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77 根城

 翌朝、俺は大都市リーキの上空に来ていた。


うえから見ると大きさがよくわかるな」


 かなりの高さまで来たはずだが、都市全体が視界に収めきれないくらいの広さがある。


 視線を少し動かすと、リーキのすぐ側には海が見えた。


 港にはたくさんの船が停泊している。


「海か。転生してからは初めてだな。諸々のことが終わったらみんなで行くか」


 海を見てはしゃぐセレーナを想像して頬が緩む。


 リリーは驚いて固まりそうだな。


 アカネは興味なさそうなフリをして、実は興味津々な姿が想像できる。


「さっさと魔皇教団の根城アジトを見つけるか」


 俺が上空にいるのは魔皇教団の根城を見つけるためだった。


 昨日ギルドから戻ったあと、王女様に相談しようと思ったが忙しそうだったので先に根城を見つけることにした。


 早い段階で根城を見つければ、これからの対策を講じやすくなるだろう。


 肝心な根城の見つけ方だが、まずは魔力感知と探索魔法の応用で広範囲に魔力の多い人を判別していく。


 よし、判別完了。


 次に魔力が多い人間が密集している場所をピックアップ。


 北に1つ、東の端に1つ、西に2つ、一応ギルドもそうだな。


 北と東は他に比べ反応している数が少ない。


 ギルドは一般の魔術師がいてもおかしくない。根城の可能性は限りなくゼロだな。昨日の様子から見ても怪しいところはなかった。


 そして、西。


 1つは港の近く。もう1つは都市の中だ。


 港の方が魔力の反応が大きいが、都市の方は魔力の質が高い……。


 一見、港の近くは根城に向いていそうだが、都市が怪しい。


 しかし、市内で隠れ潜むのはリスクが高そうだし、そもそも根城にできるような場所があるのか?


 いや、簡単な話か。イリーガルは元賢者。


 その権力、魔法でどうにでもできると言えるな。


「もう少し詳しく探るか」


 俺は光魔法と空間魔法の応用で自身の姿を透明に変える。


 魔力も極限まで抑えて隠蔽する。


 そして、転移魔法で都市の西に位置する怪しい場所から少し離れた地点に転移した。


 予想通り、結界魔法が使われているな。


 転移した地点から少し進んだところから結界魔法で、人の出入りを感知する結界が張られている。


「この程度の結界魔法なら誤魔化せるな」


 結界まで近づき、触れる。


 感知する前に結界魔法を上書きして、結界に干渉したことをなかったことにする。


 そのまま結界内に侵入した。


「あそこかな」


 通りに並ぶ建物のうち、結界の中央部にあたる場所に3階建ての建物がある。


 造りは他の建物と変わらない木造だが、結界魔法と強化魔法が施されている。


 探索魔法を使うと、地下に広い空間があることがわかった。


 それから魔力感知で調べると、地下に弱い魔力が3名、強い魔力が1名、そして見覚えのある魔力が1名。


 当たりだ。


 強い魔力はおそらくイリーガル。


 見覚えのある魔力はテーレのもので間違いない。


 俺は空間魔法で亜空間からゴーレムを6体取り出す。「終わりなき森」にいる時に作った子どもくらいの大きさのゴーレムたちだ。


 ゴーレムにも透明にするステルス魔法を使い、結界内を監視するため上空に等間隔で配置する。


 思念魔法を応用して、ゴーレムたちの視界を自分に共有させているため、結界内の動きがよくわかる。


 念のため、テーレの転移対策に転移妨害結界を魔皇教団の結界の外に展開した。


 これでイリーガルたちを監視できる。


 あとは王女様に相談して捕まえるだけだ。


〈セレーナ〉


〈はーい〉


〈イリーガルとテーレを見つけたから、王女様と話せるようにしておいてくれるかな?〉


〈まかせて!〉


〈俺はあと少し、他のところを探ってみるから。終わったら、また思念魔法で連絡する〉


〈うん。気をつけてね〉


 セレーナとの思念通話を終え、俺は念のため港の方と、北と東のそれぞれ他にも怪しい場所を偵察することにした。


 転移魔法を使い各所を巡る。


 結果から言うと、すべて魔皇教団の支部だった。


 ひとまずミニゴーレムを監視につけ、各所をあとにした。


 もしかすると他にも支部があるかもしれないが、すぐには見つけられない。


 イリーガルを捕まえて、魔皇教団に関係することを洗いざらい吐かせれば問題ないことか。


「魔皇教団、王手だ」




「イリーガル様、転移が使えなくなりました。予知・・通り奴が来た、ということですね……ククッ」


「……」


 ユーリとの一戦からしばらく経ち、魔力欠乏が解消したテーレはすっかり顔色が戻っていた。その表情は清々しいまでに悪役そのものだ。


 そんなテーレに視線すら移さず、イリーガルは祭壇の前で一冊の魔書・・を見つめていた。


「それにしても、イリーガル様の魔書は本当に素晴らしいですね! 未来を知る魔書『予知の魔書プレ・グリモア』っ! 僕の『転移の魔書(シフト・グリモア)』も使い勝手はいいですが、予知されては誰も敵わない」


「……もうすぐだ。我々の悲願・・は果たされる」


 テーレはその言葉に少し違和感を覚えたが、イリーガルの考えていることがわからないのはいつものことだと気に留めなかった。


「そうですね! 我々を敵にしたことを後悔させてやりましょう」


 イリーガルはここまでの会話で一切、テーレには反応しなかった。


 そのことをテーレは気がついていない。


 魔皇教団の地下教会にテーレのゲスな笑い声が虚しく響いていた。

 読んでいただきありがとうございます!!


 次回の更新は12月10日です。

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