31人目のクラスメイト どこに?
実話100%
確かあれは小3くらいのことだ。なんの時間だったかは覚えていないが、担任の先生が壇上で堂々とした笑顔を向けたことを覚えている。
「実は今、この教室の中に『31人目のクラスメイト』がいます。みんな、どこにいるか捜してみて」
マジで⁉ うおおおおお!
転校生のかくれんぼかと言わんばかりにクラスは沸き上がり、教室の隅から隅まで大捜索が行われることとなった。
「先生! 『31人目のクラスメイト』は、この教室にいるんだよね⁉」
「うん、そうだよ」
その言葉に再び皆のスピードが上がっていく。
我こそ一番に新しい顔を見つけようと、クラスのみんなが興奮混じりで必死に手を動かしていた。捜しているのは人間だってのに、大真面目な顔で机の中やお道具箱の中を開けて確認している同級生もいた。(笑) 今でこそクスッとしてしまうが、当時の私だって慌てて同じようなことをしていた。椅子の下を見たり、カーテンに隠れていないかめくってみたり。当時の小学3年生は、全てに対して真剣だったのだ。
「見つかった?」
「見つかりません……」
他の子も首を横に振っている。
先生は怒りも困りもせず、満足そうな顔で立っていた。とりあえず散らばっていた皆は席に戻ることにした。
あーあ。31人目のクラスメイト、どこに隠れているんだろう。
「答えはね。先生の、お腹の中です」
教室が静まり返る。
だが間もなくして、ええぇえええええええええ⁉ という嵐が巻き起こった。子どもというのは正直だ。驚いたらすぐ顔や声に出る。でも「そんなの分かるかい!」なんて抗議は一切なかった。純粋だった私たちは妊娠=神聖なものという認識を抱いており、恐る恐る先生の変わらない腹部を見つめていた。そして、驚きは次々におめでとうへの祝福へと変わっていった。
「今はまだお腹の中だけど、この子だって大きくなれば、みんなと同じ3年○組のクラスメイトです」
今となっては何でやねんとツッコミがちなとんでもない超理論だったが、幸いにして当時の私たちは「うおおおお!」とあっさり受け入れる綺麗な心の持ち主だった。
今でも思い出せるくらい、ある意味物凄いパフォーマンスだった。また、相手が私たちだったからこそ先生は上手く受け入れられたのではないだろうかとも思う。
高学年に向けて同じことをやってもその頃にはませた子がいそうだし、中学生にしたって「エッッッッ」という雑な感想で終わってしまいそうだ。さらにそれ以降の年齢の子なら「えぇ……」と困惑されてしまうだろう。やっぱり先生の命をかけたパフォーマンスは、無垢な小3だったから成功したのかもしれない。
その子ーー性別が分からない31人目のクラスメイトも、今やどこかの学校の生徒に成っているはずだ。うるせえババアなんて反抗期まっしぐらだったりするのだろうか。いや、今の子はそんな分かりやすい反抗なんてしないか……。
いいですか、貴方は、両親のみならず+30人のクラスメイトにあんなに祝福されながら生を受けたのですからね、だなんて無理に偉ぶった言葉を投げかけてみる。