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1 青い御守り

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 中々、更新ができず申し訳ございません!

 執筆速度を上げたい(切実


 定期的に更新できるように努力します!

 成龍の儀。それは龍人の中でも選ばれた者だけが受けることのできる儀式。この儀式を達成することは強者としての証。


 何より、俺は人族。この儀式を成し遂げることは龍人として認められるためにも必要なことなんだ。


 集落のみんなは人族関係なく俺と接してくれる。すごく嬉しいし、感謝してる。だけど、やっぱり俺は成龍の儀を成し遂げ、真の意味で認めてもらいたい。


 そして、武龍団に入ってこの大切な集落を、大切な人たちを守りたい。


 そのために――俺は強くなる。






 ***






 俺は今、成龍の儀に繋がる道の入り口に来ている。


「いよいよか……」


「緊張しているのか? ユーリ」


「うん。すごく緊張してる……母さんのときはどうだった?」


 母さんは俺の硬い表情で察したのか、声をかけてくれる。母さんには筒抜けみたいだ。


「私のときか……うん、私も緊張していた。だが、それと同じくらいワクワクもしていたぞ」


「ワクワク……母さんもそうだったんだ。俺もびっくりするほどワクワクしてる」


 そう、俺は緊張もしているが、自分でも驚いてしまうほどに胸が騒めいて、ワクワクとした感情が湧き上がってくる。おかしな話だ。


 やっぱり俺は母さんの子なんだよね。良い意味でも悪い意味でも。


「ユーリくん。手、握ってもいい?」


 俺が心の中で苦笑していると、隣にいるセレーナが俺を見てそんなことを言う。


 聞かなくてもいいのに……でも、そんなところも可愛いと思えて仕方がないんだよね。はぁ……俺、一人で大丈夫かな?


 俺は少し寂しさを感じそうになるも、セレーナに微笑みながらその細く柔らかい手を握る。今だけは自分の弱さを甘えさせよう。


 俺とセレーナは時間にしては僅かだがお互いの手の温もりを感じ、これから少しばかり寂しくなるその温かさを噛み締める。今しばらくだけ、その手に覚えさせるように指と指を絡み合わせる。


 俺たちの手は固く、固く結ばれている。


「あのね、ユーリくんに渡したいものがあるの」


 セレーナは若干、緊張したような声色でそう言うと、腰につけたポーチから白い小さな袋を取り出す。


「はい!」

 

「何が入ってるの?」


「開けてからのお楽しみっ」


 セレーナは袋を俺に渡すとニコニコと笑い、中に何が入っているのかも教えてくれない。


 何だろう? そこまで重くないし小さい。


 俺は袋を縛っているヒモを解き、中を開ける。その中に入っていたのはストーンがつけられたペンダントだった。ストーンの色はセレーナの眼に似て、青く透き通っている。実に綺麗だ。


「それはね、ユーリくんを災いから守ってくれる御守りだよっ」


「セレーナ……」


 俺はセレーナの優しさに、心の底から嬉しくなる。


「着けてもいい?」


「うん! あ、わたしが着けてあげるよ」


 俺は手に持っているペンダントをセレーナに渡すと、首を伸ばすように顔を上げる。セレーナは少し足を進めて、俺との距離をゼロに近づける。


 直ぐ目の前にセレーナの顔がある。大好きな人の顔だ。


 や、やばいよ……顔が、顔が近いっ。


 くりくりっとした青い瞳が俺のことを映している。その艶のある柔らかな白縹(しろはなだ)色の髪から、甘い香りが俺の鼻腔をくすぐる。


 セレーナはさらに踏み込むと、俺の首に手を回してペンダントを着けてくれる。密着していることで、セレーナの柔らかさを直に感じてしまう。


 ダメだ……抱き締めたい。


 俺は暴れだす衝動に負けそうになっていると丁度、ペンダントを着け終わったらしくセレーナは少し下がってから、うんっと一回頷く。


「よく似合ってるよっ」


「あ、ありがとう、セレーナ」


「うん。似合ってるぞ、ユーリ」


「ありがとう、母さん」


 俺は首にかけられたペンダントを手に取り眺める。青く輝いて見えるストーンが、俺に勇気を与えてくれるような気がした。


「ユーリ、準備はできたか?」


 俺が森に入るべく気持ちを落ち着かせていると、後から来た長が俺に声をかけてくれる。俺は軽く頷き、母さんを見る。


「母さん、行ってくるね」


「いってらっしゃい」


 母さんの言葉には一つの意味だけじゃなく、様々な想いが詰まっているのが、その瞳から、その声色から、その柔らかな表情から感じ取れる。


 ちゃんと、ただいまって言えるようにしないとな。


「ユーリくん」


「セレーナ」


 俺はセレーナを見る。その顔は明らかに、寂しさと不安が詰まっているのが俺にはわかる。悟られないように気丈に振る舞おうとしているが、そんなこと直ぐにわかってしまう。


 俺はセレーナの手を引き、お互いの体温が感じられるところまで近づく。セレーナの顔が赤くなっているが気にせず、俺はそっとセレーナの背中へと手を回す。


 抱き締める力が強くなり過ぎないように、優しく包み込む。顔が赤いのは変わらないが、セレーナも俺を抱き締め返す。その抱き締め方は、俺を離したくないと思っているのか力強い。


「ユーリくん……やっぱり、行っちゃやだ」


 セレーナは声にならない声でそう呟く。きっと本当の気持ちなんだろう。瞳を潤ませているセレーナの顔が想像できる。


 俺は抱き締める力をほんの少しだけ強くする。


「直ぐに帰ってくる」


 それは誓い。セレーナを安心させるためとかではない。


 それがセレーナにも伝わったのか、抱き締める力が少しだけ弱くなる。


「絶対だよ?」


「うん。絶対に」


 俺とセレーナはお互いに抱き締める力が強くなる。次に抱き締めることができるのは少し先になってしまうからだ。


 しばらくの間だけ、ほんの少しだけ、俺とセレーナは何も考えず抱き締め合っていた。






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