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020 季節

 この島『限外島』には四季という物は存在しない。最強魔女フェレリアス様の魔法結界によって外界から隔離されているためだ。だが季節が無いわけでは無い。

 それこそ魔法を使って季節を創り出しているらしい。理由は島での生活に変化と時間経過を感じさせるためとフェレリアス様は仰るが、その性格のためか気分次第で春から秋へ、真夏から真冬へと……定まった順番がないのである。ほんのつい最近、フェレリアス様との談笑のさなか知った事実だが。


 そして今日は草木も渇き干からび、木枯らしが吹く晩秋の頃でもかと錯覚するような風と寒さ。


「着替えるのは後にすれば良かったか……さむっ」


 家出をし妙な胸騒ぎに心配になりフェレリアス様の気配を頼りに、居住の建屋からひたすら島を横断するように歩いてきた。ただ、家を出る直前に着替えた巫女服ではこの寒風吹き荒ぶ草原を歩くのは辛い。さすがに洋服のジャケットを着るわけにもいかず、生憎島の外から羽織を持ってくるのも忘れた。仕方なく、海晴神社御池での、真冬の水行を思い出しながら寒さに耐えるしかなかない。

ただ何故だか、風呂敷に包み背中に背負った濁った水晶玉が、ほんのりと温もりを感じさせるような気がした。

 

 「兎に角急がないと化け物に喰われる前に、寒さで生きだ倒れる。それは絶対にごめんだ」


 黄金色に枯れた背高い草原をかき分けて、一歩一歩前へと進む。方角は間違いなく合っているはず。

 ただ、その先には……いつも島の空の何処かに漂う不気味なほど黒くグチャグチャとした綿雲が浮いている。見るからに嫌な雲。


 「まさかあの雲のしてで、黒き化け物と一戦交えているとか? いや、夢が事実なら大鎌の少年と……――」


 そこで思考をやめた。

 空を眺めて足を止めている時間は無い、とにかく、急がなければと。



 それから、ゆうに一時間以上は歩いただろうか。暗黒の雲の下、やはりあの大鎌の少年の暮らす洞穴から僅かばかり離れ、黒き化け物が住まう『霧の穴』の目の前。

 巫女としての勘なのか、それとも予知の力なのだろうか。想像は当たっていた、嫌な予想で。


「何があったんですかッ! やめて下さい二人とも」

 率直にその二人を見ての感想が口から出ていた。 

 そこに島最強の魔女フェレリアス様と大鎌の少年は、相対してし長杖と大鎌を構えてにらみ合っていたのだった。  


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