22 それでも
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「ユーリ、元気に遊ぶのはいいんだ。だが、あくまで遊びの話だ」
お母さんは地面に膝をつけると、俺と目線を合わせながら言う。
「はい……」
「でもな、空を飛ぶのはいくらなんでも危険だ。遊びの範囲を超えていると私は思う。わかるな、ユーリ」
「はい……」
不用意に空を飛んだことが原因で俺は今、お母さんにお叱りを受けている。
俺は心配をかけてしまったことを深く深く、反省する。
「おかあさん……しんぱいかけてごめんなさい」
「……うん、許す。わかってくれればいいんだ。それにしても、どうやって飛んで……魔力を翼にしたのか?」
「うん! まりょくをぐげんかして、おかあさんみたいにカッコイイつばさがほしかったんだ!」
転生した日見たお母さんの力強く、かっこいい翼が頭の中にずっと残っていた。魔力を具現化できるようになって、いつか試したいと思っていたんだ。
「……そうだったのか。……ユーリ、一つ聞いて欲しいことがある」
「うん」
何だろう。魔力はもう使うなとか? そ、それは絶対に嫌だ! 嫌だぁー。
「ユーリ、お前は昔から聡い子だった。もしかしたら気づいているかもしれないが、落ち着いて聞いてくれ」
「……うん」
「お前と私は――血のつながった親子ではないんだ。捨て子だったお前を拾い、私が育て親として育てることにした。それにユーリ、お前は龍人の子ではなく人族の子なんだ」
そのことか……。俺は転生者だからわかってはいたけど……。
「うん……」
「ユーリ……これだけは信じてくれ。誰が何と言おうとお前は私の子だ! 血のつながりなんて関係ない! 私の大切な家族であり、愛しい我が子なんだ」
お母さん……。うん、わかってるよ。だって俺も同じ気持ちなんだから……俺のお母さんは、ただ1人
――アーテルさんだけだ。
「おかあさんは、おれのほんとうのおかあさんじゃなくても、おれは……おれは! おれのだいすきなおかあさんは、おかあさんだけだよ!!」
「……う、うぅ……」
お母さんは顔を伏せ、体を震わせている。キラリと光る何かがお母さんから落ちて、俺の心は少しの不安と悲しませたくないという衝動に埋め尽くされる。
考えるよりも先に、体が勝手に動く。俺はお母さんへと近づき、この小さな体で優しく抱きしめる。
「ゆ、ユーリ……」
「おかあさん……」
お母さんは少し驚きつつも、いつもの温かさで俺を優しく抱きしめ返す。
「ユーリ……こんな母親だか、私のことをお母さんと呼んでくれるか?」
顔は見えないけど、きっと微笑んで言っているのがわかる。
俺は心に伝わる温かさを噛み締めると微笑んで、ただ一言だけ言う。
『おかあさん』
次の更新は11月6日(日)予定です。