サンタの贈り物
バイトある ごめん
そんなラインが来てたのは3日前
さりげなくクリスマスイブの予定を聞いてあわよくば…なんて考えていたけど向こうはその気も全くなかったみたい
『1日あけてあるよ私…なにしよう』
何か予定が入るかも知れない、と思って空けてあったせいで1日暇なわたし
……勉強しようかな
イブということもありいつもより人の少ない図書館には予定のない仲間たちがいる
顔は見たことあるけど名前は知らない同志たちに心の中でエールを送りながら良さげな席を探す
下手に知り合いに会うよりはずっといい
モヤモヤも忘れ、苦手な数学の問題集を進める
気づくと外は暗くなっていて
帰り迎えに来てって言おうにもバイトか…
『なんで今日バイト入れるのよ』
仕方がないこととはわかっているけどそれでもやっぱりモヤモヤしてしまうもので
いつの間にこんなにわがままになったんだろう…
『こうなったら1人で飲んでやる!』
スーパーで軽いおつまみとお酒を買い(カップルがまぁまぁいて居づらかったので)さっさと帰宅
クリスマスなんだから遠出してよまったく!
ご飯も食べずに飲んだせいか酔いがまわるのも早く、寂しい気持ちはどんどん膨れ上がって…
『はぁ、ちょっとくらい会いたかったなぁ…』
もう寝ようかな
23時に布団に入るなんてある意味贅沢よね
寝支度も済ませ、布団に入りもう少しで夢を…
夢の中くらい会いに来てくれるよね?いや、私ならきっと出演させられる
プルプルプル プルプルプル
眠りに落ちる直前、ふざけて決めた某海賊漫画のカタツムリの着信音が鳴った
『…誰?こんな時間に…』
いくの断った女子会の酔っ払った友達だろうなぁ
こんなことならいけばよかったかも…
『もしもし?』
「まだ起きてる?」
…え、なんで????どういうこと??
眩しい携帯の画面をよく見ると私が1日待って居た人の名前が
『え、あ、うん。起きてる、けど』
「もしかして寝てた?」
『や、そんなことないけど…え、っとバイト終わったの?』
「うん、賄いでケーキとかあまりもらったから食べるかと思って」
『え、食べたい、です』
ケーキの言葉に思わず返事をしちゃった私
そこは会いたいでしょ、と心の中でツッコミを入れておく
「わかった、15分後に着くから待ってて」
…え、15分後に来るってこと…?
すっぴん+パジャマ+さっき飲んだまま(朝片付けようと思ってた)
この状態で来られたら死ぬ
とりあえずと急いで缶を片付けお皿を洗う
もうこの際服はいい、問題は顔だ
電話から15分が経ち、そわそわしてしまう
あ、寒いよね、暖房つけておこう!
ピンポーン
ちょうど暖房をつけると同時にチャイムが
『は、はーい!』
「なにそれ笑 あ、これアップルパイらしい」
『ありがとう!寒いからちょっと上がっていけば?』
「…じゃあ、お邪魔します」
思わず引き止めちゃったけどこのまま返した方が失態見られずに済んだかも
そうは言っても今日ずっと待ってて人との時間を逃すなんてこと私には考えられなかった
原付できた彼にはお酒はあげられないからうちにあったカルピスで乾杯
『このアップルパイおいしい!』
「アップルパイ好きなの?」
『めっちゃ好き。今年のクリスマスケーキないつもりだったからすごい嬉しい!』
まぁこの時間に食べるのは罪悪感やばいけど…
少しお酒の回った(好きな人が来てくれて浮かれてるのもあるけど)わたしにはオールオッケー
「今日のバイトみんなサンタのコスプレさせられてさ」
『え、サンタの写真見たい!』
「えーやだよ笑 恥ずかしいわ笑」
絶対サンタ似合うじゃんめちゃ見たい!
てか着て見せて欲しい
あ、そうだ
『ところで、なんで私のところ来てくれたの?』
「え…まぁこの間断っちゃったし?」
『あーなるほど…』
今日バイトがあるのは知って居たけどずっとなわけないんだし、少しくらい時間くれるでしょ!なんて友達のアドバイスを間に受けてつい先日一緒に勉強しようと送って玉砕したんだよね…
『でも今日来てくれてほんと嬉しい!サンタさんだね』
気づけば日付は変わりクリスマスに
幸せをくれたサンタさん、できれば気持ちを伝える勇気もください…