プロローグ 本当の物語
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2章プロローグです。
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「は、は、は……」
俺は走る。考えなんてない。ただ、生きのびるために走る。
酸素が足りない。苦しい。もう駄目だ……。
止まればやつに追いつかれる。そんなことはわかっているけど、もう無理なんだよ……。
俺の心は酷いほどに脆くなっていた。それは森の中で独りだからなのだろうか。独りなんて慣れっこだったはずなのに。
俺はいつの間にか、あの温かさから離れることがこれ程までに寂しいものだと感じるようになってしまったらしい。
俺の足は次第にその速さを失っていく。一歩を踏み出すことが辛い。もう楽になりたいと、俺を許してくれと、そう思ってしまう。
ついに俺の足は止まってしまった。俺は諦めた。諦めてしまった……生きることを。
あぁ、こんな気持ちになるのは久しぶりだ。
転生する前はよく考えていたっけ? 何のために俺は生きているのかって……。もう、生きる必要はないじゃないかって……。
寒い……心が寒いよ。今ならわかるんだ。あのときの俺は全てを諦めて、誰も信じられなかった。それがどんなに寂しくて、凍えるようなくらい冷たい心だったのか。
真っ暗な部屋の中で俺はポツンっと独り佇む。これは孤独だ。
嫌だ。ひとりにしないで……母さん、父さん! 何でなの……みんな何で僕をひとりにするの? 暗くて怖いよ……何も見えないよ。
もう、誰も……
そんなときだった。一筋の眩い光が俺を照らす。
この暗い空間の中で唯一響く声はセレーナの声だった。何度も聞いてきた声。何よりも今、聴きたかった声。
そして、忘れてはいけないことを思い出させてくれる。
『約束……だよ? 破ったら、口も利いてあげないんだから』
星が綺麗な夜、あの日交わした約束が……セレーナとの約束が俺の頬を叩き、目を覚まさせる。
はは、やっぱりセレーナには敵わないや。
夜風になびく白縹色の髪がどこか儚く、それでいて愛しい。俺の方に振り向き、微笑む顔が好き。それに、龍化したときの翼は母さんとは違う、強さと優しさがあって俺は好きなんだ。
俺、帰ったら結婚するんだ。
フラグなんかじゃない。俺は強く、誰よりも強くなる。そのためにここまで来たのだから。
「休憩は終わりにしようか」
俺は誰も聞いてないとわかってはいるが口に出す。それは先ほどまでの自分に言い聞かせるためでもあるからだ。逃げて来た道を振り向く。
逃げることはやめた。それは諦めたというわけではない。立ち向かうことにしたからだ。
生きるために、何よりも大好きな人のために……逃げてばかりじゃいられない。
ここからが俺の――本当の物語なのだから。