表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/29

001プロローグ 降立った少年

2008年 5月14日 午前9時半頃


 空はどんよりと灰色の群雲が太陽を覆い隠さんと広がり、海原より吹いて来る風はほんのり香ばしいというか生物臭、それと塩見を感じる湿った空気。この独特な胸を不快にさせるような雰囲気は、此処には、否、この島一体に纏わり憑くように広がっているようだ。


 この島にたどり着いてまだ1週間余り、眼下に広がるどこまでも広がる蒼い景色だけは良いのだが、この銀色の砂浜で、大きく深呼吸するのは躊躇ってしまう自分がいる。


 正直言って、もしこんな島だと事前に知らされていたのなら、断固お断りとまではいかないが……姉さんか兄にその任を委ねていたかも知れない。きっと姉さん兄なら、きっと快く受諾してくれるに違いないだろうが、それでも自分が此処に来てしまったのは、まあ運命か定めという奴なのかもしれない。まあ、今そんな事はどうでもいい、代々継承されてきたという、それはそれは由緒と伝統ある役目を果たす、それだけだ。


 と、この島にたどり着いて数日ばかりは、そう思うようにして自分を納得させていたのだったが、1週間もここで過ごしていると、妙な居心地の良さでこの島での生活も悪くないと思えている自分がいたのだった。


「さてと、そろそろ戻ろうかな」

 時計が無いこの島では、正確に時間を知るには困難であるが、雲の隙間から刺すこの程度での光でもあれば影は出来るので、あとは方角と大まかな季節さえわかれば、いわゆる日時計の要領で時間は分かる――とこの島に来て直ぐに教えられた。それぐらい大雑把な時間感覚が分かれば、こののどかな島の生活においては確かに十分なようだ。


 いや、のどかであるというのは誤解がある、決してそれはない。


 ひとまず、日々の居住を行う簡易な家の場所へと、早朝散歩がてらの島の見回りを終えて、そこへ戻る事にする、お腹の減り具合ももう我慢の限界だし。それに、この時間ならば、いい加減に彼女も目が覚めている頃だろう、というか起きて居て貰わないと困る。


 この限外島の掟であり、支配者である彼女には――


 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ