24 遺跡
第三層に入ってから1週間が経つ。
俺たちは強い気配に向かって森の中をゆっくり、確実に進んでいた。
初めの頃は少し進む度に魔獣と遭遇していたが、今は潜伏スキルが上がり魔獣との遭遇は減った。
戦闘による体力と魔力の消耗が抑えられ、その分移動速度は格段に上がっている。
「アカネ」
俺は手で制し、進行を止める。
後ろにいたアカネは俺の側まで来ると、俺が前へ進まない理由を理解する。
「ガウ……」(あれって……)
「あれは――遺跡、だな」
俺たちの目の前にあるそれは、誰が見ても人の手によって造られた建造物だった。
表面が磨かれた綺麗な薄灰色の石が規則正しく積み重なっていて、入口は大人1人がギリギリ入れるほど狭い。大きさは小屋より少し大きいくらいで、木の根や枝が遺跡全体に巻きついている。
そして何より不思議なことは、あんなにも暗かった森の中だというのに、遺跡には太陽の光がスポットライトのように差し込んでいるのだ。
これは何かあるよね。
罠か? でも、こんな場所に何の目的で?
「やっぱり調べるしかないな」
「ガウ、ガウ」(ユーリ、顔がニヤついてる)
「え、まじ?」
「ガウガウ」(緊張感がない)
「すみません……」
アカネに怒られてしまった……でも、しょうがないと思う。だって、遺跡は男のロマンでしょ?
「ガウガウ、ガウウ」(そんなの知らない、行くなら行こう)
また心の声が漏れてた?
いやん、恥ずかしいっ!
***
魔眼や魔力感知を使い、罠などに警戒しながら俺たちは遺跡の中に入る。
遺跡の中は灯りがなく、足元も見えない。
「光よ」
俺は光魔法で光源を創り出す。
創り出された光源は俺たちの頭上で、真昼のような明るさで遺跡の中を照らす。
明るくなったことで遺跡の中がよく見えるようになったが、遺跡の中には宝箱のようなものはなく、石の天井や壁、床が存在するだけだ。壁に文字が刻まれていたり、魔法陣が描かれていたりもしない。
「ガウガウ」(何もない)
「うーん、強い気配が近くに感じるのは確かなんだけどな」
俺は何か手がかりがないか遺跡の中を、神経を研ぎ澄まして観察する。
ガタッ
ん? 今、床が動いたような。
「ここか?」
床を調べてみると、大きな石板が1枚だけ動かせるようになっていた。
俺は魔力を具現化してその石板を持ち上げると、そこには地下へと続く階段があった。
「ガウ?」(階段?)
アカネは顔だけ出して、階段の先を興味深そうに見ている。尻尾が少し動いているように見える。
なんだかんだでアカネも興味津々だな。
俺は石板を適当な場所に置き、地下へと意識を向ける。
「行ってみよう」
***
地下へと続く階段は少し角度が急な気もしたが、わずかな時間で地下に辿り着いた。
地下の道はどこまでも一直線で、天井や壁、床は花を思わせるような模様が施された、大理石に似ている材質だった。
俺たちの足音のみが響き、嫌なほど地下の中は静寂に包まれている。
一歩一歩、慎重に警戒を怠ることなく前へ進む。
しばらく進むと、ある場所に着いた。
光魔法の光源を塗りつぶすほどの暖かな光に包まれた大きな部屋だ。
その広さと高さは、東京タワーも丸ごと隠せそうだと思えるほどだ。
部屋の中心には集落にあった、長の巨樹の家と同じ巨樹が威武堂々とそびえ立っていた。
長の家のように隠し扉はないが、その存在感は見るものを圧倒することは違いなかった。
「地下にこんな場所が……」
「ガウ……」(すごい……)
巨樹から溢れる魔力は、触れるものを呑み込んでしまいそうなほど強く、大きく、そして深海のごとく深い。
しかし、俺が感じた強い気配は巨樹ではない。
もっと荒々しく、殺気立っていたはずだ。
今にも襲いかかってきそうなほどに……
『――――グァーッ!!』
「アカネっ!」
俺はとっさに魔力を具現化して纏い、後ろにいたアカネを庇うように自らを盾にする。
背中を鈍器で殴られるよりも強い衝撃を受け、俺とアカネは勢いのまま吹き飛ばされる。
数メートルほど飛ばされた俺とアカネは何とか立ち上がり、治癒魔法と結界魔法を同時に発動して態勢を立て直す。
敵は……
それは今までの魔獣とは別次元だった――――
読んで頂きありがとうございます!!
リアルの方が落ち着いてきました……。
これからは更新頻度を徐々に上げていきたい所存です!
また、10月18日で初投稿から1年が経ちます。本当にありがとうございます!!
記念として番外編など書けたらと思っています。
よろしければ、誰のどんな話が読みたいなどがあれば感想の方に記入して頂けると嬉しいです!
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