まったりスローライフ異世界の闇
「お金が貰えるなら何でも。」
この返事が悪夢の始まりだった…
僕は親の仕送りだけで生活し、講義が終われば家へまっすぐ帰る生活を続けてきた。大学へ行く以外はほとんど家から出ない。
必要最低限の時間しか外へ出ない理由は、あと2年もすれば失われるであろうゲームへの時間に最大限費やすためだ。僕のレベルでは大手ホワイト企業への就職は難しいから。
ゲームソフトが入った段ボール箱を漁っていると懐かしいタイトルが目に入った。
-ようこそ もふもふの村-
家や店を大きくするという小さな目標はいくつかあるが、基本的には釣りをしたり虫を捕ったりと特に目的もなく自由に遊ぶタイプのゲームだ。
「懐かしいなぁ、今日は久しぶりにこれにするか。」
ソフトを差しゲーム機の電源を入れる。
ジジッ…
画面は真っ黒のまま。10年以上の間に埃でも溜まっていたのだろうか。10秒程すると画面に白文字が表示された。
『本当にもふもふの村に行きますか?』
『-はい-』
「こんな始まり方だったっけ?」
他に選択肢もないので僕はAボタンを押した。
「うわっ!!」
その瞬間、体が前に引っ張られる感覚とともに視界が真っ暗になった。
目が覚めるとそこにはもふもふの村の景色が広がっていた。
「ハハッ "本当に"ってそういうことかよ。」
次の瞬間、目の前には見慣れない真っ黒なマリモのような生き物がふわふわと浮いていた。
「久しぶりの新参者だな。この村の住民はそれぞれ役割があるのだが、"バック"という職に就かないか?報酬は飛び抜けていいぞ。」
「お金が貰えるなら何でも。」
まだ夢だと思っている僕の返事を聞き、マリモもどきはニヤリと笑った。
「では、これにサインを」
マリモもどきから渡された契約書にサインをすると、僕は真っ黒のマント姿に変わった。
「ついてこい。」
そう言うとマリモもどきは壁の中に入っていった。
僕は恐る恐る壁に右手を伸ばし、マリモもどきに続くと、壁の中は大きな工場になっていた。
そこでは青白い顔をした大勢の人が忙しなく働いていた。
「これは…?」
「労働内容は契約書に書いてあっただろう。よく読まずにサインをしちゃいけないよ。」
「もふもふの村の住民は自由に過ごしているだけなのに、清潔で衣食住に困らないのは何故か、すぐにわかるよ。」
僕は目の前が真っ暗になった…