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33 迷宮6

 俺の放ったドラゴンブレスは、最初に放ったものよりも範囲が狭まった分、より絶大な火力となった。


 ブレスの範囲内はグチャグチャに溶けて、マグマのようになる。


 さすがに茶色のゴーレムも、この攻撃を耐え切ることはできなかったらしい。


 しばらく戦いが終わった後の静寂な時間が続く。


 6体のゴーレムが復活する気配はない。


 新たな敵が現れるようなこともない。


「クリアしたのか?」


「ユーリは加減を覚えた方がいい」


「えぇ……」


 人化したアカネが、マグマの池を避けながら俺に近づく。


 どうやら俺の攻撃は過剰すぎるらしい。


 納得がいかない俺は少し反論に出る。


「でも、油断して反撃を食らったら元も子もないだろ?」


「ユーリは自分の強さをわかってない」


「ん?」


「ユーリは魔獣で言えば、もう絶級と同等以上」


 そんなこと考えたことがなかった。


 この森に踏み入れてから、生きるために強くなろうと必死になっていた。


 強者のみが生き残ることのできる世界で、自分の強さがどれくらいかなんて考えている暇はなかった。


 負ければ死ぬ。


 そんな環境が俺の感覚を麻痺させていたのかもしれない。


「いや、でもまさか?」


「事実。それに巨樹にいた魔獣を倒したのは誰?」


 確かに、あの麒麟は絶級でない方がおかしい。


 今の俺が魔力解放をして、やっと倒せた魔獣だ。


「確かにな……」


 それなら、ここのゴーレムが思ったより弱かった(と言っても最上級上位レベルだが)のも筋が通る?


「もしかして俺って普通じゃない?」


「うん」


「即答っ!?」


「ユーリは人とは思えないくらい規格外」


「き、規格外……」


 アカネさんやい。何という表現の仕方ですか、それは!


 いくら何でも不良品みたいな言い方をしなくても……。


「でも、自慢のマスター……」


 アカネが頬をちょっと染めながら、視線をそらして呟く。


 そんなことを思ってくれてるなんてっ!


 目尻に水っぽいものが溜まっていくような、そんな感動を心の底から感じている自分がいる。


「どうしたの?」


「いや、何でもない! ちょっと目にゴミが入っただけだから」


 自分で言っておいて、ベタだなと余計に悲しくなる。


「ふふっ」


「笑ったな?」


「笑ってない」


「絶対、笑っただろ?」


「知らない。それよりも次の試練」


 アカネは素っ気ない態度で、扉へと先に歩き始める。


 そんなところも可愛らしく思ってしまうのは、マスターとしてはしょうがないことだろう。


 俺もアカネの後を小走りで追いかける。


 扉までは少し距離がある。


 俺は少し気になっていたことをアカネに聞く。


「そう言えば、戦うとき以外はなんで人化でいるんだ?」


「それは…………言わない」


「言わないって、何でだよ」


 何か秘密があるのか?


 言ったら狼耳と尻尾が生えてきちゃうとか、なんだそれ……めっちゃいい!


「ユーリはデリカシーが足りない」


「俺、デリカシーがないこと言ったか?」


「知らない」

(……人化した方がユーリと一緒な気がするからなんて、言えるわけがない。絶対調子に乗る)


「まぁいいか」


 めっちゃ気になるけどね!


 てか、人化状態で狼耳と尻尾だせないか今度聞いてみよう! さすがに今は聞けなさそうだし。


 そんな企みを考えていると、扉の前に着く。


「着いたけど……でかいな」


「うん……でっかい」


 俺たちの前に(そび)え立つそれは、これまでの扉よりも格段と大きい扉だ。見るものを圧倒するとは、まさにこのことだろう。


 造りはこれまでのものと似ているが、何しろスケールが違うため1つ1つの彫刻が存在感を持っている。しかし、細部まで丁寧に造られている辺り、これを造った職人(神?)は只者ではない。


 いや当たり前か、神だし。


 それよりも、こんな扉だということは何かしらある。絶対ある。


 ゴーレムはあれだったし、そんなに身構えなくてもいいのか?


 いやいや、これほど立派な扉ってことは最深部とかだよね。


 でも、最深部にだけ試練がないとかも考えにくいよなぁ。


「すごい魔力……」


 確かに濃い魔力を扉の奥に感じる。


 それが魔道具なのか、それとも試練なのか。


「まぁ入って見なきゃわからない」


「ガウ」(準備できてる)


 白い(たてがみ)を揺らして、獣化したアカネがそう告げる。


 俺はボロボロのローブを空間魔法『アイテムボックス』に仕舞い、新たなローブを取り出す。


 そして、気合いを入れ直すように新たなローブに袖を通す。


 黒々としたローブは魔術師であることを象徴するようで、魔法が上手く使えるような気になれる。


「強化よ」


 いつも通り強化魔法で身体能力を強化する。


 体が軽くなったような感覚と、握りしめる拳の力が強くなる。


「行こう」


 期待と不安を胸に俺は重く大きな扉を押した――――

 読んで頂きありがとうございます!!


 あけましておめでとうございますっ!

 今年もよろしくお願いします!


 今年初の投稿もこんな遅くなってしまいました……。

 今年は作者自身の環境が変わりますので、更新面でお待たせしてしまうことも多々あると思います(言い訳)が、どうかお付き合いお願いします!

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