味気ない。


 俺の全力を叩きつけてやろうじゃないか。


 俺は縮地の連打を止めて山羊頭の前に立ち止まる。もう山羊頭はぼろぼろだった。いつ崩れ落ちてもおかしくはない。

 だが、そんな終わりを許すつもりはなかった。

 俺の怒りを受け止めろ!


「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」


 俺は咆哮した。

 怒りを吐き出すように。そのすべてを力に変えるかのように。炎のような感情が俺の全身に燃え上がる。

 同時、リキャストが可能になったウォークライが発動した。

 俺の攻撃力と防御力が20%増加する。

 そして――


「縮地!」


 たん、と俺は地面を蹴った。これが最後の縮地だ。

 さらに、俺はもうひとつの特殊スキルを発動する。


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剣魂無双

効果時間:一瞬

リキャスト:1時間

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・縮地中のみ発動できる

・発動者個人の防御力を攻撃力に加算する

・リキャストが終わるまで発動者個人の防御力はゼロとなる

・【転化した防御力 / 100】回の連続斬撃をおこなう

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 剣魂無双は『防御力を攻撃力に転化してX回の斬撃』を見舞う剣聖の切り札だ。

 超加速からの超攻撃力による高速連続斬撃。

 攻撃特化に振り切った性能だが、もちろんデメリットはあり発動後は個人ステータスの防御力がゼロになってしまう。

 まさに諸刃のスキル。


 ――問題はない。


 今この瞬間にすべてを決するからだ!

 俺の剣に力が宿る。

 俺の素の防御力316がそのまま攻撃力に加算されて451から767へ。さらに武器の攻撃力を加算して1277。


 それに剣聖スキルに闘志Lv3、ウォークライの補正が入り――

 2354!

 2000を超える超火力!


「グオオオオオオオオオオオオオオオオオ!」


 山羊頭が縮地で近付く俺めがけてこぶしを振るう。

 慣れてきたのか? たまたまなのか?

 そのこぶしは正確に俺の姿をとらえていた。

 ……やるじゃないか。

 しかし!

 俺の剣が山羊頭の右腕を切り飛ばした。飛ばした? 違うな。すべては一瞬のこと。またたきほどの時間。飛ぶ間もない。俺はそれよりも早く山羊頭のふところに飛び込む。

 転化した俺の防御力は316。

 よって許された連続斬撃は100で割って切り上げた4回。

 すでに1発はお見舞いしている。


 ならば――残3発!


「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」


 斬! 斬!

 俺の素早い斬撃が右から左から山羊頭を切り裂く。

 終わりだ!


 ここで俺は強打Lv3を発動する。5%の補正が入って――

 攻撃力は2472!

 俺の剣が山羊頭の胴体を両断する。

 山羊頭の横をすり抜けて俺は足を止めた。振り返る。すべては縮地中の出来事。俺と山羊頭が交錯した刹那の出来事。

 ようやくそこで――時間が動き始める。


「オオオオアアアアアアアアア!」


 山羊頭が絶叫した。その両腕をあげて頭を押さえようとするが、右手がずるりと落ちる。俺に刻まれた身体がバランスを崩す。

 そして――

 ずっと。

 その身体がずれていく。

 そこまでだった。

 山羊頭の身体が狼たちと同様、霧のように霧散していく。山羊頭の絶叫が残響のように響き――消えた。


「……終わったか……」


 俺ももう限界だった。

 余裕のように振る舞っていたが――そもそも剣聖になる前の時点でダメージはいっぱいっぱいだった。

 俺はよろよろとした足取りでミーシャへと向かう。


「約束どおり、勝ったよ」


 ミーシャは目からこぼれる涙を拭いながら俺を見上げた。


「……おめでとう、イオス。なったんだね……剣聖に。本当に、あなたは――」


 どん底にいた俺を支えてくれたミーシャが、今の俺を誇らしく思ってくれている。

 それが嬉しかった。

 俺は君の献身に少しは応えられたかな?

 君が与えてくれたものを少しは返すことができたかな?


「ミーシャ、君が支えてくれたから、ここまでこれた。今までありがとう。これからもよろしく」


「うん! こちらこそ!」


 俺のさしだした手を笑顔のミーシャが握ってくれた。



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[一言] >>ぶぅん! と腕を振るうが、もうすでに俺はいない。走り抜けて、さらに次の縮地を展開する。 >>縮地、縮地、縮地。 >>そのたびに山羊頭の負傷が増えていく。 >>俺の剣は山羊頭をとても簡単に…
[気になる点] >戦士では1レベルに付き10ずつ上がっていた攻撃力は13へ。防御力は7から8へ。魔力も5から6へ。 ステータスの上昇は剣士の場合はいくつ?
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