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レベル21へ! (グレイルもレベルアップ!)

 俺たちはE層でしばらく経験値稼ぎをしてから地表へと戻った。

 冒険者ギルドに戻って戦利品を売り払う。


「えーとですね……25万ゴールドですね」


「はい?」


 驚いた俺は思わず問い返した。

 1回の狩りで25万ゴールド? ちなみに、この売値に『錬金の石』は含まれていない。

 E層の狩りだけでそんなに儲かるのか……。


 理由は『魔石』だ。


 E層で手に入れた魔石が1万弱で売れるのだ。さらに俺はシュレディンガーの猫のおかげで、最初の1匹目は必ずドロップアイテムが出るので、それなりに稼ぎやすい。


 ふところが温かくなった俺とミーシャは気持ちよくなって少しお高いレストランに入って祝杯を挙げた。


「「かんぱーい!」」


 機嫌よく声を上げ、手に握ったジョッキを、かん! とぶつける。

 俺たちはビールをごくごくと煽った。


「いやー、狩りの後の一杯はおいしいね!」


「本当だな」


 出されてくるおいしい食事に俺たちは舌鼓をうった。


「1回の狩りで25万はおいしいな」


「そうだねー」


「今日だけで――錬金の石を入れたら36万か。3000万の借金、意外と早く返せるんじゃないかな……」


「にしししし! そうだね、そうだね!」


 ただ、と言ってミーシャは指をくるくる回した。


「E層にいけるのは3日に1度だけだけどね」


「ああ、そうか……」


 それは瘴気のせいだ。

 わだかまる瘴気がモンスターを産み出す。濃厚な瘴気は人体を弱らせる。低層でグレイゴーストを1体倒すだけなら毎日通っても問題ないが、本気で潜った後は数日間の休養が推奨されている。


「それでもさ、悪くないんじゃないかな。3日に1度でも1日あたり8万の報酬だ」


「うんうん! さすがE層だね!」


 機嫌よく相づちを打つミーシャに俺はこう言った。


「本当にありがとう、ミーシャ」


「え?」


「だってさ、ミーシャの言うとおりだよ。装備を揃えて早く下層に行ったほうがいいって。君が俺を導いてくれたんだよ」


「いやあ……はは……照れるねえ」


 ミーシャが癖のある髪を片手ですき上げる。


「今日は褒め殺しだねぇ! なになに、ミーシャさんの偉大さにようやく気がついた?」


「気がついた」


「こらこら! そこはスカすところでしょ? そこまでは言ってない、とかさあ!」


 そんなことを言いながら、ミーシャはまんざらでもなさそうな様子だった。


「ま、感謝してくれるなら嬉しいけどねー……にししし! ぜひミーシャさんの知略を利用してくれたまえよ!」


「これからも頼りにしているよ、相棒」


 気分が高揚した俺たちは再びジョッキを掲げて、がちん! とぶつけあった。


 それから――

 3ヶ月。

 俺たちはダンジョンへと潜り続けた。E層で延々と経験値を稼ぎ、レベルは21にまで到達した。


----------------------------------------

名前 :イオス

レベル:21(戦士)

攻撃力:310(+510)魔狼ブロードソード

防御力:247(+390)高品質なラージシールド/青火鳥チェインメイル

魔力 :205

スキル:シュレディンガーの猫

----------------------------------------


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 ピプタットにやってきて2ヶ月。

 ついにグレイルたちは念願の6人パーティーとなった。


「はっはっはっはっは! よろしく頼むぞ!」


 機嫌よくグレイルは新規加入の3人たちと握手する。

 戦士が2人と狩人。

 今までの斥候と神官を組み合わせれば、まあまあバランスはいい。


(……ようやくだ。ようやく……俺の破竹の快進撃が始まる!)


 無能なイオスのせいで足踏みしてしまったが、それは仕方がない。

 これから取り返せばいいだけのこと。

 正直なところ、保有スキルはゴミみたいな連中で仲間になどしたくはなかったが――


(ふん、時間がもったいない。後で有能な連中と入れ替えればすむだけの話だ!)


 グレイルたちは最初の狩りに出た。

 F層でゴブリンを狩った後、グレイルはメンバーに提案した。


「E層に行かないか?」


 全員の目が泳ぐ。

 新規加入の戦士が口を開いた。


「……い、いや、まだ早いだろ? 今日が結成1発目だぞ? 連携とかまだまだで……装備もE層でやるには……」


「ふぬけてんじゃねえええええええ!」


 大声で叫び、グレイルは床を強く蹴った。


「俺にはちんたらちんたら進んでいる暇はねーんだよ! ランクを駆け上がらないといけないからなあ! お前らとは志が違うんだよ、志があ!」


 それから自分の胸をどんと叩く。


「安心しろ! 俺たちは前に5人でE層のモンスターを倒している! 俺は剣術スキルの持ち主だ! 俺に任せろ。よかったなあ、楽して稼げてよ? それとも何か? 前は5人でやれたのに、お前たちだと6人いても無理だってのか?」


 そこまで言われると、戦士たちも引けない。


「……わかった……まあ、無理ではないだろう……」


 不快げな様子でうなずいた。

 E層に降りたグレイルたちを待っていたのは1体のハンターリザードだった。


----------------------------------------

名前 :ハンターリザード/E

攻撃力:610

防御力:400

----------------------------------------


 対するグレイルの攻撃力は600。


----------------------------------------

名前 :グレイル

レベル:15(戦士)

攻撃力:600(剣術スキル込み)

防御力:315

----------------------------------------


「おい! 新入りども! ダメージソースは俺だ! 俺がやられたら終わりなんだから、お前らが前に出て引きつけろ!」


 顔を引きつらせて、新入りの戦士2人が前に出る。

 ハンターリザードは強かった。

 その爪の閃きで、しっぽの一振りで容赦なく戦士をすっ飛ばす。


「おらおら! 気合い入れろ! 気合い!」


 毒づきながらグレイルは隙をついてハンターリザードに斬り込む。

 だが、なかなか致命傷を与えられない。グレイル自身が被弾を恐れて、強く踏み込めないからだ。そのいらだちは吹っ飛ばされてばかりの戦士たちに向く。


(ったくよお! おとりにしか使えないんだから、せめてそれくらいはまっとうしろよな!)


 かなりの時間をかけて――


「おらあっ!」


 グレイルの一閃がハンターリザードを斬り倒した。


「お――終わった……」


 精も根も尽き果てた様子で5人のメンバーがぐったりと倒れる。

 一撃でももろに喰らえば無事ではすまない。そんな精神をすり減らす戦いだったのだ。

 もう今日の行軍は不可能だろう。

 だが、グレイルには問題なかった。ずたずたになったメンバーたちを見下ろしながら確かな手応えを感じていた。


(……くくく! いける! 少なくとも1体のハンターリザードなら倒せる! 経験値稼ぎがはかどるな!)


 それから1ヶ月。

 ついにグレイルに歓喜の時間が訪れた。


 グレイルのレベルが16になったのだ。


「あーはははははははは! ついにやったぞ!」


 全能感とともにグレイルは右手を突き上げた。


(イイイイイオオオオオオス! 俺はレベルが上がったぞ? お前はどうだ? クソスキル持ちのお前はひとりぼっちで15のままか? 15のままだろうな! また仲間にして欲しいと言って戻ってくるか? だが、もう遅い! 俺はこの新しい仲間たちとともに頂点を目指す!)


 この1ヶ月、危険だと渋るメンバーを無理やり連れ回して何度も何度もハンターリザードたちを倒した。

 その苦労が報われた。

 やはり俺こそがリーダー! 俺の言うとおりにしていればすべてがうまくいく!


「やろうぜ! これからよお、俺たちの成り上がりだ!」


 上機嫌に笑うグレイル。

 その背中を――

 疲労困憊な5人のメンバーが白けた目で見つめていた。


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shoei
― 新着の感想 ―
[一言] 哀れすぎて一周回って面白くなってきた
[一言] 結局イオス追放した意味なかったな
[一言] 3日に1度ってことはこの世界ダンジョンに泊まり込みで深い層に潜らないんですか?
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