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78 作戦会議

「ユーリくん!」


「おまたせ」


 転移魔法を使い、セレーナたちが待つリーキ総合管理基地の部屋に転移した。


 俺たちの部屋にはセレーナ、アカネ、リリーの他に王女様とスチュワードさん、ハリー隊長がいた。


 リリーと俺のふたり部屋のため、この人数ではやや手狭に感じるが、この部屋は昨日のうちに結界魔法を最大限に施している。


 今やこの部屋はどんな音も漏らさず、生半可な探知にも見つからず、上級程度の魔法ならはじき返す強固さだ。


 もちろん、セレーナたちと王女様たちの部屋も同様に施している。


「ユーリ様、ご無事でなによりです」


 テーブルの席に着いていた王女様が立ち上がり、俺を気遣ってくれる。


 俺もテーブルまで近寄り、お礼とお詫びを伝える。


「お気遣い頂き、ありがとうございます。王女様をお呼び立てしてしまいすみません」


「気になさらないでください。それよりも、魔皇教団の拠点を見つけたというお話は本当ですか?」


「はい。説明します」


 そう答えると、王女様とスチュワードさん、ハリー隊長は半信半疑だった表情が驚きに変わっていた。


 俺と王女様がテーブルに着き、セレーナ、リリー、スチュワードさん、ハリー隊長はその周りで立つ。


 アカネは少し離れた場所にあるベッドの上で、退屈そうに足をぶらぶらさせながら座っている。


 思うところはあるが、今はスルーして話を進める。


「わかりやすいように思念魔法で映像を共有します」


「申し訳ありません。思念魔法とは何ですか?」


 王女様が申し訳なさそうに手を挙げ質問する。


「簡単に言うと、その人の心の声や思い浮かべた光景を直接、別の人に伝えることのできる魔法です」


「そんな魔法があるのね。すごいっ」


 王女様の瞳がキラキラ輝く。ついでに口調も素に戻っている。


 俺と目があった王女様は一瞬にして顔が赤くなった。


「……し、失礼しました。話を続けて下さい」


 俯いてしまった王女様を気にしつつ、言われたとおり俺は話を続けることにした。


「今から思念魔法を使います。最初は頭の中に景色が浮かんで驚くかもしれませんが、目をつぶったりすると集中しやすくなります」


「僕も最初は全然慣れなかったなぁ……」


 後ろからリリーの呟きが聞こえる。


 何だかんだで順応しているので、その順応力はリリーの才能かもしれない。


「では、始めます」


 ………………


 …………


 ……




 情報を共有し、問題点や警戒すべきポイントを話し合った。


 話し合いも終盤に差し掛かり、作戦が決まる。


「最終確認をしましょう」


「そうですね」


 俺の提案に王女様が同意する。


 周りを見ると、同様にみんなも頷いてくれる。


「まず、結界内にいる一般の市民を結界の外へ、俺とアカネが転移魔法で避難させます。結界の外では兵士の皆さんに待機してもらい、市民の保護をお願いします」


「承知しました」


 ハリー隊長が力強く頷いて答える。


「市民の避難が終わったら結界を上書きして完全に閉じます。あとは俺たちがイリーガルとテーレ、その他の教団員を制圧します」


 確認を終えて王女様を見ると、やや顔が曇っているように感じる。


「王女様、何か気になるところがありますか?」


「いえ、そういうわけではないのですが……」


 王女様は心苦しさと、悔しさが混ざったような表情で言葉を続けた。


「ユーリ様のお力は、旅の中で十分にわかっております。私たちが足手まといになってしまうことも理解しております。それでも、ユーリ様方に頼りきってしまうことが、私は情けなく、心苦しく思ってしまうのです。ユーリ様方だけが危険を冒し、私たちは安全なところで見守っているだけでよいのでしょうか」


 己の無力感を嘆く王女様は責任感が強く、優しい人だ。


 その瞳にはアーテル(母さん)のような気高さも感じる。


 しかし、その中にわずかに劣等感が存在しているように思う。


 とても不安定で危うい気がする。


「今の俺に、王女様が納得していただけるような言葉はありません。でも、王女様が今回の件を依頼してくれなければ、俺はここにはいなかったと思います。王女様の行動が、想いが可能性を手繰り寄せたんです」


「それは……」


 王女様は何かを言いかけて止める。


 きっと偶然だとか、結果に過ぎないと言おうとしたのかもしれない。


「王女様、魔術師にとって一番大切なことは何だと思いますか?」


「え……」


 俯いていた王女様は顔を上げる。


 ちらりと視線をリリーに向けると、すごく語りたそうな顔をしていた。


 前に話したことをしっかり覚えてくれていてよかったよ。


「俺は、魔術師にとって一番大切なことは『想いの強さ』だと思っています」


「想いの強さ」


「才能や経験、血筋が重要なのはわかりますが、それ以上に想いがなければいくら魔法が使えても何かを成すことはできない。何かを想い、それを成し遂げるために魔法を使うものが魔術師だと俺は考えています」


 王女様の瞳に少しずつ輝きが戻っていくように見える。


「でも、これは魔術師に限った話じゃない。王女様は強い想いをもっている。それを成し遂げるために俺を頼ってください。俺は王女様の想いに応えます」


「ユーリ様……」


 ドレスの裾をぎゅっと握り、王女様のエメナルドグリーンの瞳に意思が宿る。


「私は民を守りたい! 王国を脅かす魔皇教団は全員捕まえると決めたのです! ユーリ様、私に力を貸して下さい!」


「はい! もちろんです。俺に任せてください!」


 王女様に笑顔が戻った。




 想いに応える。


 それは言葉にするのは簡単でも、成し遂げるには俺も強い想いが必要だ。


 でも、それなら大丈夫だな。


 王女様の想いに応えたいと、俺は心から想っている。




 魔皇教団との戦いがもうすぐ始まる――――

読んでいただきありがとうございます!!



どうしよう……す、ストックが……。

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