サイドストーリー5 セレーナとアーテル
アクセス、ブックマークして頂きありがとうございます!!
今回はサイドストーリーを書かせて頂きました。
セレーナとアーテル視点です。
楽しんで頂けたら幸いです!
ユーリくんが成龍の儀を受けてから2週間が過ぎた。
わたしはお嫁さんとして、ユーリくんの帰りを信じて待つと決めた。
けど……
「さびしいよ……」
「どうかしたのぉ? セレーナ」
「ううん、何でもないよ」
ママに心配されちゃった。それじゃダメだよね。
でも、いつも側にいたユーリくんがいないのは何かが欠けているようで、わたしは普段の調子を出さずにいる。
ユーリくんは今何をしているのかな?
わたしは左手を見る。
そこには祝福の龍石にもらった指輪が嵌められている。指輪の魔宝石は変わらずキラキラと光を放っていて、いつ見ても綺麗だと思う。
大丈夫。ユーリくんは最強のわたしの王子様だもん。
***
「2週間が経ったか……」
ユーリが成龍の儀を受けてから2週間が経つ。
私は武龍団副団長として変わらず責務を果たしてはいるが、何故か調子が出ない。
原因はわかっている。
それは……
「ユーリ〜、私をひとりにしないでくれぇ!」
朝起きてもユーリがいない。
家に帰ってもユーリがいない。
稽古をしようとしてもユーリがいない!
ゆ、ユーリ、私はどうすればいいって言うんだ……こんなにも寂しいなんて――――
しっかりしろ、私!
ユーリは今、己と戦っているんだ。厳しく、辛い環境で。
母親の私がこんなんでどうする。
――――母さんっ!
「ユーリっ!!」
私の声だけが家に響き、次第に静寂が訪れる。
空耳か。
「うわぁー! 早く帰って来てくれぇー、ユーリ!!」
私はベッドに埋まり、ユーリのいない寂しさを忘れようとした。
***
「アーテルさん?」
わたしの少し先に、アーテルさんの背中を見つける。わたしはアーテルさんのところまで駆けよる。
「アーテルさん!」
「ん? セレーナか」
「アーテルさんも買い物ですか?」
「あぁ、そんなところだ」
何だろう。少しアーテルさんが落ち込んでいるように見える。
アーテルさんもユーリくんがいなくて寂しいのかな?
「……ユーリくんはどうしてますかね」
わたしはアーテルさんの歩幅に合わせて歩く。
意識したわけではないけど、ユーリくんを話題に出してしまう。
「ゆ、ユーリっ……」
アーテルさんは声を震わせながら下を向く。
「アーテルさん? 大丈夫、ですか?」
「あ、あぁ、何でもない。そうだな……魔獣を手懐けていたりしてな」
「ふふ、そうですね」
わたしとアーテルさんは揃って笑う。
そう言えば、儀式ってどんなことをするんだろう?
「成龍の儀ってどんなことをするんですか?」
「そうだな……簡単に言えば、儀式の場所である『琢磨の森』の最奥まで行って帰ってくるだけだ」
「行って帰ってくる……でも、それなら1ヶ月も必要ないような」
成龍の儀と言われるくらいだし、そんな簡単なわけないよね。
わたしはアーテルさんを見る。
「そう、行って帰ってくるだけなら3日程度で行けるだろうが、あの森はそんなに甘くはない。中級、上級の魔獣がそこら中に溢れかえっているからな」
アーテルさんが懐かしむように話す。アーテルさんも昔、成龍の儀を受けて武龍団副団長になった。
「1体、2体なら問題はないが、上級の魔獣が十数体となれば話は別になる」
やっぱり、そうだよね。
ユーリくん……。
「ユーリくんは、大丈夫……ですよね」
わたしは不安を感じていた。
「心配か?」
アーテルさんが優しくわたしに聞く。
本当は心配。
ものすごく不安で心配。
でも、
「……ユーリくんは強いです!」
「そうだな」
「ユーリくんは負けません」
「そうだな」
「ユーリくんはかっこいいです」
「ん? そ、そうだな」
だから
『ユーリくんは大丈夫です』
わたしの不安を消し去ることは出来ないけれど、それ以上にわたしは、わたしのユーリくんを信じてる。
「本当にユーリが好き……なんだな」
「はい! 大好きですっ」
わたしは元気よく、心の底から大好きだと言う。本当のことだから。
「うっ、そ、そうか」
あれ? わたし変なこと言っちゃったかな? まぁ、いいかぁ。
うーん、最近なんだかユーリくんに似てきてる気がする……ふ、夫婦だから、かな? えへへ。
「セレーナ、何をニヤニヤしているんだ?」
「ふぇ? そ、そんなことないですよ。ちょ、ちょっとユーリくんのことを考えていただけで……」
「そ、そうか」
またアーテルさんが落ち込んでる。
少しでも早く、ユーリくんが帰ってくるように帰ったらお祈りをしよう。アーテルさんのためにも。
ユーリくん、わたしも頑張るからね!