82 魔皇教団壊滅作戦3
少し短いですが、ご了承ください!
俺たちは結界内にいる市民を避難させ、敵本陣へ乗り込んだ。
イリーガルとテーレの位置は掴めているが、罠という可能性もあるため、転移での直接の襲撃はしない。
根城である魔皇教団の建物の屋上から侵入を試みる。
屋上はただ一点を除いて、何もないシンプルな造りだった。
その一点とは、屋上に刻まれた巨大な魔法陣ことだ。
この根城を中心に展開されている結界の魔法陣で間違いない。
「大きな魔法陣だね」
「外に展開されている規模の結界をつくるには、これくらいの魔法陣が必要だからね。それに結界に様々な効果を付与するほど、魔法陣は複雑になるんだ」
俺の説明にセレーナは、うんうんと頷いて魔法陣を観察している。
「あとこのタイプの刻まれた魔法陣は、一度完成してしまえば魔力を流せば誰でも使えるのが利点だね。難点は、移動させるのが難しいところかな。まぁ、結界は動かすことがないからそこまで問題はないんだけど――」
その時だ。
魔力感知で新たな魔力を感じ取る。それもイリーガルたちとは比べものにならないほど強い魔力だった。
しかし、俺はこの魔力を知っている。
「あの時の……龍人がいるのか」
パンプキンで逃した紫眼の龍人。
あの時は俺の魔法に対応できていなかったが、また同じ手が通じるとは限らない。
それにこの魔力の強さからして、前回のときはまだ本領を発揮していなかったのだろう。
「どうしたの?」
「強い魔力……たぶん、龍人」
「龍人っ!?」
俺の様子の変化に気がついたセレーナ。
そのセレーナの疑問を、アカネが俺の代わりに答える。
予想外の回答にセレーナは目を見開いて驚く。
不安そうな瞳が俺の姿を映していた。
「おそらく前にパンプキンで逃した龍人だと思う」
「あのときの……」
「大丈夫。むしろ好都合だ。今度こそ捕まえて、龍帝国の情報を手に入れてみせる」
「うん!」
俺が笑顔を見せると、セレーナも不安そうな表情が笑顔に変わった。
「予想外なことが起きたけど、作戦を継続しよう」
「んっ」
「うんっ」
このタイミングで龍帝国が現れたのは予想外だったけど、魔皇教団と龍帝国が繋がっている可能性はあった。
テーレが『終わりなき森』にしかいないはずの巨花竜をキャロットに転移できたこと。
そもそも龍人しか知るはずのない『終わりなき森』にテーレが侵入できたのか。
その謎が明らかになった。
魔皇教団の後ろには龍帝国が存在している。それは確実だ。
「作戦通り俺はイリーガルを、アカネとセレーナはテーレの捕縛を頼む。もしも龍人と遭遇したら、思念魔法で俺に知らせてくれ」
「わかった」
「うん!」
「絶対に深追いや、無理だけはしないこと。危なくなったら転移するんだぞ」
アカネとセレーナによく言い聞かせる。
作戦は大事だけど、命には代えられない。
「大丈夫。心配ない」
「無理はしないけど、頑張るよ!」
2人に気負いはない。
これ以上言うのは士気を下げてしまうかもしれないな。
あとは、信じて、一緒に戦うのみだ。
………………
…………
……
「――アカネちゃんッ!!」
わたしの声のはずなのに、わたしの声ではないような感覚。
現実から切り離されていくように、恐怖がわたしを包み込む。
震えを通り越して、膝をついた体は凍りついたように動かない。
目の前で大切な家族が首を掴まれ、持ち上げられているのに……。
アカネちゃんは全身のいたるところから血を流し、抗う力も残っていない。
「そこそこ遊べたけど、こんなもんかぁー。ざんねん」
魔獣を操り、魔獣を纏う。その龍人は、小さな子供の姿をした――怪物だった。
「じゃ、ばいばい――――」
子供のような無邪気な声で、その龍人は死を告げた。
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次回の更新は3月10日です。