表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/197

20 眠りの夜と始まりの灯火

 たくさんのアクセス、ブックマークありがとうございます!

 今回、書きたかったのは大晦日と元日だと思って頂けるといいかなと思います。伝わっているかどうか……。


 楽しんで頂けると幸いです!

 





「皆、よく集まってくれた! 感謝する。今日は一年の最後『眠りの夜』じゃ。皆、今日までよく頑張ってくれた! 互いの奮励(ふんれい)を労い、讃え、森の恵みに感謝して、この豪勢な料理を楽しむのじゃ!」


『わぁぁー!!』






 ***






「ユーリ、取れるか?」


「うん! じぶんでとれるよ」


「そ、そうか」


「セレーナはとってあげるわねぇ」


「キューウ!」 (まま、ありがとう!)


 俺はお母さん、ラルージュさん、セレーナちゃんと同じテーブルでご飯を食べている。


 俺の大好きなポークバードのソテーや木の実をふんだんに使ったサラダ、メコンソの実のスープ、ロックボアのハンバーグ、ミルキー米とキノコの炊き込みご飯など他にも沢山の料理が並んでいて、本当に豪華だ。


「おいしいね、おかあさん!」


「そうだな! ユーリ、実は私も手伝ったんだぞ」


「そっか! だからおいしんだね!」


「ふふ、美味しいか。ユーリは嬉しいことを言ってくれるな」


「アーテルちゃんはお料理が上手で羨ましいわぁ」


「キュウキュウ」 (おいしいー)


 セレーナちゃんは目一杯、料理を楽しんでいるようだ。


 そんなこんなで宴は騒がしくも、笑い声が絶えず続く。そして夜が深まり、星が綺麗に見えるほど辺りが暗くなる。


 子供たちは眠いことを忘れていたかのように、目をこすりだす。大人たちはというと、まだ酒を片手に語り合っているらしい。


「ふぁー……」


「キューウ……」 (ふぁー……)


 何だか眠くなってきた……。セレーナちゃんも眠そうだなぁ……。


「アーテルちゃん、私たちは一度この子たちを寝かしに家に戻りましょう」


「そうですね。ユーリ、歩けるか?」


「うん……」


 周りを見渡すと他の子も家に帰るらしい。俺は宴の高揚感と睡魔の綱引き状態の中、何とかトボトボと歩きだす。


 名残惜しさから後ろを向き、宴をしている広場を見る。


 集落を照らす灯りはどこか温かくて、まるで小さい頃に見た煌めくイルミネーションを思い出す。キラキラとした光景に、少しだけ懐かしさを覚えるが嫌な気はしなかった。


「どうした? ユーリ」


「ううん……なんでもない!」


 だって俺が今いるのは大好きなみんながいるこの世界(ここ)なのだから……。






 ***






「……うぅーん……あれ?」


 あーそうか、家に帰って寝てたのか。


 俺は寝惚け眼で窓を見ると、まだ外は暗いようだ。


「……ユーリぃー! まてー、私は許した覚えはないぞぉー……グスッ……母さんを残して結婚なんて……(スゥースゥー)」


 うわっ! びっくりした……ん? お母さんは一体どんな夢を見ているのでしょうか……まぁ、大丈夫だろう、うん。


 横で寝ていたらしいお母さんの突然の寝言で、すっかり目がさめる。


 外でも覗いて見るかー。みんなはどうしてるのかな?


 俺はベッドからお母さんを起こさないように静かにでる。


「……(スゥースゥー)」


 ふぅー、大丈夫みたいだ。よし、行ってみよー!


 俺は家のドアを開け、外へ出る。空は暗いが真っ暗というほどではなかった。周りを見渡すと、集落中の灯りが消えていることに気づく。


 そっか、『眠りの夜』が終わったから宴も終わったんだ。もうちょっと宴したかったなぁ……また来年かー。来年は寝ないぞ!


 心の中でそんな決意をしていたそのとき……


「皆、天を見上げよ! 火が灯るときじゃ!」


 長の声が集落中に響く。俺はその声を聞き、空を見る。そこには先ほどの暗さはどこにいったのか、薄い青色の空が現れていた。


 ――あ。


 一筋の光が集落に射す。その輝きは眩しく、目が開けられない。光は徐々に世界すべてを照らすべく拡がる。それはまさしく、火を灯しているようだった。


 これが『始まりの灯火』……そういうことだったんだ。






 世界に()が灯り、俺たちは新たな年を迎える……。






 次の更新は11月3日(木)予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ