表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/29

027 未来へ

 ほんの僅かに数分だろうけれど。この島の景色を目に焼き付け心に刻んでもらうために、静かな沈黙の時間を二人は立ちすくんだまま過ごした。

けれども、もうタイムリミットのようだ。


「さてさて~。本当に時間のようだね。……おや、そんな顔しないでおくれ。また千年後って……ああ。ごめんよ。千年は君……海晴には長すぎるかぁ」


 人間と魔女では生きている時間が違う、この島での生活のように。ゲフトとはほんの僅かな時間だったのに、やっぱり別れの時というのは悲しさが込み上げてきてしまう。友達と遊んで別れ際、明日会えるのに寂しくて泣いて、慰めてくれた姉さんと兄さんのことを思い出す。そうだった、自分はそうとう泣き虫だったの思い出していた。

 魔女の長い生涯にとってこんな出会いと別れは、何度となく今も昔も繰り返されたのだろう。感傷的な気分になる自分、一方的にそんな悲しく切ない気持ちを押しつけて困らせているだけ知 れない。


「もう魔力も時間も無い僕が君に渡せる物はーーうーんと」


 最後の瞬間まで他人の事に気にかけ、何か思いついたのか手を打つ。


「ヨシッ! じゃあそんな海晴に僕から最後のお願いをしようかな? 一度しか言わないから良く聞いておくれ」

 子供がヒソヒソ話をするように俺の耳元に手を当てて、息が吹きかかるこそばゆさに絶えながら優しく小さな声に耳をすませた。聞き漏らささないように。


「そんな事で?」


「ああ、立派な君の役目だよ、君にしか出来ない役目さ」


 思えば巫女としての使命があると自覚し、たとえ困難があっても泣いてばかりいらあれない、この島へ来たとき誓っていたはずだ。そんな自分に新たに与えられた役割を果たす事で、自分は大人へ一歩近づけるだろうか。立派な巫女である姉さんと兄さんのように。

 悠久を生きるという魔女達。けどお千年もの間、魔女ゲフトは最愛の魔女二人と別れなければならない。ここの場にいる自分がしっかりしないでどうする、そう思い直す。あの二人には去って行く姿は絶対に見せたくないと再三お願いしても断られた以上、見送る自分が泣いてはいられないから。ゲフトから託された役目も必ずやり遂げてみせる、そう心の中で新たに誓いを立てる。


「いい顔になったね海晴、君の中で何か変わったのかもしれないね」


 そう言って素早く抱きしめてくる、そこにもう人の温もりは感じられなかった。そして直ぐに離れると、僅かに地面から浮かぶ魔方陣。フェレ様と似ているけれど違うその美しい魔方陣。


「じゃあ愛しい弟子二人をよろしくお願いするね~ もちろん海晴も僕の三番目の弟子として、二人と同じぐらい大切に、愛してるから元気でね!」


「はい、ゲフト。いえ、師匠もどうかお元気で。また会いましょう!!」


「バイバイ~~」


 魔女の木下で別れを惜しみなら、お互い最後は手を大きく振り合って。

風に飛ばされていく塵のように。姿形を保っていた魔力と魔方陣は消え去り、その足下には微かに青白く輝く水晶玉だけが地面に一つ転がっていた。跡形も無く幻のように消え去った師匠の唯一、確かにここに存在したいたと証明するその珠。


 感傷に浸っている時間はなかった。その水晶玉をそっと抱きかかえい素早く辺りを見渡し、師匠が見つめていた丘の方向をしっかりと見定め、急ぎその場を後にした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ