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003 魔女に仕えし一族

「さて朝食も食べ終わったし、そろそろ時間か」

 この絶海の島、限外島で、俺に任された役割がある。


 その話をする前にウチの一族と魔女との関係について、少し話をしておこうと思う……




 ウチの実家である海晴家は遥かより代々続く『海晴神社』という神に仕える神社の家系である。普通の近所他の神社が祀る神、例えば伝説の神様や神器・御神体などとは少し違い、『魔女』それである。


 我が家に伝承で伝わる、簡単な昔話がある――

 遥か昔の事だ、ウチのご先祖様となる人がいた時代。ご先祖様のすむ村に黒い化け物が住み着いて困り果てていたらしい。そこへある時、偶然に魔女が通りかかって村の崩れかかった社の宝物庫からこれまた錆び付いた剣を持った瞬間、それは真っ青な魔剣に変化し、見事化け物を真っ二つにした。此れを喜んだご先祖様は、崩れた神社を再建し村を救った魔女と魔剣を祀る神社とし、今日まで魔女に仕える事となった』

――らしい、本当かどうかは分からないが。

 

 何時しか魔女は人と人が作った社会と交わるようになり、当時の権力者は魔女の持つ強大な力を借りることを目論み、魔女も見返りを貰う。それから紆余曲折し、黒き化け物を封じ込めるこの島を作り出したと。



 ここで話は戻るが、こうした魔女と縁のある神社は全国各地に幾つか存在し魔女に長きにわたって仕えたことで、魔女から魔法の片鱗を授かった。それがやがて『能力』といえる特別な程の力となり世代が進むごとに、生まれながら秀でた能力を持った子供が現れた。


 それが俺達なのであり、だから俺がこの絶海の島に来た理由にもなっている――




「あの……フェレ、そろそろ例の場所に」

 部屋の北側の奥、フェレリアス様の秘密の自室である閉じられた年季が入り黒んだ薄い引き戸の前で呼びかける。見るからに薄い木の戸であるが、部屋の中から物音一つせず静まり返っている。


「う~~ん、ごめんーん 晴海。先に行ってて貰えるかしら?」

 顔のぶんだけ僅かに引き戸を開けて首をだし、ウインクをこちらに飛ばす魔女。それに対し俺は無表情で『分かりました』と小さく一礼を返す。


「もう、晴海。もっと元気よく、楽しそうにしなさーい」


 俺のそっけない素振りに不満なのか口をワザとらしく尖らせ言って、再び秘密の小部屋へと戻り引き戸は固く閉じられた。部屋の中は一体どうなっているのか、残念ながら僅かに開いた戸の先は薄暗く中の様子は全くといって見えなない。


 フェレリアス様は一体中で何をしているか。気にならないと言えば嘘だが、信仰する神様であり女子の部屋を覗く趣味は無いので、俺の知るところではない。一ついえる事それは中に入る前よりも出てきたときの方が、上機嫌で楽しそうな様子であると言う事。全く持ってそれだけでは想像もつかないのだが、ただそれが妙に不気味に思えて覗く気にはなれない。もしフェレリアス様から覗き見る機会が貰えたらば、そのときはじっくり見て見たいとは思うが。


「仕方ない、先に俺一人で行くか……」

 


 俺は朝食をとった居間に当たるこの部屋の隅に置かれた木箱の蓋を開け、中から長い布袋と小さな小箱を取り出し、必要な道具を揃える。ウチの神社に伝わる男性用の巫女装束に袖を通し小道具等の身支度を調え、家の外へと出る。


『どうか今日も、化け物に喰われませんように』

 

 この島に来てこの家から出る度に、実家の神社が祀る魔女神に祈るつもりでその言葉を心の中で唱える。信仰するご神体本人に言えばより効果もありそうだが、恥ずかしいのでそれはやめておく。巫女として……と言うより個人的、せめてもの気休めではあるのだし。


 そうして昨日の晩に指示された、島のある場所へと恐る恐る向かったのだ。



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